第83話
ナジューラの街にて、アリババという青年に出会ったアルディア達。
アリババに連れられて、屋台の茶屋にてヤシの実ジュースを飲みながら、これまでの経緯を
話していた。
だが、話が長くなると判断したアリババが、別の場所へと移動を提案。アルディア達はアリババについて行き、別の場所へと移動したのであった。
――――ナジューラの街・家の前
アリババについてナジューラの街を歩いていくアルディア達。
人魔密度の高い商店街を抜け、一本裏の道に入ると、先ほどまでとは異なる静かな住宅街へと移った。
そのまま住宅街を進んでいくアルディア達。
そして、ある家の前に辿り着くと、アリババは歩みを止めた。
「さ、ついたぞ」
「ここは?」
アルディアは目の前に映る、一件の黄土色の土壁の家を見つめ、そう言う。
「ここが俺の家だ。さ、入ってくれ」
アリババはアルディアにそう返すと、木の扉を開き、中へと入っていった。
アルディア達も、アリババに続き、家の中へと入っていった。
――――アリババの家
「ただいま」
家に入りながらそう言うアリババ。
「「「「おじゃましま~す」」」」
アリババに続き家に入るアルディア達は、そう言うと家に入った。
「おかえり、アリ」
そう言いながら家の奥から一名の女性が姿を現す。
「「「「!!」」」」
出てきた女性を見たアルディア達は、驚きの表情を見せる。
と言うのも、出てきた女性はピンク色の綺麗な長髪、ぱっちりとした二重の紅色の瞳、健康的な小麦色寄りの肌、そしてそんな肌を見せつけるようなビキニスタイルの踊り子のような衣装の服装をしていたのであった。
「モル、ただいま」
アリババは奥から出てきたその女性に帰宅の挨拶をする。
「あの~、アリババさん? このお方は?」
女性の露出の高い容姿にエスメラルダは赤面をしながら、アリババに尋ねる。
「ああ、悪い悪い。彼女は『モルジアナ』。俺の妻だ」
「「「「妻!?!?」」」」
アリババの紹介を聞き、思わず驚き、そう叫んでしまうアルディア達。
一方、モルジアナと紹介をされた女性は、
「はじめまして。アリババの家内、モルジアナです」
と自己紹介をすると、頭を下げる。
自己紹介をした際のモルジアナは、表情こそ硬いものの、着用しているフェイスベールの奥からうっすらと見える口元の口角が僅かに上がっているところを見ると、アルディア達に対し警戒している様子ではないことが伺えた。
「ご丁寧にどうも。ルベンの町議、ザフィーアです」
モルジアナが自己紹介をすると、ザフィーアはお礼を言いつつ自己紹介をする。
そして、ザフィーアに続いて、エスメラルダ、アルディア、ルービィが
「エスメラルダです」
「アルディア、です」
「ルービィだよ!」
と、自己紹介をした。
「しかし驚いたな。まさか既婚者だったとは……」
自己紹介を終えると、ザフィーアは再びアリババの方を向き、そう言う。
「そうだよね。アリババさんって、僕とそんなに年変わらなさそうなのに」
エスメラルダもアリババの方を向きながら、そう言った。
「まぁな。俺は18、モルは23歳だから……、まぁ姉さん女房ってやつだな」
アリババは笑みを浮かべ、鼻の下を指で擦りながらそう答えた。
「ところでアリ、この方達は?」
モルジアナはアルディア達の方へ視線を向けながら、アリババに尋ねる。
「ああ、街でちょっと知り合ってな。面白そうだから話聞きたくて、連れてきた」
アリババは笑顔でモルジアナにそう答えた。
そんなアリババの反応を見たモルジアナは、
「はぁ……」
と溜め息をつく。そして、
「また私に相談せず、勝手に……」
と苦言を呈した。
そんなモルジアナの反応を見たザフィーアは、
「迷惑だったか?」
と尋ねる。
すると、モルジアナは、
「いえ、貴方たちのせいじゃない。うちのバカのせい」
と、首を横に振り、そう答えた。
「バカって、失礼だな」
アリババは目を細め、苦笑いをしながらそう言う。
「事実を言っただけ。ところで、魔石の補充は?」
「……あ」
モルジアナが魔石の魔力補充についてアリババに尋ねると、アリババは忘れてたと言わんばかりの反応をする。
そんなアリババの反応を見て、モルジアナは
「忘れたな、バカ」
と、目を細めて冷たく言い放った。
「モル様、大変申し訳ございませんでした」
目を細め、静かに怒るモルジアナに、土下座をして謝罪をするアリババ。
だが、モルジアナは
「……水浴び、したかったのに」
と、そっぽを向いてしまった。
「水浴び? 補充が必要なのは水の魔石か?」
アリババとモルジアナのやり取りを聞いていたザフィーアが、魔力補充が必要な魔石は水の魔石であるのかと、アリババに尋ねる。
「ああ、そうだ。モルに言われて街に出たのに、すっかり忘れててな……」
アリババは軽く笑い、後頭部を掻きながらザフィーアに答えた。
「水の魔石なら、私が補充しようか」
「本当か!?」
ザフィーアがそう言うと、アリババは目を開き、ザフィーアに顔を近づけてそう言う。
「ああ。私は水属性だしな。それに、街での礼も兼ねて、な」
「そうか、水属性! そりゃあ助かる」
ザフィーアの言葉に安堵の表情を浮かべるアリババ。そして、持っていた鞄から補充用の水の魔石を取り出した。
「この魔石に魔力補充をすればいいのか?」
「そうだ。デカい魔石で悪いけど、頼む」
「わかった」
ザフィーアはそう言うと、アリババの取り出した魔石に右手の掌を乗せると、静かに目を瞑る。
そして、魔石に添えた掌から魔力を込めると、アリババが置いた魔石は、みるみると魔力が補充されていった。
魔力補充を終えると、ザフィーアは魔石から手を離し、
「これで良いか?」
と、アリババの方を向き、そう言う。
補充された魔石を見たアリババは、
「いや、早っ! すげーな、あんた!」
と、ザフィーアの方を見てそう言う。
「そうか?」
驚くアリババにそう返すザフィーア。
「いや、めちゃくちゃはえーよ。街で頼んだら、1時間はかかるぞ、このサイズ」
あっさりとした反応をするザフィーアに、アリババは驚いた表情を浮かべたまま、ザフィーアにそう答えた。
そしてアリババは魔石の方を向くと、
「流石、四柱帝と戦うだけのことはあるな。魔力もナジューラの魔石屋とは段違い、ということか」
と、腕を組み、納得をするのであった。
「四柱帝と戦う?」
アリババの言葉を聞き、そう言ったのはモルジアナであった。
「ああ、そうだ。こいつら、四柱帝との戦いの旅をしてるらしいんだ」
「へぇ……」
アリババがそう言うと、反応しアルディア達の方を向くモルジアナ。
そして、
「私も、聞きたい」
と言うと、アリババの横に座った。
そんなモルジアナを見たアリババは、
「お、モルも聞きたいよな」
とにこりと笑みを浮かべ、そう言う。
そして、アルディア達の方を見ると、
「と、言うわけだ。屋台での続き、教えてくれ」
と言うのであった。
「私、お茶、用意してくる」
アリババがアルディア達にそう言うと、立ち上がり奥へと向かうモルジアナ。
「悪いな、モル。頼むわ」
お茶の用意をしに行くモルジアナの背中に、アリババはそう声をかけたのであった。
モルジアナがお茶を用意すると、アルディア達は北の大陸に渡ってからの冒険を話始める。
カスティード国での出来事、海底城での出来事、東の大陸に戻りディナの都での出来事、バベルでの出来事、天空宮の出来事……。そして、エメラルドドラゴンに乗って南の大陸に渡り、ナジューラへ行く道中、砂漠の遺跡にてルビードラゴンに遭遇した事まで話した。
その話を一通り聞いたアリババとモルジアナは、話を聞き終えると、言葉を失い暫く沈黙をする。
「どうしたの?」
沈黙をしているアリババとモルジアナの様子が気になったアルディアは、両者にそう声をかける。
「いや、なんていうか……」
アルディアの問いかけに、沈黙を打ち破り言葉を出すアリババ。
「話の内容、あまりにも現実味を感じなくて、言葉を失っている……」
続けてモルジアナが、そう答えた。
「まぁ、初めて聞いたらそう思うよね」
アリババとモルジアナの言葉を聞いたエスメラルダが、苦笑いをしながらそう言う。
「四柱帝だけじゃなく、女神フレイア、三神龍、聖石……。神話でしか聞かないものばかりだからな。流石に驚く」
エスメラルダの言葉に、アリババはそう返す。
「まぁ、わかる」
アリババの反応に、ザフィーアは一言、そう言う。
「だけど、一番の驚きは彼女」
今度はモルジアナがそう言うと、アルディアの方を向く。
そして続けて、
「海帝ガブリエル、妖帝ラファエルを倒し、三神龍から聖石を授かるなんて……。もしかして、聖女?」
と言う。
モルジアナの言葉に、アルディアは驚いた表情をし、
「聖女!? 私が!?」
と、裏返った声でそう言う。
「アル、聖女だったの!?」
ルービィは目を輝かせながらアルディアを見つめ、そう言う。
「いや、私、そんな存在じゃないよ?」
目を輝かせるルービィに、困惑をしながらそう返すアルディア。
「まぁ、女神フレイアや三神龍も存在するなら、聖女も存在するだろうが……」
「でも、アルが聖女かはまだわからないよね~」
「そう」
ザフィーアとエスメラルダがそう言うと、モルジアナは一言、そう返した。
「っと、何か部屋暗くなってきたな」
アルディア達の話が一区切りついた頃、アリババはそう言うと部屋を見渡す。
「日が、暮れてきてる」
モルジアナは窓の方へ歩き、窓の木の扉を開き、表の様子を見てそう言う。
「そうか。じゃあそろそろ、水浴びでもするか」
「そうね」
アリババがそう言うと、モルジアナは奥へと移動する。
そして、少し移動をすると、アルディアとルービィの方を向くと、
「貴女たち、一緒にどう?」
と言う。
「え? いいの」
「やった」
モルジアナの誘いに、嬉しそうにそう反応をするアルディアとルービィ。
一方、アリババはというと、
「あれ? モルジアナさん? 俺ではない?」
とモルジアナに尋ねる。
アリババがそう言うと、モルジアナは目を細め、アリババの方を見ると、
「おつかいの一つもまともに出来ない人は、一人で水浴びすればいい」
と言い放った。
モルジアナにそう言われたアリババは、
「そ、そんなぁ~。俺の水浴びの日の楽しみなのに~」
と、その場で膝から崩れ落ちる。
だが、モルジアナは
「自業自得」
とだけ言い放つと、アリババに背中を向けた。
そんなアリババの様子を見たエスメラルダは、
「ねぇ。夫婦って、一緒にお風呂とか水浴びするものなの?」
とザフィーアに尋ねる。
「いや、うちは別々だな」
ザフィーアはエスメラルダにそう答えた。
「(まぁ、私が入っていると、マリンの奴が勝手に入ってくる時はあるがな)」
と、心の中でそう思いながら。
「忘れてたのは俺だけどさ……、そりゃないよモルジアナさ~ん。俺のこの水浴びの日の楽しみの興奮、どう治めればいいんだよ~」
アルディア達が居るにも関わらず、そんな発言をしモルジアナにすり寄るアリババ。
だが、モルジアナは
「なら、"夜の街"にでも出かけたらいい」
と、変わらずそう返した。
「え!? いいの!?」
モルジアナの言葉を聞いたアリババは、さっきまでの状態から一変。鼻の下を伸ばしながらそう言うと、にやけ顔のままザフィーア達の方を見た。
だが、
「いや、私は結構。妻を裏切る気はない」
ザフィーアはそう言うと、掌を突き出す。
「え、え~っと……、僕もそういうのはまだ早いので……」
エスメラルダは赤面をしながら、はっきりとしない口調でそう答えた。
そんなザフィーアとエスメラルダの反応を見たアリババは、
「おいおいお前達。男なのにノってくれないのかよ~」
と、掌で目元を覆い、そう言う。
一方、アリババの姿を見たモルジアナは、
「最低。変態。気持ち悪い」
とアリババに言い捨てる。
そしてアルディアとルービィに、
「さ、行きましょう」
そう言うとアルディアとルービィを連れて水浴びに行くのであった。
自身に言い捨てるようにそう言って水浴びに行くモルジアナの背中を見たアリババは、
「俺は、馬鹿だ……」
そう言うと、その場で両手と両膝をついたのであった。




