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第70話

「『グラン・テンペスト』!!」

 ラファエルの叫びと共に放たれる金雷扇と銀風扇。

 ラファエルが金雷扇と銀風扇を放つと、それと同時に先までのテンペストより明確に違いがわかる程度に大きな雷と竜巻の嵐が、アルディア達に向かって飛んできた。

「むぅ、これは……」

「す、吸い込まれそう」

 ラファエルの放ったグラン・テンペストの竜巻は、周囲の物を取り込みながらアルディア達に向かって進んでいく。

 アルディア達もその竜巻に、吸い込まれそうになるのを堪えていた。

 一方で、グラン・テンペストは周囲を取り込みながら勢力を拡大。どんどんと強さを増しながらアルディア達に向かって襲ってきた。

「くっ……!」

 勢いを増し、更に吸い込む力を増すグラン・テンペストに対し、吸い込まれないよう堪えるアルディア。

 そんな状況に対し、エメラルドドラゴンは、

「移動するぞ。掴まっていろ」

 とアルディアに声をかける。

「う、うん!」

 エメラルドドラゴンからの声かけに、返事をし、エメラルドドラゴンの背に両手でしっかりと掴まるアルディア。

 アルディアが掴まったことを確認すると、エメラルドドラゴンはそのまま飛行を開始。グラン・テンペストから距離を取った。

 だが、

「逃がさないわよ!」

 ラファエルはそういうと、グラン・テンペストに幻属性の魔法をかける。ラファエルのかけた魔法は、グラン・テンペストの軌道を操り、距離をとるエメラルドドラゴンを追いかけた。

「!追ってくる」

 勢力を増しながら追随してくるグラン・テンペストを見て、そう言うアルディア。

「魔法で軌道を曲げたか!」

 アルディアの話を聞き、何が起きているかを察したエメラルドドラゴンが、そう言葉を口にする。

 一方で、ラファエルはグラン・テンペストを操りながら

「ふふ、私の『サイコキネシス』は魔法もコントロールできるのよ」

 と得意気に語るのであった。

「『念力サイコキネシス』……。力の正体は魔法だがな」

 エメラルドドラゴンは追いかけてくるグラン・テンペストから逃れながらも、ラファエルにそう言った。

 だが、ラファエルはそんなエメラルドドラゴンの言葉を気に留める様子もなく、

「何とでも言いなさい。私のグラン・テンペストから逃れられるのなら!」

 と言い、サイコキネシスでグラン・テンペストの操作を続け、エメラルドドラゴンを追いかけるのであった。

 エメラルドドラゴンを追いかけながら、勢力を増すグラン・テンペスト。

 グラン・テンペストは周囲を吸い込みながら、一方で雷を放ちながらエメラルドドラゴンを追いかけた。

「!危ない」

 グラン・テンペストの放つ雷の一筋が、前方に飛ぶエメラルドドラゴンに向かって飛んでくる。

 背に乗っていたアルディアは、咄嗟に銀のロッドから光の刀身を形成し、雷を打ち払った。

「くっ……!」

 アルディアの咄嗟の行動で直撃を免れたエメラルドドラゴンとアルディア。

 だが、グラン・テンペストの雷の威力は、テンペストのものよりも明らかに強力であり、それ故、1.2倍のオーバードライブ状態では当たらない程度に軌道を逸らすのが精一杯であった。

 そして、アルディアの形成した光の刃は、雷を打ち払うと同時に耐えられず消滅してしまった。

「手……手がじーんと痺れた……」

 銀のロッドを持っていた手に視線を向け、そう言うアルディア。

「すまん。助かった」

 エメラルドドラゴンは飛行を続けながら、アルディアにそうお礼を言う。

「運良く逸らせたけど……ごめん。次来たら上手くいなかいかも」

「かなりの威力の魔法だからな。自分を責める必要はない」

「ありがとう。でも、どうする? あの魔法」

「そうだな……」

 アルディアの問いかけに、言葉を詰まらせるエメラルドドラゴン。

 そしてそのまま、しばし飛行をしながらグラン・テンペストから逃げていると、

「……一か八か、しっかり掴まっていろ」

 とアルディアに声をかけた。

「わかった」

 アルディアは二つ返事でそう返すと、またしてもエメラルドドラゴンの背にしっかりと掴まった。

 アルディアが掴まったことを確認すると、エメラルドドラゴンは飛行速度を上昇。ラファエルから大きく距離を取った。

 そんなエメラルドドラゴンを引き続き追いかけるグラン・テンペスト。エメラルドドラゴンは変わらずグラン・テンペストから逃れながら飛行をしていた。

 ある程度ラファエルから距離を取るように飛行をすると、今度はそこから大きく旋回。エメラルドドラゴンはラファエルに接近するかのように飛行の軌道を変えた。

 自身に接近してくるエメラルドドラゴンを見て、

「?血迷ったのかしら。捨て身の特攻をしても、グラン・テンペストの餌食になるのは貴方よ?」

 とエメラルドドラゴンにそう言いながら、グラン・テンペストでエメラルドドラゴンを追いかける。だが、エメラルドドラゴンは特に言葉を返すこともなく、真っ直ぐにラファエルに接近をした。

 そのまま、どんどんとラファエルに接近をするエメラルドドラゴン。

「(一体何のつもりかしら?)」

 エメラルドドラゴンの目的が読めないラファエルは、怪訝な表情を浮かべる。

 そのままラファエルに接触するかと思われるほど接近するエメラルドドラゴン。すると、接触すると思われるほど接近したところで、エメラルドドラゴンは急に進行方向を変更。大きく上に飛び上がった。

「何のつもり!?」

 上に飛び上がったエメラルドドラゴンに目を奪われ、上を向くラファエル。

 だが、直ぐに目線を前に戻すことになった。

「しまっ……!」

 目線を戻したラファエルの目前には、自身が放ちエメラルドドラゴンを追いかけていたグラン・テンペストの姿があった。

 先ほどまでエメラルドドラゴンの後ろを追いかけていたため、進行方向は自身に接近する進路のままであった。

 ラファエルは両手を前に出し、自身に近づいてくるグラン・テンペストをサイコキネシスで制止しようと試みる。だが、威力を増したグラン・テンペストはラファエルをもってしても容易に止められるものではなくなっていた。

「くっ……!」

 前に出した両手に魔力を込め、グラン・テンペストの制止に神経を注ぐラファエル。

 だが、そんなラファエルに不意打ちを仕掛けるかのように後方から何かがラフェエルに攻撃を仕掛けた。

 攻撃を受けたラファエルは思わず後方に顔を向ける。

「エメラルドドラゴン……!」

 攻撃の正体の主、自身の身体に噛み付くエメラルドドラゴンを見て、思わず言葉を漏らすラファエル。

 だが、直ぐ後、ラファエルは再び前方へと顔を戻した。そして同時に、僅かとはいえ後方に気を取られてしまった事を大きく後悔することとなった。

 ラファエルが顔を前に戻した時には、既に手遅れであった。サイコキネシスによって進行を抑えられていたグラン・テンペストは、ラファエルがサイコキネシスを止めてしまったことにより進行を再開。グラン・テンペストはそのままラファエルとエメラルドドラゴンを飲み込んだのであった。

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「はぁ……はぁ……」

 ラファエルとエメラルドドラゴンに直撃したことで、魔法が終了したグラン・テンペスト。

 グラン・テンペストが消滅したその場所には、ラファエルが息をあげながら滞空していた。

 グラン・テンペストを受けながらも意識を保ち存在しているラファエル。だが、その身体には雷による火傷、そして風による切り傷が、至る所についていた。

「(迂闊だったわね。まさか、金雷扇と銀風扇が私と別属性であることが、ここに来て悪手になるなんて)」

 滞空しながら思考を巡らせるラファエル。だが、あがった息が、その思考を言葉に出すことをできなくしてしまっていた。

「(やってくれたわね。エメラルドドラゴン!)」

 今度はゆっくりと辺りを見渡すラファエル。だが、ラファエルの視界にはエメラルドドラゴンの姿は映らなかった。

 そのまま、今度はゆっくりと下に顔を向けるラファエル。

「(金雷扇、銀風扇……。取りに行くの、面倒ね……)」

 手元に戻らなかった金雷扇と銀風扇を探すことを考えるラファエル。

 そんな事を考えていると、彼女の顔に影かかかる。

「(……影? 空に?)」

 晴れ渡っている空に突如現れる影に、不思議に思うラファエル。ラファエルは影が現れた方、自身の上部へと顔を上げた。

 すると、

「うわあぁぁぁぁぁ!!!」

 叫びながらラファエルに向かって降りてくるのは、白いオーラを滾らせるアルディアであった。

 この戦いでは見たことがないほどの量の白いオーラを滾らせるアルディアは、光の刃を形成した銀のロッドを両手で持ちながら、ラファエルに向かって落下をしてくる。

 自身に向かって接近してくるアルディアに、目を見開き見つめるラファエル。

「(まずい、回避を……)」

 回避行動を試みようとするラファエルだが、アルディアの存在に気づいた時には時既に遅し。ラファエルが行動を起こすよりも先に、アルディアはラファエルの両肩を足場に、銀のロッドに形成した光の刃をラファエルの額から勢いよく貫いたのであった。

 アルディアの攻撃を受けたラファエルはそのまま硬直。そして硬直して数秒の後、ラファエルはゆっくりと落下をしはじめた。

 ラファエルが力なく落下を始めると、アルディアは咄嗟に光の刃を排除。ラファエルの肩を足場に、そのまま飛び上がった。そして、飛び上がったアルディアに、グラン・テンペストで負傷をしたエメラルドドラゴンが接近。アルディアを自身の背に乗せたのであった。

「エメラルドドラゴン、大丈夫?」

「まぁ、なんとかな……」

 アルディアがエメラルドドラゴンの背に乗ると、両者はそのようなやり取りを交わす。

 一方、ラファエルはというと、落下をしながら視線のみ、アルディアの方へと向ける。

 視線の先のアルディアは、落下する自身の方を、ただじっと見つめている様子であった。

「(人類未到の場所に足を踏み入れ、我らと対等に渡り合い、三神龍も味方につける……。やはり、この娘、)聖女ソフィア……」

 アルディアに視線を向けながら、小さな声で呟くラファエル。だが、その言葉はアルディアの耳に届くことはなかった。

 ラファエルはそのまま、アルディアに貫かれた額を中心に、どんどんと無数の羽根を散らしはじめる。そして、散っていく羽根と共に、ラファエルは地上界から姿を消滅させたのであった……。


「終わった……」

 ラファエルが消滅すると、エメラルドドラゴンの背に座り込み、言葉を漏らすアルディア。

「そうだな」

 エメラルドドラゴンは特に何を言うわけでもなく、一言、アルディアの言葉にそう返す。

「私、四柱帝を倒したんだ」

「そうだな」

「嘘みたい……全然実感ないよ……」

「だが、これで二柱を倒しているのだろう?」

「そう、なんだよね……」

 エメラルドドラゴンの問いかけに、あまりはっきりとしない返事をするアルディア。

 アルディアの返事の後、両者は言葉を交わすこともなく、少しの間、滞空をしていた。

 すると、そんな静寂を打ち破るかのように、アルディアはエメラルドドラゴンに声をかける。

「とりあえず、皆の下に戻れる?」

「承知した」

 アルディアの依頼に、二つ返事で受けるエメラルドドラゴン。

 そしてそのまま、アルディアを乗せて天空宮へと飛んでいったのであった……。

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