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巡礼者の道  作者: 잿빛서기관


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信仰者

日が沈み、


淡い月明かりが草原を照らしていた。


冷たい夜風の中、


薄い霧までもがゆっくりと立ち込め始める。


その頃だった。


遠くの闇の向こうに、


小さな灯りがひとつ、またひとつと姿を現した。


五十戸ほどはありそうな小さな村。


村の周囲は、


人の背丈より高い木柵で囲まれていた。


まともな防壁というよりは、


獣や盗賊を防ぐためのものに近い。


入口には見張り台が一つ高く建てられていた。


その時、


見張り台の上から誰かが一行を見つけた。


弓を引き絞る音が聞こえる。


「止まれ!」


サボり屋はすぐに片手を高く掲げた。


一行も合図に従って足を止める。


サボり屋が口を開いた。


「おーい、そんな物騒にしないでくださいよー」


そう言うと、


一歩前に出て続けた。


「何年か前に、


こんな田舎うんざりだって逃げ出した奴がいたでしょう?


サボり屋って呼ばれてた奴です」


しばし沈黙が流れた。


やがて見張り台の上から、


ざわめきが聞こえ始める。


サボり屋は再び大声で叫んだ。


「その本人ですよー!


今はちゃんと巡回隊なんですよー!


巡回中に危篤の人を見つけたんですが、


寝かせられる場所がここしかなくて急いで来たんです!」


見張り台の上から誰かが身を乗り出した。


「おい、サボり屋じゃねえか!」


すぐに別の声も飛んでくる。


「音沙汰ねえから、


道端で野垂れ死んだのかと思ってたぞ!」


「田舎者が巡回隊とは出世したな!」


見張り台の上で笑い声とざわめきが入り混じった。


すると誰かがまた叫ぶ。


「ちょっと待ってろ!」


しばらくして、


見張り台の上から誰かが梯子を伝って慌ただしく降りていった。


木柵の向こうで誰かと話しているようだったが、


やがてどこかへ走っていく足音が聞こえた。


そうしてしばらく。


一行は小さな期待を抱きながら、


静かに待っていた。


その間にも、


小さな雨粒がぽつりぽつりと落ち始める。


雫が顔や肩を濡らしていった。


やがて、


雨はしとしとと降り始めた。


ベルがびくりと身を震わせる。


司祭は病人を背負ったまま、


ただ空を見上げていた。


その時だった。


ギィィ――


耳障りな軋み音とともに、


固く閉ざされていた門が開き始める。


門の向こうには、


松明を持った人々が集まっていた。


斧、鎌、棍棒、熊手。


それぞれ違う武器を手にしている。


彼らは警戒の眼差しで一行を見つめていた。


松明を持った中年の男が大声で叫ぶ。


「入れ!」


その瞬間、


一行の顔に安堵がよぎった。


一行は重い足取りで中へ向かう。


そうして村へ入ろうとした、


その時だった。


松明を持った男が手を伸ばし、


一行を制した。


同時に周囲の人々も、


さりげなく武器を構える。


一行が戸惑って立ち止まると、


中年の男は首を振りながら言った。


「武器は置いて入れ」


男の視線がレアとサボり屋へ向く。


レアの眉がぴくりと動いた。


だが短くため息をつくと、


腰の剣を外して差し出した。


サボり屋も文句ひとつ言わず、


盾と剣を渡す。


そして苦笑しながら言った。


「知り合い相手でも厳しいですねぇ」


松明を持った男もつられて笑った。


「知り合いの方が怖いんだよ」


村の中へ入ると、


窓の隙間から漏れる淡い灯りが見えた。


しとしと降る雨音のせいか、


静かな村はどこか不気味に感じられる。


一行は松明の男に案内されながら、


村の奥へ進んでいった。


雨粒は徐々に大きくなり、


濡れた土からは湿った匂いが立ち上っている。


水を含んだ泥はぬかるみ、


歩くたびに足を取られた。


ぺちゃり。


ぐちゃり。


男は先を歩きながらも、


何度も病人の方をちらちらと見ていた。


やがて小さく舌打ちする。


「いやぁ……


症状がちょっとなぁ。


あちこち移されたら厄介なんだが……」


語尾は曖昧に消えた。


男はしばらく考え込むような顔をしたが、


やがて首を振って再び歩き出す。


その独り言に、


一行は何となく顔を見合わせた。


その時、


サボり屋が飄々と口を開く。


「いやいや、そんなこと言わないでくださいよ兄貴。


病人の前であれこれと」


そう言って肩をすくめた。


「俺だったら気前よくベッド一つ貸しますけどねぇ」


松明の男はすぐに言い返した。


「他人事だから気楽に言えるんだろ」


そして病人を顎で示した。


「もし疫病だったら村中えらいことになるぞ。


えらいことに!」


その言葉にベルの表情が一瞬強張った。


だが男はそれ以上何も言わない。


ぶつぶつと文句を言いながら先を歩き続けた。


そうしてさらに少し歩くと、


村の隅にある小さな家が見えてきた。


男はその前で足を止める。


「もしものことがあっちゃ困るからな。


ここがいいだろう」


一行の視線も自然と彼へ向いた。


「入れ」


男は靴についた泥を適当に払うと、


先に中へ入っていった。


一行も慎重に後へ続く。


冷たい空気が一気に押し寄せてきた。


家の中はまるで氷室のようだった。


トリーが思わず身を震わせ、


ベルも小さく肩をすぼめる。


男はその反応を見て、


気まずそうに頭を掻いた。


「今夜は夜警だから火を入れてなくてな……」


照れ隠しのように咳払いをする。


「少し待ってろ。


すぐ暖かくしてやるから」


そう言うと、


すぐ暖炉へ向かった。


薪を何本か押し込み、


火種を起こし始める。


「ほら、あそこにベッドがあるだろ?」


男は部屋の隅のベッドを指差した。


「そこに寝かせて休ませな」


司祭は静かに頷く。


背負っていた病人を慎重にベッドへ横たえた。


病人がかすかにうめき声を漏らす。


司祭は毛布を首元まで引き上げた。


そしてしばらく様子を見てから呟く。


「……まずは一安心か」


エリオンも安堵の息を吐き、


頷いた。


「本当に……


良かったです」


ようやく緊張が解けたのか、


エリオンは壁にもたれて息を吐く。


レアは家の中をゆっくり見回した後、


部屋の隅へどさりと腰を下ろした。


ベルはそんなレアを見つめ、


そっと隣へ座る。


レアはベルを見ると、


小さく笑って言った。


「お疲れさま、ベル」


その言葉にベルは気まずそうに地面を見つめ、


少しだけレアに身を寄せる。


そしてちらりとレアを見ながら言った。


「姉さんも……


お疲れさまでした」


トリーは暖炉へ近寄りながらぼやいた。


「早く火をつけてくださいよ……


凍え死にそうです」


その言葉に男はトリーを一瞥したが、


何も言わず薪を追加する。


しばらくして、


炎がゆっくりと息を吹き返した。


赤い光が揺れ、


ほのかな温もりが広がり始める。


トリーの顔にも、


生き返ったような表情が浮かんだ。


中年の男はしばらく火を見守ると、


手についた灰を払った。


そして扉へ向かう。


取っ手に手をかけかけて、


ふと振り返った。


「できるだけ外には出るなよ。


あちこち歩き回ったら容赦しないからな」


一行は静かに頷いた。


男は再び扉を開こうとしたが、


ぼんやり立っていたサボり屋を見つける。


顎をしゃくった。


「お前はついてこい」


サボり屋が自分を指差す。


「俺です?」


男は呆れたように鼻で笑った。


「まさかこのまま終わると思ったのか?」


そしてにやりと笑う。


「今日は酒樽に沈めてやる日だからな」


サボり屋の口元にも笑みが浮かぶ。


「さっきまで疫病だ何だって言ってたのに」


男は即座に遮った。


「お前とあの人たちを一緒にするか」


そう言って扉を開きながら付け加える。


「咳でもしたら、


お前も同じ部屋に閉じ込めるぞ。分かったな?」


「いやぁ、怖い怖い」


サボり屋は飄々と笑いながら後を追った。


扉が開くと、


冷たい夜気と雨音が一瞬流れ込む。


やがて扉は閉まり、


笑い混じりの話し声も遠ざかっていった。


司祭はしばらく扉の方を見つめた後、


静かに病人の傍へ歩み寄る。


そのまま胸に手を置き、


聖法を使い始めた。


淡い光が病人の身体へゆっくりと染み込んでいく。


だが長くは続かなかった。


司祭はゆっくりと聖法を解く。


疲れた顔で病人を見つめながら、


低く口を開いた。


「……これからは、あの人次第だ」


部屋の中が静まり返る。


司祭はゆっくり目を閉じ、


再び開いた。


「できることは全てやった。


あとは耐え抜くしかない」



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