第四十二話 握ったはずが、握り潰された
勇気を出してルイの手を握ろうとした妙子。
しかし、その手は見事にかわされてしまいます。
嫌われているのかと落ち込む彼女でしたが、ルイの反応はどうやら少し違っているようでした。
しかし。
わたしの手が掴んだのは。
冷たい、テーブルの天板……あれ?
……なんで?
今、たしかに、そこに手が、あったよね? っていうか、避けられた? どう見ても、今の、避けたよね?
こ、この、わたしが。仮にも一国の王太子妃で、自分で言うのもなんだけど、それなりの美少女が。勇気を振り絞って手を握ろうとしてあげたのに。
避けた?
……もしかして、わたし。
嫌われてる?
いやいやいや。そんなはずない。嫌われてたら、こうしてお茶になんて付き合ってくれない。じゃあ、あれか。「友達としては好きだけど、女としては、ちょっと……」っていう、あの、いちばん残酷なやつか。
うぐっ。胸が、痛い。
割と脈ありだって、ほっこりして、トゥンクとか言って浮かれてたの、わたしだけだったのぉぉぉ……。
と、心の中で頭を抱えていた、そのとき。
ふと、ルイ君の顔を見上げて――気づいた。
ルイ君の耳が。
真っ赤に、なっていた。
…………あれ?
耳が、真っ赤。顔も、なんだか赤い。目も、泳いでいる。
これは、もしかして。
ルイ君……シャイ、ボーイ?
以前から、ちょっとそうじゃないかな、とは思っていた。でも、こんな図体のでかい、がっしりした大男が、まさかシャイだとは思わないじゃない。手を握られたくらいで、耳まで真っ赤になる男だとは。
つまり、避けたのは、嫌いだからじゃなくて。
恥ずかしいから。
照れて、反射的に、逃げちゃっただけ。
――そう気づいた瞬間。
人間というのは、不思議なもので。
なぜか、ちょっと、いじめてみたく、なってきた。
さっきまでの不安はどこへやら。わたしは、にっこり微笑むと、ずいっと、ルイ君に顔を近づけた。
「あの、王太子様」
ちょっと、目を潤ませ気味に。上目遣いで。
「わたしと手を握るのは……お嫌、ですか?」
すると、ルイ君は。
「いっ、いや、そんなことは……!」
めっちゃくちゃ、慌てだした。
顔を真っ赤にして、目を泳がせて、口をぱくぱくさせて。
いやぁぁぁ、超かわいい。
何これ。もう、食べちゃいたい。
普段あんなに無表情で、鍵の話になると早口になる、よくわからない人が。こんなにあたふたするなんて。ギャップ萌えってやつですか。
「ほらほら、どうしたんですかぁ? お顔が赤いですよ?」
すっかり調子に乗って、うりうりとルイ君をいじめていると。
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