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第71話

 ――――ディナの屋敷・ディアの部屋

 アルディアとエメラルドドラゴンが、ラファエルを冥界へ還した頃と同じ頃。

 ディナの都の屋敷では、先と変わらず騒がしい様子であった。

「ディア様、失礼いたします」

 屋敷の役人が、またしてもディアの部屋の襖を勢いよく開ける。

「どうした!? 都で何かあったのか!?」

 ディアは慌てた様子で役人に尋ねる。

 先の報告の際、ディナの都の近隣で幾つもの雷が目撃されており、警戒態勢をひいていた中での報告。ディアは最悪の自体を想定していた。

 だが、役人から返ってきたのは、ディアの想定とは異なるものであった。

「いえ、実は、その雷ですが、つい先ほど、収まりまして……」

「雷が収まったのか?」

 報告を聞いたディアは、首を傾げる。

 と言うのも、先の慌てた様子からはとても出てくるような報告ではなかったため、役人が慌てて入室した理由が理解できなかったのであった。

 ディアが首を傾げている一方で、役人は報告を続けた。

「それと同時に、牢に拘留していたハインに操られていた者達が、意識を取り戻しました」

「何だと!」

 役人の報告を聞き、大きな声をあげるディア。

「(ハインの操っていた者達は、確かラファエルの術で精神を奪われていた者達……。その意識が戻ったというのは、まさか……)牢まで、案内してくれるか」

 ディアは少し考え込んだ後、役人に案内を依頼する。

「畏まりました」

 役人は二つ返事で答えると、ディアを牢まで案内したのであった。


 ――――ディナの屋敷・牢の前

 役人に案内されながら、屋敷の離れにある牢に向かうディア。

 牢の前につくと、そこには役人の報告通りの光景が広がっていた。

「なぁ、俺たちは一体……」

「っていうかここどこだよ……」

「なんだろ。私、ずっと眠っていたような……」

 意識を取り戻し、現状把握ができない者達が、牢の中で口々にそう言う。

 そんな光景を見て、ディアは

「はは、ははははははは!」

 と、思わず大声で笑った。

「ディア様?」

 突然笑い出すディアに困惑した役人が、ディアに声をかける。

「いや、すまない。だが、これが笑わずにいられようか」

 ディアは笑いながら、役人のそう返した。

 そして続けて、

「皆に伝えてくれ。宴の準備を進めるように、と」

 と、役人に指示を出したのであった。


 ――――天空宮・円卓の間

 ラファエルとの戦いで、机や椅子が至るところに転がっている円卓の間。

 床に座り込むルービィを中心に、エスメラルダとザフィーアがそれぞれ左右に立ち、三者は静かに外の方を見ていた。

「……アル、戻ってこないね」

 静寂を打ち破るかのように、ポツリとそう言うルービィ。

「そうだな」

 ザフィーアは短く、そう返す。

「ラファエルも出て行ったままだね。……戻って来なくてもいいけど」

 今度は、エスメラルダがポツリとそう言う。

「まあ、な」

 ザフィーアはまたしても短く、そう返す。

「もしかして、本当にハンバーグを用意してるんじゃあ……」

「アルがあれくらいでやられるわけない!!」

 エスメラルダがそう言いかけると、その言葉を遮るかのようにルービィは声を荒げそう言う。

 エスメラルダを睨み付けるルービィの目は、うっすらと涙が滲んでおり、今にも泣き出しそうな様子であった。

「わ、わかってるよ。ごめん、冗談だよ……」

 涙目のルービィに睨み付けられたエスメラルダは、慌てた様子でルービィにそう言う。

「エスメ、今のは冗談でも笑えないぞ」

 横で両者のやり取りを聞いていたザフィーアは、冷静な口調で、エスメラルダにそう注意をした。

「だね。ごめん……」

 エスメラルダは反省した様子で、少し低い声で、そう謝った。

 そんなやりとりをしていると、何かが突如、天空宮の屋外から姿を現す。

「「「!!!」」」

 突如現れたそれに、声にならない驚きを見せる三者。

「え、エメラルドドラゴン……?」

 驚きの後、現れたエメラルドグリーンのドラゴンの顔を見て、エスメラルダはゆっくりとそう言う。

 だが、そんな驚きは次の瞬間、更なる驚きへと変わる。

「えへへ、……ただいま」

 そう言いながら、エメラルドドラゴンの背から顔を出すアルディア。

 アルディアの姿を見た三者は、目を見開き、口を開いたまま固まっていた。

 そのまま少しの間固まっていたが、次第に各々、反応を示し始める。

「あ……、アルー!!」

 立ち上がり、笑顔でアルディアの方へ駆け寄るルービィ。

「よかった、無事だったんだ……」

 ホッと胸をなで下ろすエスメラルダ。

「……」

 そして、ザフィーアは無言で静かに笑みを浮かべたのであった。

「皆、ごめんね? 心配させたかな?」

 アルディアは少し申し訳なさそうにそう言う。

「心配? したよおぉぉぉ!!!」

 エメラルドドラゴンの背に乗っかると、ルービィは泣きながらアルディアに抱きついた。

「ごめんね、ルーちゃん」

 抱きつくルービィに謝るアルディア。

「ところで、ラファエルはどうなったの?」

 ルービィがアルディアに抱きついている横で、エスメラルダがアルディアに尋ねる。

「ラファエル? うん、エメラルドドラゴンのお陰で、何とか倒したよ」

「え!?」

 アルディアの言葉に驚いた様子を見せるエスメラルダ。

 ザフィーアも、

「ガブリエルに続き、ラファエルも倒したのか……」

 と、冷静ながらも驚いた様子を見せていた。

 一方、ルービィは、

「アル、すごーい!!」

 と、またしてもアルディアに強く抱きつく。

 そして、エメラルドドラゴンはと言うと、

「謙遜するな。ラファエルにとどめを刺したのは、お前だ」

 とアルディアに言葉をかけた。

 エメラルドドラゴンの言葉に、アルディアは顔をうっすらと赤らめ、照れくさそうに指で頬をかいた。

「まぁ、満身創痍のラファエル相手でも、最後は全開のオーバードライブ使ってようやく、だったけどね」

「全開……まぁ四柱帝相手だし、やっぱり2倍まで出さないと倒せないよね」

 アルディアが全開のオーバードライブを使ったという話を聞き、エスメラルダはそう答えた。

「まぁ、どういう形であれ妖帝ラファエルは倒せたわけだ。それは何よりだろう」

「そだね~」

 ザフィーアがそう言うと、それに同調するかのようにアルディアに抱きついたままのルービィがそう言う。

「そうだな。これで空を脅かすクリーチャーはいなくなったわけだ。空を司る神龍として礼を言うぞ」

 エメラルドドラゴンが、背に乗るアルディアにそう言う。

 そして続けて、

「とりあえず、地上まで送ろう。さぁ、乗れ」

 と、エスメラルダとザフィーアに背に乗るよう促す。

「すまない」

「お願いします」

 ザフィーアとエスメラルダはそう言うと、エメラルドドラゴンの背に乗る。

 一同が全員エメラルドドラゴンの背に乗ると、エメラルドドラゴンはそのまま飛び立ち、一同は天空宮を後にしたのであった。


 ――――レビ平原

 エメラルドドラゴンの背に乗り、天空宮から移動をしたアルディア達。

 ザフィーアの提案により、一同はレビ平原へと到着した。

「ここでいいのか?」

 レビ平原に降り立ったエメラルドドラゴンが、自身の背から降りるアルディア達に尋ねる。

「ああ、この先のディナの都に居るディア殿に、お礼を報告をしに行きたいのでな」

 ザフィーアはエメラルドドラゴンの問いかけに、そう答える。

「そうか」

 ザフィーアの返答に、エメラルドドラゴンは一言、そう返した。

「色々と助けていただいたな。感謝する」

 ザフィーアはそう言うと、エメラルドドラゴンに頭を下げる。

 ザフィーアが下げた頭を上げると、一同はそのまま、ディナの都の方へと歩き始めた。

「待て!」

 ディナの都に向かって歩く一同を制止するように、声をかけるエメラルドドラゴン。

 エメラルドドラゴンの声に、一同は歩みを止め、エメラルドドラゴンの方へ振り向いた。

「どうしたの? エメラルドドラゴン」

 突然呼び止めるエメラルドドラゴンに尋ねるアルディア。

「これを、お前に渡そうと思ってな」

 エメラルドドラゴンはそう言うと、両翼の翼を大きく広げた。

 すると、アルディアの上部よりこぶし大の緑色の宝石が、ゆっくりと落ちてきた。

 落ちてきた緑色に輝く宝石を、両手で受け取るアルディア。

 アルディアが宝石を受け取った事を確認すると、

「聖石『大空おおぞらのエメラルド』だ」

 そう言うエメラルドドラゴン。

「此度の件で我もお前を認めよう。空の力、お前に授けるぞ」

「え゛? いいの?」

 聖石『大空のエメラルド』を受け取ったアルディアは、手にエメラルドを持ったまま、顔を上げ、エメラルドドラゴンの方を見てそう言う。

「勿論だ。それに見合う程の事を、お前はやってくれたのだ」

 エメラルドドラゴンは、アルディアにそう答えた。

 エメラルドドラゴンの答えを聞いたアルディアは、

「ありがとう。エメラルドドラゴン」

 と、ニコリと笑い、礼を言った。

 そして、エメラルドドラゴンに礼を言った後、アルディア達は再び、ディナの都へ向かって歩き始めたのであった。

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