第79話
砂漠の遺跡内部で、ルビードラゴンと交戦をしていたアルディア達。
ルビードラゴンの放つ熱閃のブレスの直撃を受けかけたところ、アルディアの手に持っていた聖石サファイアが輝き、藍色の光がアルディア達を守る。
その様子を見たルビードラゴンは攻撃を中断。アルディア達の話を聞く旨を、告げた。
――――砂漠の遺跡・内部
「少し、話を聞こう」
アルディア達にそう話しかけると、攻撃を止めるルビードラゴン。
突然の態度の変化に、アルディア達はきょとんとしながら、その場に立ち尽くす。
「……どうした? 何も話すことはないのか?」
立ち尽くすアルディア達に、そう尋ねるルビードラゴン。
「いや、そういうわけじゃあ……」
ルビードラゴンの言葉に、困惑した様子でそう言葉を返すエスメラルダ。
「(どうしたんだ? ルビードラゴン)」
「(急に攻撃やめたね。何でだろ?)」
「(僕たちが無事だったのと、何か理由があるのかな?)」
「(ちょっと聞いてみる?)」
「(そうだね)」
エスメラルダはアルディアと小声で話をした後、
「えっと……、どうして急に、僕たちの話を聞こうとしてくれたんですか?」
と、ルビードラゴンに尋ねる。
「娘の持つ聖石が、主を守ったからだ」
エスメラルダの問いかけに対し、ルビードラゴンはゆっくりと、そう答える。
「守った……?」
「もしかして、あの藍色の光のこと?」
首を傾げながら、そう言うアルディアとエスメラルダ。
「そうだ。偽りの聖石であれば、そもそもそのような事は起こることはない。万が一に、本物の聖石であったとしても、主でない者が持ったところで、ただの石でしかない」
「ただの石って……」
ルビードラゴンの言葉に、苦笑いを浮かべながらそう返すエスメラルダ。
「聖石の主って、エメラルドドラゴンが言ってた……」
「ああ。聖石の魔力を魂に宿している状態、だな」
アルディア達とルビードラゴンのやりとりを、少し離れた場所で見ていたルービィとザフィーアが、そのやりとりを聞きながらそう言う。
そのやりとりを聞いていたルビードラゴンは、
「そこの魔族と人族の言うとおりだ」
と、ルービィ達の方へ首を少し振り、アルディア達へとそう言う。
「聖石は、我ら三神龍に認められた主の為にこそ、その魔力を見せる。サファイアが反応したということは、少なくともサファイアドラゴンはその娘を認めたのだろう」
「認められてる……のかな?」
ルビードラゴンの言葉に、アルディアはいつも通り、自信なさげに首を傾げ、そう返した。
そのアルディアの反応を見ていたエスメラルダは、
「いやそこははっきりと肯定しなよ! アルはサファイアドラゴンだけじゃなく、エメラルドドラゴンにも認められてるんだから!」
とアルディアに突っ込む。
そして内心で、
「(それに肯定しないと、ルビードラゴンがまた暴れ出すかもしれないじゃないか!)」
と、ローブの中の背中に冷や汗を流すのであった。
だが、ルビードラゴンはというと、
「謙遜するか。面白い娘だな」
と、アルディアのリアクションを面白がる様子を見せる。
そして、
「気に入った。どれ、我が聖域に侵入した理由、話してみよ」
とアルディア達に話をするよう促した。
「えっと、じゃあ……」
エスメラルダはそう言うと、一同を代表し、これまでの経緯をルビードラゴンに説明をした。
エメラルドドラゴンに乗って東の大陸から南の大陸へ移動した事、降りた先で早々に砂嵐に襲われた事、砂嵐から避難するために遺跡に入った事、そして仲間のルービィの好奇心によりこの場所まで進んだ事……。
エスメラルダの説明を一通り聞き終えると、
「はははははははは!!!」
と大声で笑うルビードラゴン。
そして、
「好奇心で進むか。良く言えば怖いもの知らず、悪く言うと無鉄砲だな!」
と、ルービィの方を見てそう言った。
「いや~、それほどでも……」
ルビードラゴンの言葉に、ルービィは少し照れながら後頭部を掻き、そう答える。
そんなルービィの様子を見たザフィーアは、
「ルー、多分褒めてはいないぞ……」
と、呆れた様子を見せながら、ルービィに小声でそう言うのであった。
そんなやりとりを見て、更に笑うルビードラゴン。
そして、
「しかしまぁ……エメラルドドラゴンめ、わざわざそんな場所に降ろしたのか」
と、今度は遺跡の上部を見ながらそう言う。
「エメラルドドラゴンの降ろした場所が、どうかしたのですか?」
アルディアは首を傾げ、ルビードラゴンに尋ねる。
「ナジューラの街の者の目につくと困るのであれば、ナジューラの場所が目視できる辺りで降りればよいものを……。態々、我が聖域の近くで降りたのは、お前達と我を会わせるためだったのだろう」
「成る程」
ルビードラゴンの返しに、納得をした様子を見せるアルディア。
「でもさ、僕たちが砂嵐に襲われたから、この遺跡に立ち寄ったわけで……。そもそも砂嵐に襲われなかったら、寄らなかったかもしれないじゃん?」
「確かに、その通りだ」
エスメラルダの言葉に、そう返すルビードラゴン。
そして、
「そこはまぁ、何だ。聖石の導きとでも言っておこうか」
と、軽く笑いながら言葉を続けたのであった。
「そんな適当な……」
ルビードラゴンの言葉に、エスメラルダは呆れた様子で、そう返すのであった。
「でもお陰でルビードラゴンにも会えたわけだし、結果オーライじゃないかな?」
エスメラルダとルビードラゴンのやりとりに、ルービィが横から入ってそう言う。
「間違っても、ルーが言うことではないがな……」
そんなルービィに対し、ザフィーアは冷静にツッコミを入れた。
「あはは……」
ザフィーアのツッコミに、ルービィは愛想笑いをして誤魔化すのであった。
「ま、まぁとりあえず僕たちが、ルビードラゴンを狙った侵入者じゃないって事を理解してもらえただけでも良かったよ」
エスメラルダが話を締めるかのように、そう言う。
「そうだね。このまま戦ったら危なかったもんね」
エスメラルダに続き、アルディアがそう言う。
「砂嵐は落ち着いたか? 問題なければナジューラに向かいたいところだが……」
刀を仕舞い、立ち上がりながら、そう言葉を口にするザフィーア。
「南の大陸の砂嵐は一過性のものだ。長く舞うことはあるまい」
ザフィーアの言葉に、ルビードラゴンはそう答えた。
「そうか。ならば外に出たら、砂嵐は晴れているかもな」
ルビードラゴンの言葉を聞いたザフィーアは、そう言うと遺跡から出る準備を始めた。
そんなザフィーアの様子を見たエスメラルダは
「なら早速、外に出てみようか」
と言うと、ザフィーアに続き、旅立つ準備を始めた。
そして、そんなザフィーアとエスメラルダを見たアルディアとルービィも、外へ出る準備を始めたのであった。
一同は準備を終えると、アルディアが代表して
「じゃあそろそろ行くね。ルビードラゴン、勝手に入っちゃってごめんね」
と、遺跡の奥地に勝手に侵入したことを改めて詫びる。
そして一同はその場を後にしようとした。
すると、
「待て」
「「「「!?」」」」
突然のルビードラゴンの呼びかけに足を止め、振り返る一同。
「どうしたの?」
声をかけるルビードラゴンに、そう尋ねるアルディア。
「餞別だ。これを持って行け」
ルビードラゴンはそう言うと、アルディアに紅色に輝くこぶし大の宝石を差し出した。
「これは?」
ルビードラゴンが差し出した宝石を両手で受け取ると、アルディアはルビードラゴンの方へ顔を向け、尋ねる。
「聖石『大地のルビー』だ」
自身に尋ねるアルディアに対し、ルビードラゴンはそう答える。
「え!? 私何もしてないよ? いいの?」
聖石を授かったアルディアは、驚き、ルビードラゴンに尋ねる。
だが、ルビードラゴンは
「サファイアドラゴン、エメラルドドラゴンも認め、我が目でも聖石の主である事も確認できたからな。我も汝を主として認めよう」
とアルディアに返した。
そんなやりとりを見ていたエスメラルダが、
「いや、南の大陸来て早速だね……」
と、言葉を漏らした。
「大方、この大陸にも四柱帝が居るのだろう? その戦いの役に立てるといい」
「うん……わかった。ありがとう、ルビードラゴン」
アルディアはそういうと、ルビードラゴンに頭を下げる。
そして、ルビードラゴンから聖石『大地のルビー』を受け取ると、アルディア達は再び歩みを進め、遺跡の外へと向かったのであった。
――――砂漠の遺跡・外
「砂嵐、すっかり晴れているな」
遺跡の外へ出て、外の様子を見たザフィーアが、辺りを見渡しながらそう言う。
「そして雲一つない晴れ空だね……」
一方、エスメラルダは砂嵐が晴れて晴天模様の外を見て、溜め息をつきながらそう言う。
そして、
「またこの暑い中、進むのかぁ~……」
そう言うと、再び大きく、溜め息をついた。
「まぁ、とはいえ昼のうちに進まないと、砂漠の夜は冷えるからな。早々に進もう」
「そうだね。……はぁ」
ザフィーアの言葉にエスメラルダはそう返すと、日よけのローブを身に纏う。
そして、アルディアとルービィも日よけのローブを身に纏うと、一同は再び、ナジューラの街を目指し、旅立ったのであった。




