第四十四話 侍女長の、公開爆弾
ルイ君と初めて手をつないだ妙子。
握り潰された手の痛みは残ったものの、胸の奥には甘酸っぱい余韻が広がっていました。
しかし部屋に戻った彼女を待っていたのは、侍女長から告げられる、あまりにも王宮らしい爆弾発言でした。
そして、部屋に帰ってくると。
また性懲りもなく、侍女長が、にやにやしながら近寄ってきた。
「いよいよ、お世継ぎ誕生も、時間の問題ですわね。一時期は、もうダメかと思ったこともありましたが……本当に、ようございました」
うっとりと、目を細めている。
手を握っただけ、いや、握り潰されただけなんですけど。なんでもう世継ぎの話になってるの。気が早すぎでしょ。
「ちょっと、気が早すぎよ」
そう、軽くあしらったところ。
侍女長から、とんでもないセリフが返ってきた。
「大丈夫ですよ。ご心配なさらなくても」
ん?
心配? 何の?
「その時は、ちゃんと、わたくしども皆が、ベッドの脇でしっかりお見守りいたしますから」
…………は?
「それに、大勢の貴族の方々もご来賓されますので。いろいろと、その場で、ご指導もいただけますし。初めてでご不安でしょうが、なにも案ずることはございません」
「……はぁぁぁあ?」
待って。
待って待って待って。
今、この人、なんて言った?
ベッドの脇で、皆が見守る?
貴族が、来賓?
その場で、指導?
……公開?
世継ぎ作り、公開なの?
このいかれた異世界。まさかとは、思っていた。思ってはいたけれど、必死で考えないようにしていた。
でも。
そうだった。ここは、やっぱり、いかれた異世界だった。
おまるも公開。着替えも公開。だったら、その流れで――そうだよ、いちばん大事なアレも、当然のように、公開。
公開、○○○○かよ!!
手を握っただけで、お互い耳まで真っ赤にして、うつむいて解散するような。あんな、純情にもほどがあるカップルに。
衆人環視で、貴族のギャラリー付きで、しかも実技指導まで入る、公開○○○○をやれと?
無理。
絶対、無理。
わたしも無理だけど――それ以上に、ルイ君が、絶対に、無理。
手を握られただけで「いっ、いや、そんなことは!」ってなる男だぞ。あの人。大勢の前でなんて、間違いなく、その場で気絶する。いや、その前にわたしが気絶する。
侍女長は、蒼白になって固まるわたしを見て、「まぁ、初々しいこと」とますます微笑ましそうに目を細めている。
通じない。
わたしの絶望が、まったく、通じない。
この世界、どこまでわたしを、羞恥プレイの沼に沈める気なの――!?
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