第81話
砂漠を抜け、ナジューラの街に到着したアルディア達。
ナジューラの街に辿り着くと、ルービィが単独で走り出す。
そんなルービィを追いかけ、街中へと入っていくアルディア、エスメラルダ、ザフィーア。
一方先行していたルービィはというと、露店のマンゴーを勝手に食べ、店主の男性とトラブルを起こす。
丁度その場に駆けつけたエスメラルダとザフィーア。ルービィのトラブルを止めに入ろうとした時、一名の青年が、先にトラブルに割って入ったのであった……。
――――ナジューラの街・街中
「アリババさん……」
店主の男性は、やってきた黒髪の青年の方を見ると、ボソリと呟く。
「どうしたんだ? 何かあったのか?」
アリババと呼ばれた青年は、自分の名を呟いた男性に事情を尋ねる。
男性は、
「聞いてくれよアリババさん。こいつ、売り物のマンゴーを食いやがってさ……」
と、ルービィを指差しそう言う。
それを聞いたルービィは、頬を膨らませ、
「えー! 欲しいもの持って行っていいって言ったじゃん!」
と、男性に苦言を言う。
「だからそれは商品として欲しいものって意味だって言ってるだろ! バカかテメーは!?」
ルービィの言葉に、男性は再びルービィを方を向き、声を荒げそう言う。
そんなやりとりを見ていた青年は、
「(欲しいものって、言葉通りに受け取ったのか? この魔族の女……)」
と、ルービィと男性の方を見ながら思う。
するとそこへ、
「ルー!」
「一体何したの!?」
と、男性の叫び声を聞いて駆けつけてきたザフィーアとエスメラルダが、姿を現す。
「ザフィ。エスメ」
駆けつけてきたザフィーアとエスメラルダの姿を見て、ルービィは両者に声をかける。
そして、
「何もしてないよ? ただ、欲しいもの持って行っていいって言われたから、欲しいものをもらっただけで……」
と、事情を説明した。
それを聞いていた男性は、
「だーかーらー! それは商品としてって意味だって何度も言ってるだろ!!」
と、声を荒げながらルービィにそう言う。
男性の言葉を聞いたザフィーアとエスメラルダは、全てを察する。
全てを察したエスメラルダは、何も言わず右手の手のひらを額にあて、溜め息をつく。
そしてザフィーアはというと、
「店主、連れがご迷惑をおかけして大変申し訳ない。被害額はいくらで?」
というと、財布を取り出した。
「……マンゴー1玉、300ガラッドだ」
店主の男性は、ぶっきらぼうな態度で、ザフィーアにそう答える。
「300ガラッドか。承知した」
ザフィーアはそう言うと、財布から300ガラッドを取り出す。
そして
「300ガラッド丁度だ。本当に申し訳ない」
と頭を下げながら、男性に300ガラッドを支払った。
男性はぶっきらぼうにザフィーアから300ガラッドを受け取ると、
「次からは、気をつけてくれよ!」
と、一言、そう言った。
「わかった。この度は連れがご迷惑をおかけして、大変申し訳ない」
ザフィーアはそう言うと、再び頭を下げたのであった。
ルービィと店主の男性のトラブルが一段落した頃、人魔混みをかき分けながらやってきたアルディアが、息を切らしながらやってくる。
「はぁ……はぁ……、ようやく追いついた……」
一同の前にやってくると、アルディアは息を切らし、両手を両膝につきながらそう言う。
「アル……お疲れ様」
エスメラルダは息を切らすアルディアを見ながら、そう言う。
「もー、人族も魔族もいっぱいで大変だよ……」
自身に声をかけてきたエスメラルダに、アルディアは思わず愚痴をこぼした。
「まぁ、慣れていないアルには大変だっただろうな」
「僕たちですら、この密度は初めてだしね」
アルディアがこぼした愚痴に、ザフィーアとエスメラルダはそう返した。
そして、ルービィはと言うと、アルディアの姿を見ると、
「あ、アルー!」
と、アルディアに声をかける。
そして、店の売り物のマンゴーを1玉、手に取ると、
「アル、コレ、すっごくおいしいよ!」
とマンゴーをアルディアに差し出した。
「あ、テメー! また……」
ルービィがマンゴーを持って行くと、店主の男性はまたしても声をあげる。
そして、アリババと呼ばれた青年はというと、
「(さっき解決してもらったのに、また同じ事やるのか?)」
と、不思議そうな顔をしながらルービィの様子を伺った。
ルービィの差し出すマンゴーを見たアルディア。そして、次に店主の男性の方を向く。
店主の男性の怒っている表情を見たアルディアは、
「ルーちゃん、これ、売り物じゃあ……」
とルービィに尋ねる。
「?」
アルディアの言葉に、ルービィは首を傾げる。
そのルービィの様子を見ていたアリババは、
「(この女、全くわかってないのか? 一体どんな環境で育ったんだ……)」
と首を傾げながらルービィを見つめる。
「売り物だとお金払わないとダメだよ……。でも、私、お金もってないよ?」
「でも甘くって、おいしいよ?」
「甘いっ……!」
ルービィの甘いという言葉に、アルディアは生唾を飲み込む。
そして、無言のままルービィの手に持つマンゴーをじっくりと見つめた。
だが、商品であるという点が気になり、アルディアは店主の男性の方へ視線を向ける。店主の男性は、商品であるマンゴーを手に持つアルディアを鋭い表情で睨んでいた。
そんな男性の表情を見たアルディアは、首を横に振り、マンゴーを持つ手を前に出し、マンゴーを返却しようとする。
しかしながら一方で、ルービィの言っていた『甘い』という言葉が脳裏を過り、アルディアはマンゴーを諦めようにも諦めきれない状態へと陥っていた。
そんなアルディアを見ていたエスメラルダは、
「あーもー、いいよ! アル、食べなよ! 僕がお金払うから!」
そういうと、エスメラルダは財布を取り出し、店主の男性にマンゴー代300ガラッドを支払った。
「え、いいの?」
アルディアはマンゴーを手に持ちながら目を見開き、エスメラルダに尋ねる。
「いいよ。お金はもう払ったから」
エスメラルダは軽く溜め息をつきながら、アルディアにそう言う。
エスメラルダの言葉を聞くと、アルディアはマンゴーを見つめ、生唾を飲む。
そして、
「じゃあ、いただきます」
そういうと、パクリと一口、マンゴーを食べた。
口の中に広がる濃厚な甘さに、アルディアは思わず再び目を見開く。
そして、
「甘~い!」
と、目を輝かせながらそう言った。
「でしょ?」
目を輝かせ、笑みを浮かべるアルディアに、ルービィは嬉しそうにそう言う。
アルディアはそんなルービィを見ると、
「あ、ルーちゃんも一緒に食べる?」
と尋ねる。
「いいの!?」
アルディアの言葉に、ルービィは目を輝かせながらそう言う。
「いいよ。一緒に食べよう」
アルディアはそう言うと、銀のロッドを取り出すとレイセイバーを発動。作り出したレイセイバーで手に持つマンゴーを切断し、自身が口をつけていない方をルービィに差し出した。
ルービィはアルディアが差し出したマンゴーを受け取ると、
「ありがとう、アル」
と言う。
そしてアルディアとルービィは、手に持ったマンゴーを満面の笑みを浮かべながら食べ進めたのであった。
そんなアルディアとルービィの様子を見て、
「ははは、あんたら、面白いな!」
とアリババは笑いながらそう言う。
「アリババさん、笑い事じゃねーよ……」
店主の男性は、げんなりとした表情を浮かべながらアリババにそう返す。
「まぁそう言うなよ。結果的にマンゴー2玉売れたわけだし」
「まぁ、そうだけどよ……」
アリババがそういうと、店主の男性はどことなく納得しない様子で、そう答える。
「それにあいつら、あの様子じゃ本当に悪気がなかったみたいだしな。はは、本当に面白いよな。まさか金の概念すら知らないなんて」
アリババはそう言うと、今度はアルディア達のところへと歩みを進める。
そして、アルディア達の下へいくと
「おーい、食ってるところ悪いけど、それ食べ終わったらちょっと俺につきあってくれないか?」
と、アルディア達にそう言った。
「?」
アリババの言葉に首を傾げるアルディア。
だが、濃厚な甘さのマンゴーの誘惑には勝てず、とりあえず手に持っているマンゴーを食べ続けるのであった。




