第四十話 メインルート、確定かもしれない
ルイの工房を訪れた妙子は、楽しそうに趣味を語る夫の姿を見て、少しずつ心を動かされていきます。
敵ばかりの王宮で、自分を歓迎してくれる人がいる。
ようやくメインルートが進み始めたかと思った矢先、彼女のもとに母マリア・テレジアからの手紙が届きます。
そんなわけで、後日。
わたしは、ルイ君の工房に来ております。
のこぎり、ハンマー、やすり、なんだかよくわからない金属の塊、年季の入った作業台。さすが王太子の趣味、道具立てが本格的である。そこらの日曜大工とはわけが違う。
そして、ルイ君が、珍しく興奮気味に、いろいろ説明してくれる。
「これがね、今作ってる新しい錠前の機構なんだ。ここのバネがね――」
正直、わたしには、何ひとつわからない。タンブラーがどうの、テンションがどうの。半分以上、いや九割、異国の言葉に聞こえる。
でも。
そんな、嬉しそうなルイ君を見ていると。
なんだか、こっちまで、嬉しくなってくるのだ。
不思議なものである。
まだ正直、これが本当に「メインルート確定」なのかどうかは、よくわからない。よくわからないけれど。
敵だらけのこの王宮で。
わたしの旦那様だけは、わたしを、歓迎してくれる。
それが、嬉しくて、たまらなかった。
こうして、わたしたちは。
仮面夫婦から、友達以上恋人未満へと、レベルアップ。晴れて、純情系ラブコメのカップルへと進化を遂げたのである。
……なんていう、甘酸っぱい気持ちに、ふわふわ浸っていた、矢先のこと。
母上から、メールが来た。
(※この世界にメールはない。母からの手紙、の意である。だが妙子の体感としては、既読を急かしてくるあの圧と完全に同質なので、もうメールでいい)
うぐっ。
こわい。こわいこわいこわいぃぃぃ。
やばい。やばいやばいやばやば。
そうだ。よくよく考えたら、わたしには。
ラブコメに浮かれて、余裕をぶっこいてる暇など、これっぽっちもなかったのである。
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