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第二十三話 デレイベントは、まだですか

慈善病院の理事長にされてしまった妙子。


宮殿よりはましだと病院に通い始めますが、当然ながら病院経営は女子高生の思いつきでどうにかなるものではありません。


しかも、監視役のヴァロワは今日も容赦なく正論で詰めてきます。


挿絵(By みてみん)

なんやかんやで、慈善病院の理事長を押し付けられたわたしであるが。


ぶっちゃけ、今までやってきたことといえば、一つ、ダンスの訓練。二つ、語学のお勉強。三つ、義叔母様の横でニコニコ笑っているだけ。以上である。そして中身は、ただの女子高生。そんなわたしが、いきなり「病院を経営しろ」と言われたって、正直、困る。困るどころの話じゃない。


とはいえ。


王宮にいれば、侍女たちには無視され、護衛兵士からは恨みがましい目で見られ、王族からは「残念な子」扱いされる。そして、テレーだけがにこやかに近寄ってきて、品定めするように笑う。その顔には「さて、次はどんなネタを提供してくれるんですか?」と、はっきり書いてある。


はっきり言って、この世の地獄である。


そんなところにいるくらいなら、病院のほうが百倍マシ。というわけで、今日も今日とて適当に言い訳をこしらえて、わたしは理事長室に立てこもっていた。


しかし、腐っても理事長である。


何もしなくても、仕事はどんどん舞い込んでくる。舞い込んでくるが、何をどうしていいのか、さっぱりわからない。その都度、元理事長のロジエか、舎弟一号のシャルティエに丸投げするのだが、それはそれで、なんとも情けない。


しかも、丸投げできるうちは、まだいいのだ。


「すいません、王太子妃様。そろそろ患者の薬が切れてきておりまして、購入をお願いしたいのですが」


たまに、ロジエやシャルティエでは処理できない案件が、ブーメランのようにわたしのところへ戻ってくる。


仕方がないので、それを監視役のヴァロワに、そーっと差し出す。すると一言。


「却下」


「ど、どうしてですか? これは王太子妃の命令ですよ?」

挿絵(By みてみん)

「この薬は、高価すぎます。同じ効能でしたら、こちらの薬が半額で手に入ります。やや効果は弱まりますが、こちらならさらに安価です。そもそもこの薬は緊急用で、それほど必要のないものです。現在のストックでも問題ないと考えますが――その点について、王太子妃様はどのようにお考えですか?」


「うっ」


言い返せない。


というか、何を言っているのか、さっぱりわからない。薬の名前も効能も、何ひとつ知らないんだから。考えも何も、考えるための知識がない。


終始、こんなやりとりが繰り広げられる。正直、ここはここで、別の意味で辛い。


でも――わたしにはわかっている。


イケメン眼鏡というのは、最初は主人公にキツく当たるが、最後には必ずデレるものなのだ。乙女ゲームの鉄則である。つまり今は、我慢のしどき。一度デレさえすれば、そこから本当のわたし無双、ハッピーエンドルートが開けるはず。


何か、大事なことを忘れている気もしないでもないけれど。


とにかく今は、デレイベント発生まで耐えるのよ。妙子、ガンバ。


そんなことを考えていると。


病院の入り口のほうで、何やら騒いでいる声が聞こえてきた。

お読みいただきありがとうございました。


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