第68話
天空宮・円卓の間にて、四柱帝ラファエルと交戦をしていたアルディア達。
天空宮から飛び降りたところを、エメラルドドラゴンに救助されたアルディアは、そのまま空中にてラファエルとの戦いを再開。
アルディアを始末し損ねた事で本気になっているラファエルだが、エメラルドドラゴンの協力のお陰で一進一退の攻防を繰り広げていた……。
――――空中
アルディアのレイで右頬に傷をつけられたラファエル。
自身を見上げるアルディアを睨み付けながら、ラファエルは無言で翼を広げ、羽ばたきながら桃色の鱗粉を発生させた。
「!テンプテーションか」
自身の方へと舞ってくる桃色の鱗粉を見て、そう言うエメラルドドラゴン。
アルディアはというと、テンプテーションの鱗粉を見ると身体に力を込め、オーバードライブの出力を上げる。
わずかに白いオーラを滾らせるそのオーバードライブは、天空宮にてはじめてテンプテーションを打ち破った時と同じくらいの出力を出していた。
それにより、元々効かないエメラルドドラゴンは勿論、アルディアも今回はテンプテーションを無力化することに成功した。
「ふぅ……」
テンプテーションの魔法を耐え、一息つくアルディア。
「先ほどより魔力が上がってるな。それがテンプテーションを乗り切ったオーバードライブの魔法か?」
背中よりアルディアの魔力が高まっていることを感じ取ったエメラルドドラゴンが、アルディアにそう尋ねる。
「うん。それの、出力を上げたもの、かな」
アルディアは白いオーラを滾らせたまま、そう答える。
「全力ではなさそうだが……あまり長くは持たないのではないか?」
「うん。大体全力の半分くらいだけど……、それでもそんなには長くは続かないかも」
「そうか。ならばそれは奴の幻属性魔法を攻略するときだけにしておけ」
「わかった」
アルディアはそういうと、全力の半分、1.5倍ほど出ているオーバードライブの出力を1.2倍へと引き下げた。
アルディアがオーバードライブの出力を引き下げると、わずかに滾っていた白いオーラが消失。自身の内部でコントロールできるレベルの魔力へと落ち着いた。
「……魔力が戻っている貴女相手に、テンプテーションは無駄だったかしら? ならば」
ラファエルはそう言うと、金雷扇を広げ、扇の面を上に向ける。すると、金雷扇からは雷の玉が発生をした。
ラファエルは発生した雷の玉を、金雷扇の扇面で軽く跳ね上げる。そして、跳ね上げた雷の玉にフゥーッと息を吹きかけた。
「!雷の玉が増えた」
「幻影の魔法か?」
ラファエルが息を吹きかけたことによって、アルディアが言うように数を大きく増やす雷の玉。魔力を込めた吹きかけによって、エメラルドドラゴンの予測通り幻影を作り出したのであった。
増えた雷の玉を周囲に浮かべ、ニヤリを微笑むラファエル。
そして、金雷扇を一振りすると、雷の玉は一斉にアルディア達に向かって飛んでいった。
「来た!」
飛んでくる雷の玉を迎撃すべく、レイビットを発生させるアルディア。
だが、エメララルドドラゴンは
「フン」
と鼻で笑うと、口に雷の魔力を溜める。
そして、溜めた雷の魔力を拡散型の電撃ブレスとして発動。前方に、広域に拡散しながら飛んでいくブレスは、幻の雷の玉含め、全てを迎撃した。
「すご……」
拡散型とはいえ、一発のブレスで全ての雷の玉を消し飛ばした様を見て、思わず言葉を漏らすアルディア。
「フン。こんなつまらん魔法で我らを倒せると思ったのか?」
エメラルドドラゴンは煽るように、ラファエルにそう言う。
そんなエメラルドドラゴンの挑発に、ラファエルは何も言わず、ただ、アルディア達を睨み付けていた。
「天空宮で同じような魔法を受けた時、私、迎撃できなかったのに……」
「あの手の魔法は本物を当てるよりも、全て打ち落とした方が手っ取り早い」
「成る程……」
エメラルドドラゴンのアドバイスを聞き、そう答えると少し考え込むアルディア。
そして、少し考えた後、アルディアはレイビットを解除。銀のロッドの先端に魔力を溜めた後、拡散型の光線魔法をラファエルに向かって放った。
だが、ラファエルはこの魔法を飛行し回避。掠ることすらしなかった。
「ダメかぁ……」
アルディアは残念そうにそう言う。
「まぁ、拡散型攻撃はターゲットが無数にある場合に使うものだからな。単体相手なら狙った方がいい」
アルディアにアドバイスをするエメラルドドラゴン。
エメラルドドラゴンのアドバイスに、
「そっか」
と、アルディアは返事をした。
そんなやりとりをしているアルディアに、ラファエルは今度は畳んだ銀風扇を突きつける。
ラファエルが銀風扇を突きつけると、渦巻く突風が前方へと発射。突風はアルディアに向かって飛んでいった。
「うわあぁぁぁぁ!」
突風を受けたアルディアは、両腕を顔の前に組み耐えようと試みる。だが、四柱帝の放つ突風の直撃に耐えられるものではなかった。
突風を受けたアルディアはエメラルドドラゴンの背中から吹き飛び、空中へと投げ出された。
「しまっ……」
吹き飛び、空中へと投げ出されたアルディアは、そのまま何もできないままゆっくりと落下をはじめる。
だが、そんなアルディアの下へエメラルドドラゴンが飛来。落下したアルディアの身体をその背中で受け止めた。
エメラルドドラゴンがアルディアを救うと、アルディアの身体は大きくワンバウンドし、跳ね上がる。そしてそのままもう一度、エメラルドドラゴンの背中へと降り立った。
「助かった~……」
エメラルドドラゴンの背中に着地すると、ホッと一息をつくアルディア。
一方、ラファエルはというと、
「助かったのね。残念」
と、肩をすくめそう言った。
「ありがとう、エメラルドドラゴン」
「空中で利があるのは奴だ。我の不注意でもあるが……気をつけろ」
自身にお礼を言うアルディアに、エメラルドドラゴンは改めて注意を促した。
「……そろそろ、決着をつけましょうか」
エメラルドドラゴンに救助されたアルディアを見たラファエルは、しびれを切らしそう言うと、金雷扇も畳む。
そして、畳んだ金雷扇の要を、先に畳んでいた銀風扇の要を結合させた。
「!あれは」
ラファエルの行動を見て、声を上げるアルディア。
「どうした? アレが何かあるのか?」
突然声を上げたアルディアに尋ねるエメラルドドラゴン。
「『テンペスト』。ラファエルの大技だよ」
「成る程」
アルディアからの説明を聞いたエメラルドドラゴンは、全てを察し、応戦すべく口に魔力を溜め始める。
アルディアもまた、銀のロッドの先端に魔力を溜め、準備を始めた。
一方、ラファエルはというと、要を結合させた金雷扇と銀風扇に魔力を込めると、ブーメランのようにアルディア達に向かって投げつけた。
ラファエルが投げた金雷扇と銀風扇は、回転しながら雷を纏った竜巻を発生。発動したテンペストは、どんどんと勢いを増しながらアルディア達に接近。天空宮と異なり開けた場所ということもあってか、アルディア達に飛んでくるテンペストは天空宮の時よりも巨大なものであった。
「来た!」
襲いかかるテンペストを目に、そう言うアルディア。
「迎え撃つぞ!」
エメラルドドラゴンはそう言うと、口に溜めた雷の魔力を、ブレスとして発動させた。
「うん!」
エメラルドドラゴンの雷のブレスに合わせて、アルディアも銀のロッドに溜めた魔力を発動。エメラルドドラゴンとアルディアの魔法による二つの光線状の魔法は、ラファエルのテンペストへと直撃。テンペストの進行を押さえ込んだ。
だが、それでも尚、打ち消すまでには至らず、均衡状態が続く。それどころか、回転とそれによる周りの空気の取り込みにより、テンペストは更に勢いを増しはじめ、徐々にアルディア達の魔法を押し始めた。
「むぅ……」
想像以上の威力に、僅かながら焦りを見せるエメラルドドラゴン。
「くっ……」
アルディアもまた、苦しそうな表情を浮かべた。
一方、ラファエルはというと、徐々に押し始めている状況を見て、口元を緩ませた。
「(このままじゃ……)」
徐々に押される状況に、焦りを見せるアルディア。
「(……使うしか、ないよね)」
アルディアは心の中で何かを決断する。そしてその直後、銀のロッドを持つ手と、全身に力を込めた。
アルディアが力を込めると、彼女が発動させていたオーバードライブの出力が上昇。今まで発生していなかった白いオーラが、僅かながら発生をした。
そして、それに併せてアルディアの放つ光魔法の光線の規模と威力が上昇。肥大化し、威力を増したアルディアの魔法は、徐々に押されていた状況を逆転。一気にテンペストの魔法を相殺させることまでに至ったのであった。
「ハァ……ハァ……やった……」
アルディアはオーバードライブの出力を1.2倍に戻し、息をあげながらエメラルドドラゴンの背中で膝をつく。
「流石に、少々肝を冷やしたな」
エメラルドドラゴンもまた、一息つきながらそう言った。
そしてラファエルはというと、
「本当、忌々しい娘……」
手元に戻ってきた金雷扇と銀風扇を手に取ると、アルディアを睨み付け、そう呟いたのであった。




