第三十七話 病院デートは、成功か
王太子ルイを慈善病院へ案内することになった妙子。
夫婦の距離を縮めるための視察、というより半ば苦し紛れの提案でしたが、病院側は王太子の来訪に大盛り上がり。
そんな中、ルイの鍵好きが思わぬ形で役に立つことになります。
そんなわけで、三日後。
今日は、わたしがルイ君を病院に案内する番である。
あれやこれや説明しながら院内を回っていくと、ルイ君は「へぇ」とか「ほぉ」とか言いながら、ぞろぞろついてくる。相変わらず反応は薄いけれど、なんだか物珍しいらしく、少し目を輝かせていた。
そして、ある倉庫の横を通り過ぎようとしたとき。
スタッフの一人が、倉庫の前で立ち尽くして、難しい顔をしていた。
「あら、どうしたの? こんなところで立ちすくんじゃって」
「あ、これは王太子妃様。実は、鍵が折れてしまいまして。中のものが取り出せず、困っておりまして」
スタッフが、弱り切った顔で答える。
すると。
ルイ君が、すっとポケットから針金を取り出した。そして、それを鍵穴に突っ込み、しばし、かちゃかちゃと指先を動かす。
かちゃり。
軽い音とともに、扉が、開いた。
…………。
ちょっと待て。
今、王太子が、ピッキングしたぞ?
一国の王太子が、針金で、鍵を、開けたぞ?
それ、いいのか? 立場的に、いろいろやばくないか? 王太子の特技が解錠技術って、字面だけで犯罪の香りがするんだけど。
でも、ルイ君がちょっと自慢げな顔をしていたので、あえて黙っておいた。周りを見ると、護衛も、スタッフも、わたしと同じように、なんとも言えない微妙な顔をしていた。みんな思ってる。思ってるけど、言えない。
ともあれ、病院はルイ君の視察ということで、わきに沸いていた。まさにお祭り状態である。
以前、わたしが手を握って号泣させた、あの死にかけのおじいさんは、今度はルイ君を拝みながら泣いていた。もはや誰でもいいのかもしれない。王族なら拝む、みたいな。
ただ苦し紛れに「うちの病院来てください」と呼んだだけの視察だったけれど、意外とみんな喜んでいる。デートとして成功してるのかは微妙だけど、結果的に、割とよかったんじゃなかろうか。
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