いわゆる、小悪党との対面です。
お久しぶりですっ‼︎‼︎
どうぞ生温い目で見守ってやって下さいm(_ _)m
ブランドレスに来てから二月が経ちました。
ええっと。
正直、調査に目立った進展はありません……。
私達が調査を怠っていたわけではございませんのよ⁉︎
ブランシュ様を始め、皆様に協力していただいておりましたが、最終的に外からでは明確な証拠は掴み難いという結論に至ったのです。
そこで、私個人の当初の計画に沿って、教団と深く関わっている貴族に直接接触を試みることにしました。
協力して下さる皆様には反対されましたが『虎穴に入らずんば虎子を得ず』です。
特に女性陣からは猛反対を受けた手ではありましたが、元より危険は承知です。
それにね?
望まぬとも貴族として王家より依頼を受けのです。何もわかりませんでした等とは口が裂けても報告できません。何より決定的証拠を掴んで帰らなければ、私の矜持が許しません。
周囲の反対を強引に押し切って狙った相手は、マイアス=ガルーダ様。
ガルーダ伯爵家の御長男です。
このガルーダ伯爵家というのは、今回の件に関与する貴族名簿の筆頭に挙げられる家です。
王族の降嫁も可能な程の歴史を誇る古参の名門だということでしたが、ここ数代は暗愚な当主が続いているそうで、真っ当な貴族意識を持つ方々からは酷く嫌われていらっしゃるそうです。
で。
「こちらは海を渡った東国の品で、緑翠石と申しますのよ。とても珍しい高価な品でございますわ」
「これこれ。こちらはジルシード王国一の大貴族の御令嬢だぞ? その程度の物は見慣れておられるに決まっているであろう? まぁ……緑翠石は確かにとても珍しく、なかなか入手困難な品ではございますが」
早速ガルーダ伯爵家にお招き頂いた次第です。
……いや、何と言えば良いのでしょう?
色々……という程でもありませんが、まぁ兎も角うんざりするようなーー思い出すのも面倒ですーーな悲喜交々を経まして、この状態です。
テーブルの上に広げられた宝飾品の数々を、伯爵夫人が鼻高々に誇らしげにみせびらかしております。そしてそれを態とらしい苦笑と口調で窘めつつ、ひっそり自慢する伯爵。
あまりにもわかりやすい小悪党ぶりに、むしろこちらが悪者な気がして参りました。
だってね?
私の母方は大貴族の出自ですが、私自身は貧乏男爵家の娘ですから、高価な宝飾品など持っておりません。しかし縁がないわけではないのですよ? ちゃっかり者なお母様が実家から持参した宝飾品の類がございました。
家計が苦しくなると売り払ってーー売り払ってもなお厳しい我が領内でしたけどーーおりましたので、今では殆ど手元にございませんが、それらが売り払われる前のとても幼い頃に、お母様が教養は大事! と言って、手持ちのそれらを見せて詳しく説明してくださったのですよ。
あまりに幼い頃でしたので、すっかり記憶の彼方に投げ去っておりましたが、今回は大貴族の御令嬢という設定な上、御子息情報によれば伯爵夫人は宝石が大好きとのこと。
ご招待が決まってから、図書館で宝石に関する項目を読み漁りましたよ……辛かった……。
因みに今回の件で実物をお爺様が山程買い揃えてくださったので、宝飾品に関しては若干食傷気味な程に知識と目を養うことが出来ました。あまり嬉しいと思えないのは何故かしら……?
……付け焼き刃とか言わないで下さいまし!
「緑翠石の指輪ですか……」
伯爵夫妻ご自慢らしい逸品を手に取り、ふと軽く違和感を感じました。
宝石の価値は質と加工技術によって決められます。いくら珍品であっても質が悪かったり加工が粗かったりしては高値は付きません。両方揃って初めて高値が付けられます。
私は無理矢理頭に詰め込んだ知識を引っ張りだして、手にした緑翠石をじっくりと観察しました。
目の覚めるような深く美しい翠に、白い斑目が良く映えていますね。ですけど少し翠が鮮やか過ぎるような? 何より重さが気になって仕方ありません。これだけ深い色味ならば、間違いなく結晶密度が高いと思われます。それにしては軽いような……?
宝石の鑑定についてはお爺様が仕立てて下さった宝飾品実物一式と書籍を照らしながらーーこの一点に関してのみマルキスを巻き込みましたがーー密度の計算方法まで詰め込んだのですから、間違いないと思います。
これはレプリカの可能性が高い……いえ、レプリカであると断言しましょう。
さて、どうしましょうか?
見たところガルーダ伯爵ご夫婦は、本物と思われているようですがーーそもそも、ガルーダ伯爵夫人はこれを何処で入手したのでしょう?
ブランドレスの国民性を考えると、こういった珍品はジルシード以上に出回らないと思うのですよ。
「あの……何方でご購入されたのでしょうか?これほど上質な緑翠石ならば私も是非欲しいと思いますの。宜しければ教えて頂けませんか?」
伺うように上目遣いで伯爵夫人に尋ねれば、伯爵夫人は喜色を浮かべて教えて下さいました。
「もちろんですわ! 実はこの石はーー……」
絶好調で緑翠石の入手先を話す伯爵夫人に、適度に相槌を打ちつつ、思いました。
……このご夫婦、馬鹿正直に素直なだけなんじゃないだろうか? と。




