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巡礼者の道  作者: 잿빛서기관


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42/55

責任

翌日の夕方。


閉ざされていた部屋の扉が開いた。


顔は相変わらず痩せていて、

目の下には濃い影が残っていた。


それでも彼女は、

無理やり口元を上げた。


「何だよ」


声は少しかすれていた。


「みんな、葬式でも済ませたみたいな顔してるな」


ベルが泣きそうな顔をした。


「お姉さん……」


レアはベルの頭を撫でると、

軽く手を振った。


「大丈夫、とは言わないよ」


彼女はしばらく息を整えた。


「代わりに、酒でも飲もう」


エリオンとトリーは、

呆然と彼女を見つめた。


レアが眉をつり上げる。


「何だよ。

飲んじゃ駄目なのか?」


司祭が首を振りながら言った。


「その身体で……

酒を飲むつもりか?」


ベルも彼女を見上げ、

心配そうに言った。


「まだ身体もよくないのに……」


「酒で消毒すれば治る」


レアはそう言って、

ゆっくりと階段の方へ歩き出した。


足取りはまだ不安定だった。


それでも、

誰も彼女を止めなかった。


結局、下の階で酒の席を設けることになった。


丸い卓を囲んで座り、

ベルはレアの隣にぴったりとくっついていた。


エリオンは食卓を見下ろした。


安酒と、簡単な食べ物。


エリオンは安酒をじっと見つめた。


これは……


レアに初めて会った時、

飲んだ酒だった。


「……レアが奢ってくれた酒ですね」


レアが小さく笑って言った。


「早く酔うには、これが一番だからな」


そう言いながら、

杯に酒を注ごうとした。


エリオンは彼女の手からひょいと酒瓶を奪い、

自分で酒を注いだ。


レアはしばらく面食らったようにしていたが、

椅子に腕をかけてその様子を眺めた。


「病人扱いも悪くないな。

たまにはこういうのも――」


エリオンが硬い顔で彼女を見た。


レアの言葉が途切れた。


彼女は気まずそうに杯を持ち上げる。


「あー、分かったよ。

田舎者は冗談も通じないな」


そう言って、

一杯飲み干した。


「うっ……

これ、こんなにきつかったっけ?」


レアは口元を拭いながら、

鶏の手羽を手に取った。


そして匂いを嗅ぐと、

気持ち悪そうに顔をしかめた。


「獣臭いな」


結局、手羽を皿に戻してしまった。


皆、レアから目を離せなかった。


一行の視線が重かったのか、

レアは肩をすくめて言った。


「穴が開くっての……

もう見るなよ」


そう言いながら、

司祭に酒を注いだ。


「あんたも一杯」


そして……


トリーにも注ごうとして、

ふと手を止めた。


「ああ、お前は酒が嫌いだったな?」


トリーは首を振り、

杯を差し出した。


「注いでください」


レアは小さく笑い、

酒を注いだ。


トリーは受け取るなり、

大きく飲み干してしまった。


レアがつまみの皿を押しやりながら言う。


「一緒に食え。

胃をやられるぞ」


トリーは何か大きな決意でもするように、

つまみを睨みつけた。


それから手羽を掴み、

力いっぱいかぶりついた。


レアは頬杖をつきながら、

その様子を見守った。


エリオンも、司祭も、

トリーを見ながら杯を持ち上げた。


そうして、

酒の席は少しずつ続いていった。


皆、酔いが回り始めていた。


トリーは身体を軽く揺らしていて、

司祭はぼんやりと杯だけを見つめていた。


エリオンの顔も赤くなっていた。


エリオンはレアから目を離せなかった。


平気なふりをしている姿が、

どうしても目に入った。


エリオンは太陽の首飾りを強く握った。


彼はしばらく口ごもった後、

重く口を開いた。


「レア……

ごめんなさい」


レアが眉をつり上げた。


「……何が?」


「僕が……

意地を張ったから、それで……」


タン。


レアが杯を置いた。


その小さな動作に、

エリオンはそれ以上言葉を続けられなかった。


レアはエリオンを見つめた。


怒ったような顔をして、

悲しそうな顔をして……


やがて目を閉じ、

口を開いた。


「私の……

選択だった」


そして少し息を整えると、

小さく続けた。


「護衛を取り消すこともできたし、

無理やり引っ張っていくこともできた」


レアはさらに言葉を続けた。


「でも……

そうしなかった」


レアは寂しそうに笑って言った。


「ベルも……

トリーも……

司祭も」


そう言って、

エリオンと目を合わせる。


「あんたと一緒にいるのも……

楽しかったんだ。


だから、どうしてもできなかった」


一行は沈黙した。


レアは酒を一気に飲んだ。


そうして酒の力を借りるように、

再び口を開く。


「だから……」


レアは少し考えてから、

言葉を続けた。


「それは、私の選択だった」


ベルがレアを見上げ、

彼女のそばにぴったりと寄った。


レアはベルの髪を軽く撫でた。


「だから……

その話はここまで」


エリオンは杯をいじりながら答えた。


「……はい」


レアは酒を飲んだ。


「……話が出たついでに言うけど。


私……

話しておくことがある」


一行の視線が彼女に集まった。


レアはもう一度、酒を飲んだ。


しばらく迷った後、

重く口を開く。


「……私、故郷に帰ろうかと思ってる」


そう言いながら、

自分の身体を見下ろした。


「この状態じゃ……

何をするにもきつそうだからな」


彼女は深く息を吐いた。


「少し……

休んだ方がよさそうだ」


それから杯を指先でいじりながら言った。


「それで、なんだけど……」


彼女はしばらく迷った末、

結局口を開いた。


「お前たちの帰り道は……

私が守ってやれそうにない」


レアはうつむいた。


「だから……

悪い」


しばらく、

誰も何も言えなかった。


エリオンは杯を持ち上げた。


苦い味が喉を伝って落ちていく。


司祭とトリーも、

静かに杯を傾けた。


レアが苦笑しながら言った。


「そんな顔するなよ。

まるで私が死にに行くみたいじゃないか」


エリオンは杯を見下ろしたまま尋ねた。


「いつ……

発つんですか?」


彼女は椅子の背もたれに身体を預けたまま、

しばらく黙っていた。


やがて、

レアが口を開いた。


「……明日はさすがに無理だな。

二日後くらい」


レアは自分の身体を見下ろし、

肩をすくめた。


「少し休みたいし、

準備する物も買わなきゃならないからな」


エリオンは杯を置いた。


「そう……

ですか」


ベルがレアを見上げて言った。


「もう少しだけ……

いてくれませんか?」


レアは何も言わず、

ベルを自分の方へそっと抱き寄せた。


ベルは一瞬戸惑ったが、

そのままレアの腕の中に収まった。


「私も、そうしたいんだけどな……」


レアは司祭を見た。


「司祭さん」


「何だ」


「金は少し残ってる?」


司祭は懐を探った。


「……余裕はないな」


レアが小さく笑った。


「だろうと思った」


レアはかすかに笑いながら立ち上がった。


寄り添っていたベルも、

つられるように立ち上がる。


「私は先に上がるよ」


レアはひらひらと手を振った。


「疲れたから、早めに寝る」


エリオンも立ち上がろうとしたが、

酒のせいで椅子に座り直してしまった。


レアは彼を見下ろして言った。


「ほどほどに飲んで寝ろよ」


それから少し考え、

小さく笑って付け加えた。


「また面倒を起こすなよ」


レアはベルと一緒に階段の方へ歩いていった。


二人の足音が、

階段の上へ消えていく。


エリオンは空になった階段を見つめた後、

再び杯を握りしめた。


そのまま酒を飲み干した。


胃がむかむかしたが、

杯を置くことができなかった。


「司祭様」


司祭が顔を上げた。


「僕が……

何か間違えたんでしょうか」


司祭は答えられなかった。


「レアが無事に戻ってくることを願ったのに……」


エリオンは太陽の首飾りを握りしめた。


「テトさんも……

村の人たちも無事でいてほしいって願ったのに……」


司祭もトリーも、

ただエリオンを見つめていた。


「あの時、逃げながらずっと祈っていました」


エリオンは首飾りをさらに強く握った。


「なのに、何も……」


語尾が震えた。


「何も、守られませんでしたね」


司祭は杯を持ち上げ、

一口飲んだ。


そして……


答えられなかった。


「僕には……

本当に分かりません。司祭様」


エリオンは深くうつむいたまま呟いた。


「神というものは……

本当に、いるのか……」


「そこまでだ」


司祭の声が、

エリオンの言葉を遮った。


司祭はエリオンと目を合わせて続けた。


「見ている者が多い」


周囲を見回した。


周りから、

さりげなくこちらを盗み見る視線を感じた。


エリオンは口を固く閉ざし、

言葉を飲み込んだ。


そしてまた、

杯を飲み干した。


「本当に……

クソみたいな世界ですね」


そうして杯を傾け続け、


いつの間にか意識を失っていた。

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