第二十一話 義叔母様たちの、密談
慈善病院の理事長という新たな肩書きを背負わされた妙子。
そのころ宮廷の奥では、義叔母様たちもまた、財務局の強引な動きに頭を悩ませていました。
妙子が知らないところで、王族たちは王族なりの苦しい判断を迫られていたのです。
――さて、ここで少し、宮廷の様子に目を向けてみよう。
王太子妃マリー・アントワネットが、慈善病院の理事長という、よくわからない肩書きを背負わされたころ。宮廷の奥では、王族たちが、ひそやかに、けれど深刻に、頭を抱えていた。
「ねぇお姉様。最近の王宮、どう思います?」
そう切り出したのは、下の義叔母様。
「あいつら、今日もわたくしのところに来て、あれこれ物色していきましたわ。本当に、忌々しいハイエナどもだこと」
あいつら、とは、もちろん財務局の連中である。
「そうねぇ」と、姉である義叔母様が応じる。「ちょっと、財務局の連中、調子に乗りすぎね」
「こちらも、何か動いたほうがいいのかしら」
「うーん。今は、やめておいたほうがいいんじゃないかしら。タイミングが悪いわ。下手に動いて、こちらの足元を見られたら、たまったものじゃないですもの」
「確かに……。でも、まさかマリーをダシに、ここまでやるとは思わなかったわ」
姉の義叔母様は、ため息をついた。
「そうねぇ。こちらの落ち度と言えなくもないけれど。いくらなんでも、子どもを利用して、こんな強引な手を打ってくるなんて、思いもしなかったわ。こうなってしまったら……マリーには可哀想だけれど、ちょっと、距離を取らせてもらうしかないわね」
「そうねぇ。あいつのことだから、下手に突っぱねたら、『王族のせいで増税せざるを得ない』とか『王族のせいで債務が払えない』とか言って、債権者に債務を踏み倒しかねないわ」
「もしそんなことになったら、伝統がどうのこうの以前に、わたくしたちの首が飛んでしまいますものね」
姉の義叔母様は、もう一度、深いため息をついた。
「はぁ……。わたくしも、財政状態の悪化には、ずっと警戒していたし。いつかはこうなるだろうと、覚悟もしていたわ。けれど、いざこうなってみると、さすがに厳しいわね。このままでは、王族の権威が、失墜してしまう」
「本当に、そうですわ。そもそも、マリーもマリーよ。まったく、あんな奴の手のひらの上で踊らされて、何をやっているのかしら。情けない」
「もう少し、しっかりしているかと思っていましたが。再教育が必要そうね。……でも、マリーがテレーの手の内にある以上、下手に近寄るわけにもいかないし。困ったわ」
「「はぁ……。本当に、嫌になってしまいますわ」」
姉妹そろって、ため息が、重なった。
――義叔母様が、わたしに距離を置いたのには、こういう事情があったのだ。
見捨てたわけではない。むしろ、下手に庇えば、テレーに付け入る隙を与えてしまう。それがわかっているからこそ、苦渋の選択として、距離を取らざるを得なかった。
もっとも、当のわたしは、そんな宮廷の深謀遠慮など知る由もなく、ただ「義叔母様にも見放された」と、しょんぼりしていただけなのだが。
お読みいただきありがとうございました。
続きが気になる方は、【ブックマーク】やページ下部の【星評価】で応援していただけると、執筆の励みになります。




