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第67話

 天空宮・円卓の間にて、四柱帝ラファエルと交戦をしていたアルディア達。

 ラファエルのテンプテーションにかかってしまったアルディアは、ラファエルに命じられるまま、天空宮から飛び降りてしまう。

 しかしながら、表でラファエル配下のクリーチャーと交戦をしていたエメラルドドラゴンがアルディアを救助。アルディアのテンプテーションを解除し、天空宮へと連れ戻そうとした。

 だが、天空宮よりアルディアの様子を見に来たラファエルに遭遇。そのまま、空中での戦いがはじまったのであった……。


 ――――大空

「地を這うことしかできない蛆虫が……。私の許可なくこの空を飛ぶなんて、万死に値するわよ!」

 ラファエルはアルディアを睨み付け、そう言う。

 アルディアは、そんなラファエルを無言で、ただ見つめ返していた。

「意識があるまま、肉を裂き、骨を砕き、臓物を引きずりだし……。貴女の罪を、その身に刻み込んであげるわ」

「罪だと? 馬鹿馬鹿しい」

 ラファエルの言葉に、呆れた様子でそう返したのは、エメラルドドラゴンであった。

 エメラルドドラゴンは続けて、

「そもそもこの空は誰のものでもない。空を司る我のものでも、ましてや冥界の存在である貴様のものでも、な」

 とラファエルにそう言う。

「エメラルドドラゴン。悪いけど、その娘を差し出して頂戴? その娘の肉で作った"はんばぁぐ"を待っている子が天空宮に居るの」

 ラファエルは少し首を傾け、先ほどとは異なり、やや穏やかな口調でそう言う。

「……娘を挽き肉にして、娘の仲間に食わせるつもりか。流石、悪趣味だな、四柱帝」

 ラファエルの言葉から、全てを察したエメラルドドラゴンは、鼻で笑いながらラファエルにそう返した。

「エメラルドドラゴン……、どこまでもこの私の邪魔をしようというの?」

 ラファエルは先ほどまでよりも低い声で、エメラルドドラゴンにそう尋ねる。

 声色より、ラファエルの言葉は明らかに怒りを込めているものであることが伺える。

 だが、そんなラファエル相手に、エメラルドドラゴンは一歩も引くことなく、言葉を返した。

「邪魔だと? この地上界において邪魔なのは貴様達だろう」

「……フレイアの下僕の分際で、口の利き方がなってないわね」

「それはお互い様だろう、四柱帝クリーチャー

「"あのお方"をフレイアと同列に語るな、無礼者!!」

 ラファエルは声を荒げると、広げた金雷扇を天に掲げる。

 ラファエルが金雷扇を天に掲げると、上空より雷の雨がアルディア達に向かって降り注いだ。

 自身の上空から降り注ぐ雷の雨を見て、防御態勢を取ろうとするアルディア。

 だが、エメラルドドラゴンはそんなアルディアに、

「我にしっかり掴まってろ!」

 と言う。

 その言葉を聞いたアルディアは、取ろうとしていた防御態勢を解き、エメラルドドラゴンの背中にしがみつき、両手にしっかりと力を入れた。

 アルディアが掴まった事を認識したエメラルドドラゴンは、飛行速度を上昇。雷の雨の間を縦横無尽に飛び回り、ラファエルの雷を回避したのであった。

 全ての雷撃に、一発も被弾することなく回避したエメラルドドラゴンを見て、ラファエルは、

「エメラルドドラゴン……、どこまでも不愉快な奴ね!」

 と、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべそう言う。

 ラファエルのその言葉に対し、

「フン、貴様にとって不愉快ならそれは好都合だ」

 と、エメラルドドラゴンは挑発するかのようにそう返した。

 一方、アルディアは、

「うぅ……」

 と、エメラルドドラゴンの背中の上で、苦しそうなうめき声を上げる。

「どうした!?」

 エメラルドドラゴンは少し早口で、背中に乗るアルディアに尋ねる。

「耳がキーンとする……気持ち悪い……」

 アルディアは口元に手を押さえながら、そう答えた。

 地上の人族であるアルディアにとって空は本来飛ぶような場所ではなく、しかもそれを高速で縦横無尽に移動したのである。彼女の半規管には相当な負担がかかっているわけであり、アルディアの反応は当然のものであった。

 だが、エメラルドドラゴンはそんなアルディアに、

「……悪いが、それは我慢してくれ」

 とだけ返したのであった。

「(これは、好機かしら)」

 そんなアルディアの様子を見たラファエルは、左手の銀風扇を閉じ、ブーメランのように回転をさせながらアルディア目がけ投げつける。

 ラファエルの投げた銀風扇は、回転しながら風の刃を発生。風の刃は円を描き、円月輪のような形状となり、どんどんとアルディアに近づいてきた。

「!!」

 自身に近づいてくる銀風扇に気づいたアルディアは、とっさに銀のロッドを構え、光の刃を成形する。そして、その刃で銀風扇を弾き飛ばし、ラファエルの攻撃から身を守った。

 アルディアの攻撃によって風の刃を失った銀風扇は、回転しながらラファエルの下へと戻っていく。その速度は、先のアルディアに襲いかかった速度と比べると、明らかに緩やかなものであった。

 一方、銀風扇の戻りが遅いと見たエメラルドドラゴンは、今度はこれを好機と捉えたのか、アルディアに、

「飛ぶぞ、掴まれ」

 と言い、ラファエル目がけ飛行。ラファエルに接近をすると、口を開き、牙に雷属性の魔法を纏わせ噛みつき攻撃を仕掛けようとした。

 だが、ラファエルはこのエメラルドドラゴンの攻撃を上へ飛行することで回避。

 攻撃を回避されたエメラルドドラゴンは、そのまま飛行の後、旋回。上に飛んだラファエルの方へと顔を向けた。

 少しの間、そのまま睨み合う両者。だが、直ぐにラファエルが次の行動を起こした。

「では、これならどうかしら」

 ラファエルはそう言うと、戻ってきた銀風扇を開き、魔力を込めて大きく一振りする。

 ラファエルが振るった銀風扇からは、強力な大風が発生。大風はアルディア達に向かって襲いかかった。

「凄い風……、どうしよう?」

 襲いかかる大風を目にしたアルディアが、エメラルドドラゴンに尋ねる。

 だが、エメラルドドラゴンはアルディアの問いかけに何も答えることなく、両翼を大きく広げる。そして、襲いかかる大風に向かって、広げた両翼を大きく一振り、羽ばたかせた。

 エメラルドドラゴンが両翼を羽ばたかせると、こちらもまた、強力な大風が発生。

 両者が発生させた魔法の大風は、そのまま激突。双方の風はぶつかった後、風は八方へと散っていったのであった。

「(今だ!)」

 両者の風が相殺されたのを見たアルディアは、これを好機と捉える。咄嗟に手に持つ銀のロッドから、ラファエルに向かってレイの魔法を放った。

 アルディアの放ったレイの魔法による光線は、そのままラファエルに向かって飛んでいき、ラファエルの右頬を掠ったのであった。

「掠っただけか……」

 そう呟き、落ち込むアルディア。

「なに、咄嗟の行動で奴に傷をつけられただけでも十分だ」

 エメラルドドラゴンは落ち込むアルディアに、そう言葉をかけた。

 一方、ラファエルはというと、レイの魔法で軽く焦げた自身の右頬を、手の甲でゆっくりと撫でる。そして、

「よくも私の顔に傷を……。この罪は重いわよ!」

 と、声を荒げ、アルディアを睨み付けた。

「ほぉ、精神を弄ぶ妖帝様の精神には、中々のダメージが入ったみたいだな」

 エメラルドドラゴンは、意地悪そうにニヤリと口元を緩ませ、嫌味を投げつける。

 そして今度はアルディアに、

「良いぞ、この調子でどんどん行くぞ!」

 と声をかけた。

「うん!」

 エメラルドドラゴンの言葉に、アルディアは大きく、二つ返事でそう返したのであった。

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