表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生したいと願ったら悪役妃に転生してしまった件 ~マリー・アントワネット転生記~  作者: ヒロ1972
第五章 病院が綺麗になったと思ったら、理事長を押し付けられた件
22/37

第二十二話 嫌われ役を、引き受ける男

宮廷が財務局への反発を強める中、財務長官テレーはさらに先を見据えていました。


王族の支出削減は、あくまで始まりにすぎません。


彼が本当に狙っていたのは、長く手つかずのままだった聖職者と貴族の特権でした。



挿絵(By みてみん)

一方、その頃。財務局の執務室では。


「長官。さすがに、やりすぎじゃないですか?」


一人の役人が、おそるおそる、テレーに進言していた。


「今や宮廷内は、不満だらけです。そして、その怒りが、ぜんぶ財務局に集中してきております。それに……あんな小娘を利用するのは、どうかと」


「うるさい」


テレーは、書類から顔も上げずに、ぴしゃりと言った。


「使えるなら、死にかけの老人だって使ってやる。売れるものなら、二束三文のゴミだって、高値で売りつけてやる。我が国の寿命は、もう尽きようとしているのだ。体面など、知ったことか」


「はぁ……まぁ、わかるのですが。良心の呵責といいますか、なんといいますか……」


「しのごの言ってないで、働け。当面の標的は、国民だ。増税計画は、進んでいるのか?」


「は、はい。順調に進んでおります。近々、正式に発表できる段階になるかと。……しかし、長官。あちらも、本当にやっていいものか。チームのメンバーからも、疑問の声が多く上がっておりまして」


「ふん。だが、それも所詮は、つなぎにすぎん」


「つなぎ……と、おっしゃいますと?」


テレーは、机に広げた一枚の地図を、とんとんと指で叩いた。国中の、教会領と貴族領が、びっしりと色分けされた地図だった。


「痩せこけた民から、これ以上搾り取ったところで、もう一滴も出やしない。本当の獲物は――こっちだ。のうのうと祈っているだけの坊主ども。広大な領地にあぐらをかいた、貴族ども。あそこにはな、手つかずの富が、唸るほど眠っているのだ」


役人の顔が、さっと青ざめた。


「ま、まさか。聖職者と、貴族に……課税を? あの方々は、古くから免税の特権を……何百年も、一銭たりとも納めたことのない……!」


「だからこそ、だ」


テレーは、薄く笑った。


「払ったことのない者ほど、取られるときの悲鳴は大きい。さて、どんな顔で泣きわめくか、見ものだな」


「長官……正気ですか? そんなことをすれば、国中の坊主と貴族を、まとめて敵に回しますぞ……!」


「言いたい奴には、言わせておけ」


テレーは、ようやく顔を上げた。その目には、もはや迷いも、ためらいもなかった。


「王太子妃の次は、王太子か。王族か。はたまた、坊主か、貴族どもか。利用できるものは、全部使う。崩せる聖域は、片端から崩す。使って、使って、使い切るまで、使い切ってやるわ」


冷えきった声が、執務室に響いた。


この男は、本気だった。


国を救うためなら、悪役にもなる。誰に何と言われようと、嫌われ者になろうと、構わない。沈みかけたこの船を、たとえ自分の手を汚してでも、引き上げてみせる――そう、固く心に決めた、ある意味では、誰よりも国を憂う男だったのである。


そしてその「使えるもの」の筆頭に、わたし――マリー・アントワネットが、しっかりと数えられていることなど。


慈善病院で理事長の椅子を眺めて「うわ、押し付けられた」と頭を抱えていた、当のわたしは。


やっぱり、何ひとつ、知らないのであった。

お読みいただきありがとうございました。


続きが気になる方は、【ブックマーク】やページ下部の【星評価】で応援していただけると、執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ