第百話 ルイ君の、設計図
病院のトイレを直したい。
そんな王妃様の困りごとに、忙しいルイ君が設計図で応えてくれます。
会う時間さえ取れない二人をつなぐのは、不器用な手紙と、一枚の図面。
なお、今回の夫婦イベント。
きっかけは、詰まるトイレです。
そして今は。王宮。
つい勢い余って、図面を持って来てしまったが。正直、どうしていいかわからず。途方にくれつつ、部屋へ戻ろうとしていると。
目にクマを作り、げっそりやつれたルイ君と。ばったり、出くわした。
「あ、ルイ君。こんなところで、どうしたの。顔色よくないけど、大丈夫?」
「あ、あぁ。まぁ、何とかね……」
「本当? ちゃんと寝れてる? ルイ君まで倒れちゃったら。この国、本当に終わっちゃうんだから。無理しちゃだめだよ」
「うん。そうだね。気をつけるよ。ありがとう」
と言ったところで。わたしが図面を持っているのに、気づいたらしい。
「どうしたの? それ図面だよね? 病院の?」
「え、えぇ。よくわかったね。病院のトイレがよく詰まるから。何とかならないかと思って、持って帰ってきたの」
「そうなんだ……。ねぇ、よかったら。ちょっと見せてくれない?」
「いいけど?」
と言いつつ。ルイ君に手渡すと。ルイ君は図面を開き、真剣に眺め出した。
なんか。真剣にファイルを見つめるルイ君も。かわいくていいなぁ。
なんて思っていると。
「もしよかったら。この図面、しばらく貸してくれない? 自分なりに、ちょっと検討してみるよ」
「え? わたしはいいけど。仕事、大丈夫? 忙しいんでしょ?」
「仕事は忙しいけど。ここのところ煮詰まってたから。ちょっと気分転換にね」
「そ、そう。じゃぁ、お願いね」
そう言うと。ルイ君は図面を持って、去っていった。
* * *
はぁ。
国王陛下が亡くなって以来。もう皆、てんやわんやで。すっかり、バラバラ。
いつになったら。前のように、楽しく過ごせるんだろう……。
最近、ルイ君に会えない。
即位して以来、忙しいのは、わかっている。ちょっとだけでも時間を作って会う、ということすら、難しくなった。
本当に心配で、仕方ないけど。王に即位してしまった以上。無理とも言えず。我慢するしか、ない。
* * *
それから、数日後。
ルイ君から。図面の修正案が、届いた。
ルイ君は、以前にもまして忙しく。ちょっとだけでも時間を作って会う、ということも。本当に、難しくなってしまい。
図面も。侍従経由で、届けられる始末だ。
届いた図面には。手紙が一通、添えてあった。
「少し見ただけだから、役に立つか分からないけれど。考えている間、少し楽しかった。マリーの役に立てたら嬉しい」
短い。
とても、短いメッセージ。
でも。
その一行から。ルイ君の、不器用な優しさが。にじみ出ていて。
思わず。会えない寂しさが、こみあげ。きゅっと、胸を締めつけられた。
はぁ。わたしのメインルート。
せっかく、夢のリア充確定したってのに。なんなのよ。
* * *
まぁ。そんなこと、愚痴っても仕方ないので。
図面を受け取り、病院へ。
そして。ヴァロワに。どうだと言わんばかりに胸を反らしながら。修正案を、突きつけてやった。
最初は。ヴァロワも、胡散臭そうな顔をしながら、図面を受け取ったが。
図面を見た途端。急に、真剣な顔となり。
「わたしは専門ではありませんので。この場で断言は、できません。ですが……これは、悪くありません。少なくとも、素人の落書きではない。すぐ職人に見せます」
と。驚きの表情を浮かべながら。そそくさと理事長室を出て行った。
人を見下すような態度取ってたやつが。驚いて慌てて出ていく様は。まじで、気持ちいい。
ルイ君に、感謝だね。
……ルイ君。
早く、会いたいな。
ちょっとだけ。
ちょっとだけ、だからね。




