第73話
エメラルドドラゴンの背に乗り、ディナの都へと訪れたアルディア達。
ディアにこれまでの経緯を説明した後、一同は次の目的地を南の大陸と定めた。
そしてその日は、ディアの提案により、ラファエル討伐の宴でもてなしを受けた一同。
翌日、ディナの都を後にし、数日かけて港町ルベンへと向かったのであった。
――――港町ルベン・ザフィーアの家
ルベンに辿り着くと、真っ直ぐにザフィーアの家へと向かう一同。
「ただいま」
ザフィーアの家に着くと、一同はザフィーアを先頭に、家の中へと上がる。
ザフィーアが家に上がると、家の奥よりドタドタドタ、と慌ただしい足音が聞こえてきた。
そしてその足音の主は、ザフィーア達のいる玄関のところまでやってくると、
「おっそーーーい!!!」
と言うと、ザフィーアの頭を平手打ちするのであった。
不意打ちを受けたザフィーアは、叩かれた箇所を両手で押さえながらその場で蹲る。
そして、頭を押さえたまま顔だけ上に上げると、
「いきなり何をする、マリン」
と、ザフィーアの頭を叩いた主、マリンにそう言った。
「何をする? ハァ? あんたこそ、どこで油売ってたのよ」
苦言を呈するザフィーアを両腕を組みながら見下ろし、マリンはザフィーアにそう返した。
「どこで油売ってたって……。ディナの都でディア様に、お義父さんの葛籠の件のお礼を含めてラファエル討伐の報告に行ってから戻るって、ミニオンで連絡しただろう……」
「あ、そうだったわね。アハハ、ごめんごめん」
「……」
笑いながら平謝りをするマリンに、ザフィーアは何も言わず、目を閉じ、眉間に皺を寄せながら右手の指を眉間に当て、溜め息をつくのであった。
「ま、こんなところで話も何だから、中上がりなさいよ」
「「「お邪魔しまーす」」」
マリンの案内に、アルディア、エスメラルダ、ルービィの三者は挨拶をし、中へと上がる。
アルディア達がマリンに連れられて中へと上がっていくと、ザフィーアも無言のまま、中へと上がっていったのであった。
――――ザフィーアの家・客間
客間に上がると、マリンに案内されるまま床に座るアルディア達。
アルディア達を案内すると、マリンは奥へと向かった。
そしてそのまま、少しの間待っていると、
「あんたたち、お待たせ!」
と言いながら、マリンがお茶の入った湯飲みを人数分持ってきた。
「マリンさん、いつもすいません」
マリンからお茶を受け取りながら、エスメラルダはそう言う。
「ありがとうございます」
「ありがとー」
アルディア、ルービィもマリンからお茶を受け取ると、それぞれお礼を言った。
そしてザフィーアも、
「……すまない」
と、小声でマリンにお礼を言うのであった。
「さて、じゃあ早速、バベルへ行ってからの話、聞かせてもらおうかしら!」
一同にお茶を出した後、マリンも床に座ると、早速話を切り出した。
マリンがそう言うと、ザフィーアがバベルへ行ってから、四柱帝妖帝ラファエルを倒すまでの経緯を全て、マリンに説明をした。
ザフィーアが経緯を順番に話をしていくと、話の中で出てくる神話級の内容にその都度、マリンは目を丸くしながらも瞳を輝かせ、まるでお伽話を聞く子供のような反応を見せた。
そして、ザフィーアが一通り話を終えると、
「はぁ~……。前の北の大陸での話の時も思ったけど、相変わらず現実味を感じない話ねぇ」
と、マリンはそう感想を述べた。
「まぁ、そうだろうな」
マリンの感想に、ザフィーアは一言、そのように返す。
「しかも今回は、四柱帝は実はクリーチャーでしたとか、天空宮は神話時代の建物でしたとか、そして極めつけには女神フレイアについても、だしねぇ」
ザフィーアとマリンの横から、エスメラルダが苦笑いをしながらそう言った。
「あんたたちの話聞いてると、ホント、四柱帝って神話級の化け物だって事、改めて思い知らされるわ」
マリンはそう言うと、手に持った湯飲みお茶をすする。
そして、湯飲みを置くと、アルディアの方へ目を向け、
「でも、そんな化け物を倒しただなんて、アルディアちゃん、あんた本当に凄いわね!」
と、アルディアに笑顔を向けた。
「そ、そうかな……?」
マリンに褒められたアルディアは、いつも通り照れくさそうに顔を赤らめたのであった。
そんなアルディアを見たマリンは、
「もう! そんな謙遜するんじゃないわよ! この数年、誰も倒せなかった四柱帝を、あんたは既に2体も倒してるんだから! もっと胸を張りなさい」
と、アルディアの肩を叩くのであった。
だが、アルディアは、
「う、う~~ん……」
と、マリンがそう言っても尚、はっきりとしない反応を示すのであった。
そんなアルディアの様子を見ていたザフィーアが、
「マリン。アルが困ってるからその位にしてやれ」
と、マリンに言うのであった。
ザフィーアにそのように言われたマリンは、改めてアルディアの方を見た後、
「……ま、とりあえずあんたたちが無事なら、それが一番ね」
と言うと、改めてお茶を飲むのであった。
「……すいません、マリンさん」
お茶を飲むマリンに、少し申し訳なさそうにそう言うアルディア。
そんなアルディアの様子に、マリンは
「何? 謝ることなんて何もしてないじゃない」
と、笑いながらそう答えたのであった。
「ところであんたたち、今後はどうするつもりなの?」
話を切り替えるかのように、今後の事について話題を切り出すマリン。
「ああ、この後だが、残りの四柱帝討伐に向けて、今度は南の大陸へ向かおうと思っている」
マリンの問いかけに、ザフィーアはそのように答える。
「南の大陸ねぇ。また暑いところへ行くのね」
「そうだな。だから向かう前に準備も必要だが……」
「それよりも、行き方も、じゃない?」
ザフィーアが南の大陸での旅の準備について話をしていると、横からエスメラルダが南の大陸への渡り方についての話題にも触れる。
「そうだな。南の大陸となると、ルベンから行くのも遠いしな……」
「南の大陸に渡れそうな船があるとしたら……、レビ平原西側にある『ヨセフの町』かな?」
「……エメラルドドラゴンに運んでもらったら?」
ザフィーアとエスメラルダが南の大陸への行き方について議論をしていると、その横からマリンが突然、そのような提案をする。
「エメラルドドラゴンにか?」
マリンの提案に、オウム返しのような反応をするザフィーア。
「そうよ。あんたたち、天空宮への移動や、天空宮から戻るのにエメラルドドラゴンに乗せてもらったんでしょう? なら南の大陸行くのも、エメラルドドラゴンに乗せてもらえば直ぐでしょ」
「確かに直ぐだが……」
「そもそもどうやってエメラルドドラゴンに依頼するかだよね」
マリンの提案に、エメラルドドラゴンを呼ぶ方法について疑問を呈するエスメラルダ。
するとマリンはアルディアの方へ向き、
「それはホラ。アルディアちゃんの持ってる聖石を使えば」
「?これ」
マリンがそう言うと、アルディアは仕舞っていた緑色に輝くこぶし大の宝石、聖石エメラルドを取り出す。
「そう。その聖石使えば呼べるんじゃない?」
マリンはアルディアが手に持つ聖石エメラルドを指差し、そう言う。
「いや、エメラルドでエメラルドドラゴンが呼べるかは確証はないが……」
マリンの提案に、そう返すザフィーア。
「呼べる確証がないって言うけど、呼べない確証もないんでしょ?」
「まぁ、それはそうだが……」
「じゃ、呼ぶだけ呼んでみなさいよ。それでダメなら、ヨセフから行けばいいでしょ?」
「まぁ、そうだな……」
マリンに押され、ザフィーアは歯切れの悪い反応をする。
そんなザフィーアの様子を見て、マリンは
「じゃ、決定ね。いやー、あたし、三神龍見てみたかったのよねー」
と、強引にアルディア達の旅立ちの方向性を決めたのであった。
そんなマリンの様子を見たザフィーアは、
「(三神龍が見たかったっていうのが本音か……)」
と、心の中で呟くのであった。




