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第65話

 天空宮・円卓の間にて、四柱帝ラファエルと交戦するアルディア達。

 ラファエルの魔道具による火力、そしてラファエル自身の幻属性による妨害で、劣勢に立たされる一同。

 だが一方で、ラファエル自身も決定打に欠ける事に徐々に苛立ちを覚え始めた。

 そして、アルディア達にとどめを刺すため、金雷扇と銀風扇を結合させ、雷撃を纏う竜巻を作り出し、アルディア達に攻撃を仕掛けたのであった……。


 ――――天空宮・円卓の間

 ラファエルの放った雷撃を纏う竜巻を、その身で受けたアルディア達。

 竜巻が晴れると、そこには帯電し、倒れているアルディア達の姿があった。

「ふふ、いかがかしら? 私の『テンペスト』は」

 自身の手元に戻ってくる金雷扇と銀風扇を受け止りながら、倒れているアルディア達にそう問いかけるラファエル。

 だが、竜巻による切り傷で血を流し倒れているアルディア達からは、何の反応もなかった。

「流石に死んだかしら?」

 反応のないアルディア達を見て、軽く首をかしげながらそう言うラファエル。

「でも、万が一って事もあるし……。念のため、首でも切り裂いておこうかしら」

 ラファエルはそう言うと、閉じた銀風扇を構えながらアルディアの方にゆっくりと歩みを寄せた。

 すると、

「!!!!」

 突然、背後から衝撃を受けるラファエル。

 突然の攻撃に、ラファエルはそのまま前方へ吹き飛び、床へと倒れ込んだ。

「今のは……?」

 ラファエルは真顔で立ち上がり、先ほどまで自身が立っていた方向を振り向く。

 ラファエルの視線の先には、肩で息をしながらも身体に炎を纏わせ、自身を睨み付けるルービィの姿があった。

「今のは……貴女の体当たり?」

 ラファエルはルービィに尋ねながら、ゆっくりとルービィの方向へと歩みを寄せる。

 だが、ルービィはラファエルの問いかけに答えることはなく、変わらず肩で息をしながら立っていた。

 そんなルービィの様子に、ラファエルは

「私が聞いているの! 答えなさい!!」

 と声を荒げ、閉じた金雷扇でルービィの頬を叩きつけた。その声は、今までの余裕を見せていた時とは大きく異なるものであった。

「うあっ!」

 雷撃を纏った金雷扇の打撃に、口から青い血を吐きながら大きく吹き飛ぶ。

 ラファエルは吹き飛び、倒れるルービィの下へ歩み寄り、幻属性の魔法でルービィの身体を持ち上げる。

「地上の存在の分際で、妖帝であるこの私の膝を地につかせるなんて……。万死に値するわよ!!」

 ラファエルはそう言うと、魔法で身体を持ち上げたルービィの頬を、またしても金雷扇で殴りつける。

「かはっ!」

 金雷扇の打撃を受け、またしても血を吐くルービィ。だが、ラファエルの魔法で身体を固定されているため、その場に浮いたままであった。

「それが貴様の本性か」

 ルービィを殴りつけるラファエルの背後から、その様子を見たザフィーアがふらりと立ち上がり、そう言う。

「本性? 当然の対応だと思うけど?」

 ラファエルはゆっくりと振り向き、ザフィーアにそう言う。

 そう言うラファエルの視線は、ルービィに向けていたものと変わらず、冷たいものであった。

「動けない相手を嬲るのが当然って……。四柱帝の理屈は理解できないね」

 ラファエルの反応に、今度はエスメラルダが、ゆっくりと立ち上がり、そう言う。

「所詮クリーチャー。我々が理解できる存在ではないのだろう」

 エスメラルダの言葉にザフィーアはそう言うと、ふらふらの身体のまま、刀を構えた。

 ラファエルはそんなザフィーアの姿を見ると、

「はぁ~……」

 と、わざとらしく、大きなため息をつく。

 そして、右手に持っている金雷扇を広げると、そのまま高く掲げた。

 開かれた金雷扇からは、無数の雷が発生。その雷は雨のようにザフィーア達に降り注いだ。

「ぐおおおおお!」

「ぐあああああ!」

 逃げ場のない無数の雷の雨、そして逃げ回るだけの体力も回復していない状態の両者に、容赦なく襲いかかる雷の雨は、ザフィーアとエスメラルダに大量の雷を浴びせる。

 雷の雨が降り止むと、両者は煙を上げながら、またしてもその場に倒れ込んだ。

「全く、面倒ね……」

 金雷扇を閉じ、ため息をつきながらそう言うラファエル。そして再び、ルービィの方を振り向く。

 先ほど、ザフィーア達に攻撃を仕掛けた際にルービィを持ち上げていた魔法を中断させてしまい、ルービィの身体は地面に倒れていた。

 そんなルービィの身体を、再び幻属性の魔法で持ち上げるラファエル。そしてそのまま、少しの間、気を失っているルービィの様子を見ていた。

 ルービィの姿を見ながら少し考えると、

「……もう、切断して終わらせましょうか」

 そう言うと、ラファエルは左手に持つ閉じた銀風扇を構えた。

「斬るなら首かしら? 胴の方が血の他に臓物が出る分、"あのお方"の贄にはできそうだけど……、後始末が面倒だから天空宮ここではやりたくないわね」

 銀風扇を構えながら、ルービィのどの部分を切断しようか考えるラファエル。

 すると、

「ま……待って……」

 今度は別の声が、ラファエルの背後から聞こえてきた。

 ザフィーアやエスメラルダとは異なる、背後から聞こえてくる声。またしても声に妨害されたラファエルは、

「今度は誰!?」

 と、最早苛立ちを隠す様子を見せる事もなく、そう言い、背後を振り返った。

 ラファエルが振り返ると、今度はアルディアが、蹌踉めきながらもその場に立っていた。

「今度は貴女……」

 ラファエルはアルディアに冷たい視線を向け、そう言う。

 アルディアは銀のロッドの先端からレイビットを発生させ、応戦態勢に入る。

「あ……アル……」

 アルディアがレイビットを発生させた時と同じ頃、意識を取り戻したルービィ。

 ルービィが意識を取り戻した事に、ラファエルは更に苛立ちを覚えた。

「全く、本当に腹立たしい……」

 最早苛立ちを言葉からも隠すつもりもないラファエル。両手の金雷扇と銀風扇を広げて構えると、アルディアに向かい合った。

 金雷扇と銀風扇を構えるラファエルに、アルディアも銀のロッドを構えた。

 魔道具を構えて向かい合い、睨み合う両者。

 しばしの間、アルディアを見つめていると、ラファエルはふと、アルディアのある様子に気がついた。

「(最初の頃と比べると魔力を感じない。この娘、もしかして今、失敗魔法オーバードライブを発動させていない? いえ、発動できない?)」

「……」

 動きを見せる様子もなく、自身を見つめるラファエルに、アルディアも特に言葉を出すこともなく、ラファエルを見つめるアルディア。

 だが、そんなアルディアの様子は、生まれたての子鹿のように立っているのがやっとで、ラファエルの思惑通りとても全力で戦える様子ではなかった。

 そんなアルディアの様子を見て、さっきまでの苛立っていた表情から一変、口元を緩ませるラファエル。

「(オーバードライブが発動できないなら好都合、ね)」

 ラファエルはゆっくりと飛び上がると、背中の両翼を大きく広げた。そして、大きく広げた翼をはばたかせると、桃色の鱗粉を発生。テンプテーションを発動させた。

 テンプテーションの発動に身構えるアルディア。

 だが、ラファエルはテンプテーションの鱗粉を出すと、今度は左手の銀風扇を広げ、扇を振るい風を発生。鱗粉をまとめ上げた。

「一体何を……?」

 ラファエルの行動に、更に警戒を強めるアルディア。

 襲い来る魔法に対抗するためのオーバードライブを発動させようと、全身に力を溜めるものの、魔力が回復しておらず、オーバードライブの発動には未だ至らなかった。

 オーバードライブが発動できず、顔に焦りを見せるアルディア。一方、ラファエルは、そんなアルディアの様子を見て、更に好都合と表情を緩ませる。

 そして、まとめ上げたテンプテーションの鱗粉を、アルディアにぶつけた。

 襲い来るテンプテーションの鱗粉に、レイビットで対抗を試みるアルディア。だが、アルディア自身も弱っていたこともあり、アルディアのレイビットはあっさりと弾かれる。そしてそのまま、テンプテーションの塊は、アルディアに襲いかかった。

 アルディアに襲いかかったテンプテーションは、そのまま鱗粉を飛び散らせ、アルディアの姿を隠してしまう。

「アル……?」

 ラファエルの魔法から解放され、床に倒れ込むルービィは、姿の見えないアルディアの名前を呼ぶ。だが、アルディアからは特に反応はなかった。

 そしてそのまま、鱗粉が晴れるまでの間、ラファエルとルービィはアルディアの様子を見ていた。

 時間が経過し、鱗粉が晴れてくると、アルディアの姿が少しずつ確認できるようになる。

 うっすらと見えるアルディアは、猫背気味ではあるが、立っている様子は確認できた。

「アル……」

 不穏な行動がなさそうな様子のアルディアに、少し安心をしたような表情を浮かべそう呟くルービィ。

 だが、完全に鱗粉が晴れると、その場にいたのは、妖艶な紫色の瞳から光を失い、虚ろな表情を浮かべるアルディアの姿であった。

「はは、ははははは!」

 そんな様子のアルディアを見ながら高笑いをあげるラファエル。

 テンプテーションにかかったアルディアの様子を見て一通り笑い終えると、ラファエルはにやけた表情を浮かべたまま、ゆっくりと歩み寄る。

 一方、アルディアに歩み寄るラファエルを阻止しようと、倒れたまま手を伸ばすルービィ。だが、届かない手を伸ばすだけのルービィに、ラファエルは気にも留めないどころか、存在にすら気づいていなかった。

 そして、アルディアのもとへとたどり着くラファエル。

 閉じた金雷扇でアルディアの顎を軽く持ち上げ、顔を自信の方へと向ける。アルディアの表情はというと、変わらず瞳から光を失い、虚ろな表情を浮かべ、何の反応もない状態であった。

「完全に効いているわね」

 そんなアルディアの様子を見て、そう言うラファエル。

 そして、金雷扇でアルディアの顎を持ち上げたまま、暫く考えを巡らせた。

「(この娘に同士討ちをさせるのが、セオリーだし面白そうではあるけれど……。万が一、目覚められたら面倒ね。ここは確実に、先ずはこの娘を仕留める事が優先かしら? ならば……)汝の主、妖帝ラファエルが命じる! 天空宮ここから飛び降りなさい!」

 テンプテーションにかかったアルディアの顎から金雷扇を離すと、今度は金雷扇でアルディアの鼻先を指し、そう命じるラファエル。

 その命令を聞いたルービィは、床に倒れたままゆっくりと口を開け、

「アル……だめ……」

 と、アルディアに声をかける。

 だが、ルービィの呼びかけにアルディアは一切反応をすることなく、ただラファエルの命令通り、円卓の間の空洞部分へとゆっくりと歩みを進めた。

 そんな折、倒れていたエスメラルダとザフィーアも目を覚ます。そして、ゆっくりと身体を起こすと、ふらふらと歩いているアルディアの様子が目に入った。

「アル? 何やってんの?」

 目覚めたばかりで状況が読めていないエスメラルダが、アルディアに声をかける。

 だが、アルディアは変わらず反応をすることはなく、ゆっくりと、ラファエルの命令のまま、歩みを進めていた。

「エスメ……。アル……テンプテーションにかかっちゃった……」

 答えないアルディアに代わり、ルービィがエスメラルダにそう言う。

「え゛!!」

 ルービィの言葉に、エスメラルダは思わず声をあげた。

 そして、そのやりとりを横で聞いていたザフィーアも、

「では、あれはテンプテーションで操られての行動、という事か!」

 と、状況分析をした。

「じゃあ、正気に戻さないと!」

 エスメラルダはそう言うと、身体を起こそうと行動を起こす。

 だが、エスメラルダが起き上がろうとすると、複数の椅子が、エスメラルダとザフィーアのところへと飛んでくる。

 突如飛んできた椅子に激突し、エスメラルダとザフィーアは再び椅子と共に倒れ込んだ。

「今、いいところなの。邪魔しないで頂戴」

 エスメラルダとザフィーアに向かって椅子を飛ばした張本人、ラファエルが、先ほどまでの高笑いしていた表情とうって変わって、冷たい目線をエスメラルダ達に向けて、淡々とそう言った。

 そのようなやりとりが行われていた横で、アルディアは歩みを進め続けていた。そして、円卓の間の空洞部分、外に面している場所へと移動すると、アルディアはそのまま、何の反応もすることなく虚無のまま、そのまま頭から飛び降りたのであった。

 飛び降りたアルディアを見て、口をゆっくり開き、絶望の表情を浮かべるエスメラルダ、ルービィ、ザフィーア。

 一方、ラファエルはというと、今までにないくらい、声をあげて高らかに笑うのであった。

「アル……、アルーーーーー!!!!」

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