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第69話

 エメラルドドラゴンの背に乗って、四柱帝『妖帝ラファエル』と空中での戦いを繰り広げるアルディア。

 共に繰り広げる攻撃は、いずれも大きなアドバンテージとならず、戦闘は長引く一方であった。

 そして、空中という広大な舞台で繰り広げられる一進一退の攻防は、その激しさから近隣の町々でも様子が伺えるほどのものであった……。


 ――――カスティード宮殿・玉座の間

「エクレール様、失礼いたします!」

 突然やってきた兵はそう言うと、エクレールの玉座の前で跪く。

「どうしたのですか?」

 慌ただしく入室した兵に対し、ゆっくりと尋ねるエクレール。

「はっ! 実は少し前より、ここカスティードより南東の方角、ホイップシティの方角の空に、幾つもの雷が目撃されました」

「雷、ですか……」

 兵の報告を受け、少し首を傾げるエクレール。

「本日の空模様を見る限りでは、雷とは縁のなさそうな様子でしたがな」

 同じく兵の報告を聞いていたガトーは、右手で顎を撫でながらそう言う。

「ちなみに、本日はホイップシティより、当国の入出品はありますか?」

「いえ、本日は東の大陸からの往来品は特にはなかったかと……」

 エクレールの問いかけに、兵ははっきりとはしない様子でそう返した。

「わかりました。引き続き、様子を伺ってください」

「畏まりました。失礼いたします」

 エクレールからの指示を受けた兵はそう言うと、立ち上がり一礼し、そのまま玉座の間を後にした。


「……四柱帝の影響ですかな?」

 兵が退室した後、エクレールに尋ねるかのようにそう言うガトー。

「恐らく……。戦っているのでしょうね」

 エクレールは両手の指を組み、組んだ手を口元へと当てた。

「ガトー。恐らくカスティードまで影響が及ぶことはないとは思いますが、警戒をお願いします」

「畏まりました」

 ガトーはそう言うと、ボウアンドスクレープをし、玉座の間を後にしたのであった。

 ガトーが退室した後、誰も居なくなった玉座の間で、エクレールはただ、組んだ手を口元に当てたまま、静かに座っていた。

「(アルディア……)」


 ――――ディナの屋敷・ディアの部屋

「ディア様、失礼いたします」

 屋敷の役人が、ディアの部屋の襖を勢いよく開ける。

「どうした? 騒々しい」

 突然やってきた役人に、ディアはそう尋ねる。

「申し訳ございません。実は先ほどより、空に幾つもの雷が目撃されておりまして……」

「雷?」

 役人の報告を聞き、眉をひそめるディア。

「はい。ここディナの都からでもはっきりと目撃できるほど、近い位置での発生なので、万が一、という事もありご報告に……」

「成る程」

 役人の報告を聞くと、静かに目を閉じるディア。

 そして、少し目を閉じた後、目を開くと、

「最悪の場合に備え、各員警戒態勢に入るよう、指示を出しなさい」

 と、役人に指示した。

「はっ! 畏まりました」

 役人はそう言うと、ディアの部屋を後にしたのであった。

「(恐らくザフィーア殿達……。相手は……四柱帝? 雷は、その余波だろうか)」


 ――――港町ルベン

 町々の空で目撃をされた幾つもの雷。

 その雷の目撃は、ここ港町ルベンでも確認された。

 それどころか、ルベンに至っては、強風の影響も受けており、晴天にもかかわらず、海は強い波も発生していた。

「おいおい、どういう事だこれは!?」

「今日は晴れじゃなかったのか?」

「折角の漁日和だってのに、これじゃあ船出せないじゃねーか」

 荒れる空と海を見て、船乗りと思われる男達は口々にそう言う。

 そんな男達の後ろから、

「どうしたのよ? あんた達」

 という声が聞こえる。

 男達は声のする方へと振り向くと、そこには水色の髪の女性、マリンが立っていた。

「マリンさん……」

「見てくれよマリンさん、この空と海」

「晴れだって聞いていたのに……。これじゃ漁に出られねーよ」

 男達が口々にそう言うと、海と、そして空を見るマリン。

 そして少し空を見た後、

「……戦ってるんじゃない? 四柱帝と」

 と言った。

 その言葉を聞くと、男達は明らかに驚いた様子を見せる。

 そして男達は口々に

「四柱帝と戦ってる!?」

「誰が!? あんな化け物と!?」

「勘弁してくれ……。余計な事するなよ……」

 と言葉を漏らした。

「余計な事……?」

 男のうち一名の言葉を聞き、目を細めるマリン。

 そして「余計な事」という言葉を言った男に接近すると、マリンは思いっきり男の腹部に蹴りを入れた。

「うごっ!」

 マリンに腹部を蹴られた男は、そのまま海へと落ちていった。

「ぶはぁ!」

 海へ落ちた男は、落ちて直ぐに海から顔を出す。

 そして、

「な、何するんだよマリンさん!」

 とマリンに苦言を呈した。

「何をする? 命がけで四柱帝と戦ってる子に余計な事っていうアンタには相応の対応でしょう!」

 マリンは大きく右足を上げ、桃色の着物から白い足を覗かせたまま、男へとそう言った。

 マリンの言葉に、返す言葉を無くした男達は、そのまま黙ってしまった。

 男達が黙って俯くと、マリンは足を下ろし、再び空を見上げたのであった。

「(戦ってるのはザフィーア……いや、アルディアちゃんかしら? お願いだから、無事に帰って来なさいよ……)」


 ――――大空

 エメラルドドラゴンの背に乗り、ラファエルとの戦闘を続けるアルディア。

 戦いは相変わらず一進一退の攻防が続く状態であった。

 ラファエルが幻属性の魔法で霧を発生させ、身を隠し奇襲をかけようとしたら、エメラルドドラゴンは翼を振るい霧を払い、一方、エメラルドドラゴンが雷のブレスを放てば、ラファエルは金雷扇から電撃を放ち相殺をした。

 縦横無尽に飛び交う大空を舞いながらの戦いにおいて、アルディアも目が回りそうになるのを必死に耐えながらも、エメラルドドラゴンの背に掴まりながらも、ラファエルに攻撃を仕掛けた。

 だが、双方いずれの行動も、この戦いに決着をつけるための決定打とはなり得なかった。

「ここまで長引くとは……。正直、想定外だな」

 ラファエルと距離を取った状態で、エメラルドドラゴンはそう呟く。

「私、あんまり役に立ってない?」

 ラファエルとエメラルドドラゴンが主に戦っている状況を見て、アルディアは苦笑いしながらエメラルドドラゴンにそう言う。

「いや、お前のお陰で2対1にはなっている。寧ろ、奴がここまでやれるとは思っていなかった」

 エメラルドドラゴンはアルディアにそう声をかけながら、距離を取った視線の先にいるラファエルを見つめた。

 一方、戦いが想定よりも長引いていると感じているのは、ラファエルも同様であった。

「ここまでとは……」

 ラファエルは眉をひそめながら、ボソリと呟く。

 そして、金雷扇、銀風扇を広げると、広げた扇の要を結合させた。

「テンペスト? でも、扇を広げてる……」

 広げた金雷扇と銀風扇の要を結合させたラファエルの姿を見て、そう呟くアルディア。

「更に上位の魔法でも放つつもりか!?」

 要を結合させた二対の扇を目の前で回転させ、魔力を高めるラファエルを見て、エメラルドドラゴンは警戒を強め、そう言う。

「止めた方が、いいよね?」

 アルディアはそう言うと、レイビットをラファエルに向かって飛ばす。

 だが、高まる魔力の前ではアルディアの放ったレイビットは無力。扇から発生された魔力の風に遊ばれて、そのまま横へと逸れて飛んでいってしまった。

「奴の魔力が強くなり過ぎているな」

 全く関係のない方向へと飛んでいったレイビットを見て、そう呟くエメラルドドラゴン。

 一方、ラファエルはというと、目の前で回していた扇を回転させたまま、今度は自分の上空へと腕を持って行く。

 回転している扇は、既に回転に合わせて雷と風の環を形成しており、その時点で魔法として完成していることが伺える。

「さ、これで終わりにしましょう!」

 ラファエルはそう叫ぶと、扇を回転させながらゆっくりと腕を下ろす。そして扇を回転させたまま、アルディア達に向かって放ったのであった。

「消えなさい! 『グラン・テンペスト』!!」

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