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巡礼者の道  作者: 잿빛서기관


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周波

第三十二話 周波


神官は病人を背負ったまま、

重い足取りで歩いていた。


力なく垂れた腕が、

神官の肩の下で揺れている。


額には汗が滲んでいた。


エリオンはその姿をしばらく見つめていたが、

やがて前へ出た。


「神官様、ここからは僕が背負います」


神官はしばらくエリオンを見つめた。


そして静かに頷く。


「……頼む」


一行は自然と足を止めた。


エリオンは慎重に病人を受け取り、

背中へ背負う。


ぐったりとした身体が重くのしかかった。


病人はほとんど意識がないのか、

かすかな呻き声を漏らしているだけだった。


ベルが心配そうな顔で病人を見る。


「……大丈夫でしょうか」


トリが努めて明るく言った。


「薬も飲んだし、

きっと良くなるよ」


だが、

誰も確信は持てなかった。


薬を飲ませても、

熱はなかなか下がらない。


エリオンの背中越しにも、

異様な熱気が伝わってくる。


今はとにかく、

身体を横たえられる場所が必要だった。


エリオンが病人を背負うと、

一行は再び歩みを速めた。


先頭を歩いていたサボり屋が口を開く。


「この先に小さな森があるんですよ。

そこを抜けます」


彼は少しだけ振り返った。


表情はあまり良くない。


「ちょいと危険なんですが……

一番近道なんで仕方ないんですよ」


神官が低く答えた。


「ともかく急ぎましょう」


レアが顔をしかめて呟く。


「ほんと次から次へと……」


レアの言葉に、

サボり屋は気まずそうに首の後ろを掻いた。


歩みを急ぐうちに、

森はすぐ目の前まで迫ってきた。


日が傾いているせいか、

森の中はすでに薄暗い。


先頭のサボり屋がゆっくり速度を落とした。


それに合わせて、

一行も自然と立ち止まる。


「……少し息を整えましょう」


短い休憩の間、

風が木々を揺らす音と虫の声だけが響いた。


レアが後ろを振り返る。


ベルはかなり息を切らしていた。


レアは彼女の様子を確認すると、

短くため息を吐く。


「トリ」


トリがすぐ顔を上げた。


「ベルを見失わないように」


レアの鋭い視線が、

周囲の森をなぞる。


「私はあんたたちまで面倒見てる余裕ないから」


トリは緊張した顔で頷いた。


「……うん」


サボり屋も同意するように口を挟む。


「ゴブリンや獣が出ることもありますし」


そう言いながら、

森の奥へちらりと目を向けた。


「運が悪けりゃ

グールが出ることだってありますよ……」


ベルの顔が一瞬で強張った。


サボり屋は目を細めて森を見つめる。


腰の剣の柄を軽く撫でた。


「ここからは本気で飛ばしますよ」


その声には緊張が滲んでいた。


「時間をかければ病人は死ぬし、

俺たちも危なくなる」


そう言って一行を見回す。


「……よく覚えといてください」


サボり屋が低い声で続けた。


「絶対に立ち止まらないでくださいよ」


短い休憩を終え、

一行は再び歩き始めた。


森の中は深い闇に包まれている。


木々が空を覆い隠し、

足元では湿った土と落ち葉が音を立てた。


エリオンは病人を背負ったまま、

荒い息を吐きながら歩き続ける。


背中には相変わらず熱が伝わっていた。


病人の容態は、

少しも良くなっていないようだった。


先頭を行くサボり屋が低く言う。


「速度を落とさないでください」


彼は周囲の森を警戒し続けていた。


「足を止めたら終わりですよ」


誰も返事はしない。


ただ黙って歩みを進める。


ベルはトリのすぐ隣を歩き、


レアは周囲へ鋭い視線を巡らせていた。


その時だった。


レアの目が鋭く光る。


「前方右にゴブリン! 左にも一体!」


叫ぶと同時に、

レアが右側へ飛び出した。


落ち葉が激しく舞い上がる。


不意を突かれたゴブリンが、

慌てて立ち上がった。


だが遅い。


レアは一瞬で間合いを詰めた。


ゴブリンが悲鳴を上げるより早く、

彼女の剣が胴を貫く。


短い悲鳴とともに、

ゴブリンは後ろへ倒れ込んだ。


ほぼ同時に、

左の森から叫び声が響く。


「ギィッ!」


ゴブリンが一行へ飛びかかる。


だがサボり屋が盾で思い切り殴り飛ばした。


「ギャッ!」


ゴブリンの身体が大きく吹き飛ぶ。


遠くで怒ったような唸り声が聞こえた。


サボり屋が叫ぶ。


「進め! 止まるな!」


一行はそのまま速度を維持した。


やがてレアも走って戻ってくる。


剣についた血を払いながら、

何事もなかったような顔をしていた。


トリが呆然と呟く。


「……本当に速いな」


ベルも驚いた顔でレアを見ていた。


レアはぶっきらぼうに言う。


「ぼーっとしないで。


ここからが本番だから」


ふと、

レアの瞳が大きく見開かれた。


彼女は遠くを睨みつけながら叫ぶ。


「前方にグール二体!」


ベルの顔が一瞬で青ざめた。


だがレアは、

すでに身体を動かしていた。


「私が片付ける!

そのまま走って!」


そう言うなり、

風を切って前方へ飛び出す。


落ち葉が激しく舞い上がった。


森の奥から、

グールたちが異様な姿勢で駆けてくる。


その動きは思った以上に速い。


だが――


レアの方が速かった。


彼女は木々の間を滑るように駆け抜け、

一気に間合いを詰める。


一体のグールが、

鋭い爪を振り上げて襲いかかった。


レアはそのまま飛び込んだ。


剣閃が闇を裂いた。


ザシュッ。


刃がグールの首筋を深く切り裂く。


グールは数歩よろめいた後、

そのまま地面へ倒れ伏した。


レアは止まらない。


そのまま身体を捻り、

隣のグールへ斬りかかる。


グールは慌てて腕を上げた。


剣は肉と骨を裂きながら進み、

途中で止まる。


レアの顔が苛立ちに歪んだ。


「ちっ――!」


彼女はそのまま蹴りを放った。


グールの身体が大きく揺らぐ。


レアはさらに体当たりするように飛び込み、

完全に体勢を崩した。


グールは地面へ倒れ込む。


レアはその上へ飛び乗った。


そして躊躇なく、

剣を振り下ろす。


ドスッ。


グールが苦しそうな声を漏らし、

激しくもがいた。


だが――


やがて動かなくなる。


その間も、

一行は走り続けていた。


エリオンは病人を背負ったまま、

荒い息を吐きながら進む。


心臓が激しく脈打っていた。


後方から、

落ち葉を踏みしめる音が聞こえる。


やがてレアが、

剣についた血を払いつつ戻ってきた。


呼吸はかなり荒い。


それでも瞳の鋭さは失われていない。


「そのまま行くよ」


その言葉に、

一行はさらに歩みを速めた。


どれほど進んだだろうか。


息を切らしながら森を抜けた瞬間――


視界が一気に開けた。


目の前には、

広大な草原が広がっている。


エリオンは思わず大きく息を吸い込んだ。


平原がこんなにも嬉しく感じるなんて、


夢にも思わなかった。



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