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体調を崩して会社を辞めた私、部屋の扉の先が異世界だったのでスローライフを配信したらバズって人生逆転しました  作者: non


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2/6

第2話 同接1000、そして違和感



「……え、ちょっと待って」


画面の右上に表示された数字を見て、思わず声が漏れた。


同時接続数——124。


「……増えすぎじゃない?」


配信を始めて、まだ数分。


さっきまで十数人だったはずの視聴者が、一気に跳ね上がっている。


コメント欄も、さっきとは比べ物にならない速度で流れていた。


《コメント:おすすめから来た》

《コメント:何これリアルすぎる》

《コメント:水の反射どうなってんの?》

《コメント:これマジでゲーム?》


「えっと……来てくれてありがとうございます」


少し戸惑いながらも、私はカメラを池の方へ向ける。


水面は相変わらず透き通っていて、底の石までくっきり見える。


その上を、風が撫でるたびに自然な波紋が広がっていく。


「これ、一応……自作のVRゲームで……」


《コメント:レベルおかしくない?》

《コメント:インディーでこれは無理》

《コメント:企業案件レベル》


「いや、その……趣味で作ってて……」


自分でも苦しい言い訳だと思う。


でも、“異世界です”なんて言えるはずがない。


《コメント:触れるの?》

《コメント:水入れる?》


「えっと……試してみますね」


私はそっと、池に手を入れる。


ひんやりとした冷たさが、指先から伝わってくる。


「……冷たい」


《コメント:え、温度再現あるの?》

《コメント:触覚フィードバックやば》

《コメント:どういう技術?》


「えっと……そこも頑張って作りました」


——いや、作ってない。


でも、そう言うしかない。


その時。


ぴちゃん、と水面が揺れた。


「……え?」


小さな魚のような影が、水の中を横切る。


《コメント:魚いる!?》

《コメント:NPC?》

《コメント:AI挙動リアルすぎ》


「……今の、仕込んでないんだけど」


思わず本音が漏れた。


《コメント:え?》

《コメント:今のガチ?》

《コメント:台本じゃないの?》


「……あ、えっと……ランダムイベント、です」


とっさに言い直す。


心臓がバクバクしている。


——この世界、勝手に動いてる?


《コメント:自由度やば》

《コメント:神ゲー確定》

《コメント:フォローした》


同時接続数は、さらに伸びていた。


——356。


「……え」


さっきの三倍近い。


「ちょっと、ほんとに……?」


手が震える。


嬉しさと、不安が混ざっていた。


その時だった。


《コメント:スパチャ:¥500「応援してます!」》


「……え?」


画面に表示された、見慣れない通知。


「スパチャ……?」


《コメント:きたw》

《コメント:初スパチャおめ》

《コメント:これは伸びる》


「え、あの……ありがとうございます……!」


思わず頭を下げる。


配信でお金をもらう。


それは、ずっと遠い世界の話だと思っていた。


でも今、それが目の前で起きている。


「……いけるかも」


ぽつりと、呟く。


——このままいけば、生きていけるかもしれない。


その時。


また、水面が光った。


今度は、さっきよりもはっきりと。


「……また?」


《コメント:さっきの演出?》

《コメント:イベント発生?》

《コメント:これ何?》


光は、水の底から浮かび上がるように広がっていく。


そして——


小さな、透明な何かが水面に現れた。


「……これ」


まるで、水でできた生き物みたいに、ゆらゆらと揺れている。


《コメント:なにこれ》

《コメント:スライム?》

《コメント:可愛い》


「……こんなの、知らない」


私の知らないものが、この世界にはある。


それはつまり——


「……ここ、本当にゲームじゃない」


でも。


《コメント:飼える?》

《コメント:名前つけようぜ》

《コメント:これはバズる》


「……うん」


私は、カメラをその存在に向けながら、笑った。


「この子、名前つけますか」


《コメント:きたw》

《コメント:神配信》

《コメント:ここ伝説の始まり》


同時接続数——


1000を超えた。


——白石紬の配信は、この瞬間、バズり始めた。

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