第三十四話 両親の馴れ初めを、聞いた結果
母からの圧に追い詰められ、ついに王太子ルイと向き合うことになった妙子。
用意されたのは、庭園のあずまやでのお茶会という、いかにも乙女ゲームらしい舞台でした。
けれど、彼女が思い描いていた王族の恋愛と、目の前の現実は少しばかり違っていたようです。
しばらくすると、侍女長が戻ってきて、今日の午後、庭園のあずまやでお会いすることになった、と告げた。
え、はやっ。
もっと時間がかかるものだと思っていたけれど。どうやら向こうサイドも――というか、王宮全体が――やきもきしながら、なんとか二人きりになれる機会を作れないかと、ずっと焦っていたらしい。わたしが言い出すのを、手ぐすね引いて待っていた感がすごい。
そんなこんなで、迎えた午後。
庭園のど真ん中、あずまや。三段のケーキスタンドには色とりどりのお菓子。湯気の立つ紅茶。降り注ぐ陽光。
定番中の定番である。まさに乙女ゲーム、そのまんまの舞台。
今まで散々、見て見ぬふりをしてきたけれど。いざこの光景を目の前にすると、ちょっと安堵してしまう。
なんだ。やっぱり、こういうのもちゃんとあるんじゃない。おまるだの公開着替えだののせいで、この世界はロマンスとは無縁の蛮地かと思っていたけれど。あずまやでお茶会できるなら、案外、ちゃんとした乙女ゲーム世界なのかも。
警戒してただけで、意外とちょろそうだわ。
ちゃちゃっと夫婦らしい雰囲気を作って、お母様に「順調です」って報告して。これで一件落着――。
なんて、思っていた時期が、わたしにもありました。
ここで、ひとつ、マリーの幼い頃の思い出を挟みたい。
幼いマリーが、テレジア母上の膝の上に乗って、こう尋ねたことがある。
「ねぇ母上。母上と父上は、どうして結婚したの?」
すると母上は、うっとりと目を細めて語ってくれた。
「父上と出会ったのはね、ちょうどこの宮殿のお庭だったの。一目見た瞬間、恋に落ちてしまったわ。この人こそが運命の人だって、すぐにわかったの。それからは、何度もお会いして、お手紙を交わして、少しずつ愛を育んでいったわ。でもね、わたしたちは王族。いつか離れ離れになる運命だと、お互いわかっていたの。そして、その運命のときはやってきた。あなたのおじい様から、わたしの婚約者が決まったと知らされたとき、わたしは絶望して、毎日泣いて暮らしたわ。――でもね。婚約者との初顔合わせの日、目の前に立っていたのは、なんと、父上だったの。父上は真っ赤なバラの花束を抱えて、片膝をついて、わたしにプロポーズしてくれたのよ。あのときの感動は、今でも忘れないわ」
「ふーん。母上は、今、幸せ?」
「えぇ。とっても」
――なんて、言ってたなぁ。
そして、妙子としての経験(ゲームとなろう系で培ったやつ)に照らしても、やっぱり王族の恋愛とは、そういうものだと相場が決まっている。素敵な運命の恋と結婚。それこそが、王族に許された特権なのだ。
なのだが。
現在。
ルイ「……………………」
わたし「……………………」
ルイ「……………………」
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