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巡礼者の道  作者: 잿빛서기관


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38/55

神を求める夜 ②

レアは後方を警戒しながら走っていた。


逃げる途中で、

すでに何人もの盗賊を斬り倒している。


彼女の呼吸は次第に荒くなっていた。


遠くからは悲鳴が聞こえてくる。


無我夢中で走り続けた末、


ついに森が姿を現した。


黒々と生い茂る木々の隙間に、

濃い闇が口を開けている。


レアが森へ向かって叫んだ。


「飛び込め!」


一行は必死に森の中へ身を押し込んだ。


湿った土の匂いと、

腐った落ち葉の臭いが鼻を突く。


レアが怒鳴るように叫んだ。


「何に出くわしても正面から突っ込むな!

後ろに押し付けてでも逃げろ!」


司祭も息を切らしながらトリーを振り返る。


「軽率に飛びかかるな!

特にグールは絶対に駄目だ!」


そして続けた。


「引き裂かれて死ぬぞ!」


トリーはごくりと唾を飲み込んだ。


ベルをちらりと見た後、


顔を引き締める。


「……分かりました!」


一行はそのまま森の奥へ駆け込んだ。


司祭は懐から短剣を取り出し、


トリーは太い枝を拾い上げる。


背後では今も盗賊たちが追ってきていた。


「そのクソアマを捕まえろ!!」


「仲間を殺しやがったぞ!」


罵声と怒号が森の中に響く。


レアは振り返ると顔をしかめた。


「……もう追いついてきたか」


そして徐々に遅れ始めているエリオンを見る。


レアは舌打ちした。


「クソ……!」


その時だった。


彼女が突然足を止める。


そして身体を反転させ、


後方へ突っ込んだ。


走る勢いそのままに剣を突き出す。


ガァン!


盗賊は辛うじて受け止めたが、


衝撃に耐え切れず後ろへ吹き飛んだ。


レアは即座に男の股間を踏みつける。


「ぐぁっ――!」


盗賊の目が血走った。


そしてその瞬間、


レアの剣先がそのまま喉を貫く。


ズブッ。


熱い血がレアの顔へ飛び散った。


レアは剣を引き抜くや否や、


死体の手から剣を乱暴に奪い取る。


そして近くの盗賊へ向かって投げつけた。


盗賊は慌てて身を捻る。


剣は肩をかすめ、


背後の木にぶつかって弾かれた。


肩を裂かれた盗賊が、


歯を食いしばりながら低く呟く。


「捕まえたら、八つ裂きにしてやる」


レアは答えなかった。


その視線はエリオンへ向いている。


距離が開いたことを確認すると、


再び身を翻して走り出した。


彼女の呼吸はさらに荒くなっていた。


背後では今も灯りが迫ってきている。


森はますます深くなっていった。


追ってくる盗賊たちの数が増えていた。


森のあちこちで松明が揺れる。


レアが顔をしかめながら呟いた。


「村の方は……

もう終わったのか」


彼女の視線が左へ向く。


異様な速さで接近してくる連中が見えた。


四人。


動きからして違う。


レアは周囲を素早く見回した後、


一行へ向かって叫んだ。


「ここから先は守れない!

前だけ見て走れ!」


そう言うや否や、


盗賊たちへ向かって突っ込む。


「クソッタレどもがァァッ!!」


レアが怒鳴りながら剣を振るった。


先頭の盗賊が剣を掲げて受け止める。


ガキィン!!


荒々しい金属音が森に響いた。


だが男の体勢は崩れない。


むしろ受け流すように剣を弾き、


軽く後ろへ下がって構え直した。


盗賊は口笛を吹きながら、


にやりと笑う。


「おぉー。

なかなかやるじゃねぇか?」


他の連中もじわじわと動き始めた。


レアを囲むように距離を詰めていく。


レアの目が冷たく沈む。


彼女は即座に一角へ踏み込んだ。


ガキン! ガキン!


激しく剣がぶつかり合う。


レアは無理やり盗賊を押し返すと、


近くの木へ移動した。


そして背後を木に預けるようにして、


低く構える。


盗賊たちが足を止めた。


その中から、


一人の男がゆっくりと前へ出てくる。


どうやら頭目らしい。


男はゆっくり歩きながら言った。


「お前だな?

俺の手下どもを殺した女は」


そして、


にやりと笑った。


「いいだろう。


どこまでやれるか見せてもらおうか」


その瞬間だった。


三人の盗賊が同時にレアへ飛びかかった。


頭目も剣を振り上げながら、


少し遅れて突っ込んできた。


背後からかすかな声が聞こえた。


「失せろ――!」


レアの声だった。


「大人しく――」


知らない男の声。


「グールだ――!?」


驚愕と混乱の叫び。


エリオンはその声を必死に振り払うように、


重い足を無理やり前へ動かした。


もはや走ることすらできず、


速足を保つのがやっとだった。


息をするたび、


肺が引き裂かれるように熱い。


前を走っていたトリーとベルが、


振り返ってエリオンを見る。


だが司祭が即座に叫んだ。


「トリー! ベル!

前だけ見ろ!」


ベルは泣きそうな顔のまま前を向く。


トリーも歯を食いしばり、


再び走り出した。


そして飛び出してきたゴブリンを、


棍棒で力いっぱい殴りつける。


バキッ!


ゴブリンの頭が砕け、


そのまま地面へ倒れ込んだ。


司祭たちはなおも前へ進む。


それを見つめていたエリオンの視界が、


少しずつ霞み始めていた。


その時だった。


背負われていた患者が、


エリオンの肩を軽く叩く。


「……もう降ろしてください」


エリオンは霞む視界のまま振り返った。


「はぁっ……

はぁっ……

何を……」


患者は苦しそうに口元を緩める。


「私のせいで……

生きられる人を死なせるわけにはいきません」


そう言うと、


エリオンの肩からゆっくり手を離した。


すでに腕に力が入らなくなっていたエリオンは、


患者を支え切れなかった。


患者は地面へ崩れ落ちた。


苦しげな呻き声を漏らしながら、


ゆっくりと立ち上がる。


そして近くの木へ向かって、


ふらつきながら歩いていった。


木にもたれかかるように腰を下ろし、


そのまま崩れるように横たわる。


やがて周囲の落ち葉を集め始めた。


どうやら身体を隠そうとしているらしい。


「……こうして隠れていれば……


生き残れるかもしれません」


エリオンは呆然とその姿を見つめた。


やがて静かに歩み寄る。


そして落ち葉をかき集め、


患者の身体へそっと掛けた。


患者は落ち葉の中から顔だけを出し、


静かに言う。


「あなた方は……

十分すぎるほどやってくれました」


そして遠ざかっていく司祭たちを見る。


「待っている人たちが

いるのでしょう」


荒い息を吐きながら続けた。


「早く……

行ってください」


エリオンの目が大きく揺れた。


彼はぎゅっと目を閉じる。


そして――


再び走り始めた。


走りながら、


エリオンは祈り続けた。


神よ……


どうかレアを無事に戻してください。


どうかあの人を、


見つからないように隠してください。


村の人々を……


どうかお見守りください。


あなたに仕える者たちを


お守りください。


神よ――!


エリオンは走り続けた。


どれほど走ったのか、


もう覚えていない。


無我夢中で森をかき分けて進むうち、


少しずつ周囲が明るくなり始める。


そして気が付いた時には、


すでに森を抜けていた。


司祭たちが、


遅れて現れたエリオンを見つけて足を止める。


司祭は荒い息を吐くエリオンを見つめた。


その背中には、


もう誰もいない。


司祭は静かに息を吐いた。


そしてゆっくり歩み寄る。


何も言わず、


エリオンを抱きしめた。


「……よくやった」


司祭の手が、


ゆっくりとエリオンの背を叩く。


「頑張ったな」


その瞬間――


エリオンはもう、


涙を堪えることができなかった。



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