第四十六話 秘伝の方法は、あるんですか
公開文化をどうにかしてほしいと、国王ルイ十五世に直談判した妙子。
しかし返ってきたのは、あまりにも経験者らしい、そして何ひとつ解決していない言葉でした。
それでも食い下がる彼女に、国王は王族にのみ伝わるという門外不出の方法を語り始めます。
わたしは、勇気を振り絞って、口を開いた。
「ありがとうございます。それでは……その、あの……わたしとルイ君は、その、そういう……行為、というか、あれは、その……人前で、というのは、どう考えても、無理、なんです。陛下も、ルイ君が、その、そういうのが苦手だって、ご存じでしょう? わたしも、さすがに、そういうのは……」
しどろもどろ。
口に出すだけで、顔から火が出そうだ。何度も言葉に詰まりながら、それでも必死に、訴えた。
すると、陛下は。
「なんだ、そんなことか」
ぽん、と膝を打った。
「そのことなら、大丈夫だ。心配いらん」
――え。
「ほ、本当ですか!?」
やった。さすが陛下。話がわかる。きっと、二人きりになれる特別な計らいでも、用意してくださるに違いない。さすが、国の頂点に立つお方。理解が早い。
「あぁ」
陛下は、うんうん、と鷹揚に頷いた。
そして、慈愛に満ちた笑顔で、こう言った。
「あれはな、そのうち、慣れる」
「…………え」
慣れる?
今、慣れるって言った?
「だから、恥ずかしいのは最初だけだ。すぐに慣れる」
…………。
待って。
待って待って待って。
慣れるって、何が。誰が。いつ。どうやって。
というか――陛下、今、それを「経験者」として言ってませんか? 「慣れる」って、つまり、ご自身が慣れた、ということですよね? 何十年も、この公開文化の中で、堂々と――。
いやいやいや。考えるな。それ以上は、考えるな、妙子。脳が、理解を拒否している。
「い、いやいやいやいやいや! そういう話ではなくてですね!」
わたしは、慌てて手を振った。
「慣れる慣れないの問題じゃなくて! 皆の前でっていうのが、ダメっていうか、無理っていうか、もう、本っ当に、ダメなんです!」
もう、自分でも何を言っているのかわからない。語彙が崩壊している。とにかく必死に、「公開はダメ」という一点を、全身で訴えた。
すると、陛下は、ふむ、と顎髭を撫でた。
「そうか……。まぁ、確かに。ルイもマリーも、そういうのは、確かに厳しいかもしれんなぁ」
――きた!
わかってくれた!
ひゃっほー! やったー! さすが陛下、最後はちゃんと理解してくださる、慈悲深いお方!
「では」
陛下が、すっと声を落とした。急に、重々しい雰囲気になる。
「これは、王族にのみ伝わる、門外不出の方法だ」
門外不出。
ごくり、とわたしは唾を飲んだ。
「これを漏らせば、王族の権威は地に落ち、下手をすれば、貴族どもの信用すら失うやもしれん。それでも――聞きたいか?」
おぉ。
なんだ、やっぱり、あるんじゃないか。秘伝の方法が。
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