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第三十八話 鍵オタクの、本領発揮

慈善病院の視察中、ルイは思わぬ場面でその器用さを見せます。


壊れてしまった孤児の人形を、当たり前のように直してあげる王太子。


妙子は、鍵の話ばかりする不器用な夫の、少し違った一面を見ることになります。


挿絵(By みてみん)

見ると、この病院で面倒を見ている、孤児の女の子だった。


どうやら、いつも肌身離さず持ち歩いているお人形の、腕が取れてしまったらしい。胴体と腕が、ぱっくり別々になっている。まぁ、見るからにボロボロだったし、寿命だろう。


かわいそうだけど、こればっかりはね。この子もこうして、ひとつずつ大人の階段を上っていくのさ……なんて、わたしが妙に達観したことを考えつつ、別の病棟へ移動しようとした、そのとき。


ルイ君が、ひょいっと、その子のお人形を取り上げた。


え、なに?


ルイ君は、またポケットから例の針金を取り出すと、慣れた手つきで、人形の胴体と腕を、器用に繋ぎ合わせた。そして、しっかり動くことを確かめてから、女の子に、そっと返した。


女の子は、最初きょとんとしていたけれど。手元で人形の腕が、ちゃんと動くのを見て。


「……ありがとう」


たどたどしく、お礼を言った。


すると、ルイ君は。


ちょっと、照れた。


ほんの少し、目をそらして、口の端を、もにょもにょさせて。あの、いつも何を考えているのかわからない無表情の人が、不器用に、照れていた。


……え。


ルイ君、そんな顔も、できるんだ。


なんだか、すごく、意外だった。そして。


正直に言うと。


ちょっと、ほっこりしてしまった。


鍵の話しかしない、会話のキャッチボールもできない、ピッキングが得意な変な人。そう思っていたのに。壊れたお人形ひとつのために、当たり前みたいにしゃがみ込んで、針金で直してあげる人だったなんて。


胸の奥が、ほんの少しだけ、ぽかぽかした。


――まぁ、それ以外は、特に何があるわけでもなく、予定の視察は無事に終わった。


しいて言うなら、またあのドブレが、どこからともなく湧いてきて、ルイ君に向かって余計なことを口走り、警護の兵に本気で斬り殺されかけて、わたしが慌てて止めに入った、という一幕はあったけれど。まぁ、あれは完全に自業自得である。これに懲りたら、少しは真人間になってほしいものだ。たぶん、ならないけど。



そして、帰りの馬車の中。


がたごとと揺られながら、ルイ君が、ぽつりと言った。


「君は、すごいね」


え。


わたし、何かしたっけ?


「そ、そうかな?」


「うん」


ルイ君は、窓の外を見ながら、続けた。

お読みいただきありがとうございました。


本作は毎日19時40分ごろ更新予定です。

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