表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
体調を崩して会社を辞めた私、部屋の扉の先が異世界だったのでスローライフを配信したらバズって人生逆転しました  作者: non


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

第3話 「これ、本当にゲーム?」という疑い


「……1000人、超えてる」


画面の数字を見て、白石紬はしばらく言葉を失った。


同時接続数——1038。


ほんの数分前まで、誰もいなかった配信。


それが今、1000人以上に見られている。


「……すごい」


震える声で呟く。


嬉しい。

でも、それ以上に現実感がなかった。


《コメント:Twitterから来た》

《コメント:拡散されてるぞ》

《コメント:トレンド入りしてるw》


「……え?」


思わずコメントを二度見する。


「トレンド……?」


《コメント:#つむぎの庭 で検索してみ》

《コメント:切り抜きもう上がってる》

《コメント:バズりすぎw》


「ちょっと待って……」


恐る恐るスマホでSNSを開く。


そこには——


『【神ゲー】リアルすぎるVR配信がヤバい』

『水の表現どうなってるのこれ』

『インディーのレベルじゃないだろ』


短い動画と一緒に、自分の配信が大量に拡散されていた。


「……なにこれ」


指先が冷たくなる。


こんな速度で広がるなんて、想像していなかった。


《コメント:有名人も反応してるぞ》

《コメント:企業案件じゃないの?》

《コメント:これガチなら革命》


「えっと……企業とかじゃなくて、本当に個人で……」


説明しようとするが、コメントの流れは止まらない。


その中に、少しずつ“違う空気”が混ざり始めていた。


《コメント:いやこれおかしいだろ》

《コメント:こんな技術あるわけない》

《コメント:どうせ合成》


「……あ」


疑いの声。


当然だと思う。


むしろ、信じる方がおかしい。


《コメント:証明できる?》

《コメント:水飲める?》

《コメント:その場で何か作ってみて》


「……証明」


紬は、小さく呟いた。


確かに。


このままじゃ、“すごい映像”で終わる。


「……やってみる」


私はカメラを持って、家の方へ向かった。


木造の小さな家。


中はシンプルだけど、生活できそうな最低限のものが揃っている。


「えっと……何か、作れるもの……」


視線を巡らせて、ふと止まる。


木の枝と、石。


「……これで、火……起こせるかな」


元ゲーム開発者としての知識というより、ただのサバイバル知識。


でも、それしかなかった。


《コメント:マジでやるの?》

《コメント:リアル検証きた》

《コメント:これで嘘ならバレるぞ》


「……うん」


私は、ゆっくりと枝を組み、石を打ち合わせる。


カチン、カチン、と乾いた音が響く。


何度も、何度も。


「……っ」


体力が削られていくのが分かる。


でも、止められない。


——ここで止まったら、終わる。


そして。


パチ、と小さな火花が散った。


「……!」


もう一度。


カチン。


——ボッ。


小さな火が、確かに生まれた。


「……ついた」


《コメント:え》

《コメント:は?》

《コメント:CGじゃないの?》

《コメント:煙リアルすぎ》


煙が、風に流れていく。


熱が、確かにそこにある。


「……これで、どう?」


思わず、カメラに向かって言う。


すると——


一瞬だけ、コメントが止まった。


そして。


《コメント:これガチじゃね?》

《コメント:いや待って怖い》

《コメント:どうやってんのこれ》

《コメント:現実じゃない?》


「……」


心臓の音が、やけに大きく聞こえる。


——まずい。


これは、“バズ”じゃない。


“疑われ始めてる”。


その時だった。


背後で、水の音がした。


「……え?」


振り返る。


さっきの池。


そこから、あの透明な生き物が、こちらを見ていた。


「……来てる」


《コメント:あの子またいる》

《コメント:追いかけてきてる?》

《コメント:AIやばすぎ》


「……ねぇ」


紬は、そっと手を差し出す。


その瞬間。


その生き物が、ぴょん、と跳ねた。


そして——


手のひらに乗った。


「……っ、かわいい」


ひんやりとした感触。


でも、確かに“生きている”。


《コメント:飼えるじゃん》

《コメント:これペット枠だろ》

《コメント:名前つけろw》


「……名前」


紬は、少し考えて。


「……ミズ、でいいかな」


《コメント:そのままw》

《コメント:かわいいからOK》

《コメント:ミズ爆誕》


同時接続数は、さらに伸びていた。


——5230。


「……え」


もう、理解が追いつかない。


でも、ひとつだけ分かる。


「……戻れないな、これ」


もう普通の生活には戻れない。


この配信は、止まらない。


止められない。


——白石紬の世界は、この瞬間、“ただの配信”ではなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ