第64話
天空宮・円卓の間にて、四柱帝ラファエルと交戦をはじめたアルディア達。
ラファエルの魔道具『金雷扇』『銀風扇』による雷属性、風属性魔法、そしてラファエル自身のテンプテーションの魔法と、身体に、そして精神による攻撃に、アルディア達は苦戦しつつも辛うじてクリアしていた。
だが、ラファエルは戦闘開始以降、余裕の表情を崩してはいなかった。
はじまったばかりのラファエルとの戦闘。今後どのような展開を迎えるのだろうか……。
――――天空宮・円卓の間
「じゃあ、今度はこれ」
ラファエルはそう言うと、今度は半透明の紫色の蝶を複数体発生をさせる。
ラファエルの作り出した紫色の蝶は、ひらひらと舞いながらアルディア達の方へ飛んできた。
「この蝶は?」
自身に飛んでくる蝶を見ながらそう言うアルディア。
見慣れない魔法に、ルービィもアルディアと同様の反応をしていた。
だが、ラファエルと同じ幻属性の持ち主であるエスメラルダは、飛んできた蝶を見て焦りを見せる。
「この蝶……『パープルバタフライ』!?」
「パープルバタフライ?」
エスメラルダの言葉『パープルバタフライ』というワードに反応をしたのは、ザフィーアであった。
「幻属性の、上位の術士が使う魔法の一種だよ。火力自体があるわけじゃないけど……確かこの魔法、神経毒魔法だった筈……」
「神経毒魔法だと!?」
自身の出した言葉、パープルバタフライというワードに反応したザフィーアに、パープルバタフライの魔法について持ちうる知識で解説をするエスメラルダ。
その解説の中で出てきた神経毒という言葉に、更に反応をするザフィーア。
だが、ザフィーアが反応をした時には既に手遅れであった。ラファエルの放ったパープルバタフライはアルディア達に襲いかかり、神経を侵しはじめた。オーバードライブ状態のアルディアを除いて……。
「しまっ……」
「くっ……」
「身体が……痺れ……」
パープルバタフライの神経毒により、身体麻痺を起こしその場で崩れるエスメラルダ、ザフィーア、ルービィ。
「皆、大丈夫!?」
麻痺を起こしその場に崩れるエスメラルダ達に、声をかけるアルディア。
オーバードライブ状態であった彼女は、一時的とはいえ高い魔力を有している状態であったため、先のテンプテーション同様、魔法の影響を受けなかったのであった。
「すまない……アル。少し、動けそうにない……」
崩れ落ち、地面に倒れるザフィーアが、アルディアにそう言う。
「ごめんアル……。少し休んでいれば、解毒できるはずだから……」
同じく地面に倒れるエスメラルダが、アルディアにそう言った。
そして、ルービィはというと、言葉を発することはなく、ただ、身体の痺れにうめき声をあげながら、地面に倒れ込んでいた。
「皆……」
地面に倒れ込む一同を見て、心配そうな表情を浮かべながら呟くアルディア。
だが、そんな彼女たちに、ラファエルは容赦なく次の攻撃を仕掛けようとしていた。右手に持つ金雷扇を閉じ、高く掲げるラファエル。掲げた金雷扇にどんどんと、雷の魔力が溜まっていく。
高まる魔力に気づいたアルディアは、急いでラファエルの方を振り向く。
アルディアが振り向くと、ラファエルは既に金雷扇に魔力を溜め終えており、掲げている金雷扇には雷が帯電していた。
ラファエルは口元をニヤリと緩ませると、何も言わず掲げた金雷扇を振り下ろし、倒れているエスメラルダ達に向かって光線状の電撃を放つ。
ラファエルが電撃の光線を放つと、アルディアはそれに瞬時に反応し、光線の軌道上へ移動。手に持っている銀のロッドに魔力を纏わせると、それをラファエルの放った電撃の光線に向かって突き出し、リヒトゾイレを発動させた。
アルディアの放ったリヒトゾイレは、ラファエルの電撃の光線に衝突。そのままラファエルの電撃光線を打ち破り、リヒトゾイレの光線はラファエルの方へと飛んでいった。
「おっと」
リヒトゾイレが自身の方へ飛んできたラファエルは、そう言うと、ひらりとリヒトゾイレを躱す。
そして、リヒトゾイレを躱した後、アルディアの方を見ると
「いい反応。流石ね」
と、アルディアに言葉をかけた。
だが、アルディアはそんなラファエルの言葉に、何かを返すこともなく、ただじっと見つめていた。
すると、ラファエルはクスリと笑うと
「ふふ、じゃあ次はこれでいかが?」
そう言うと、ラファエルの身体から魔力の煙を出す。
ラファエルの身体から出た魔力の煙は、形を成形しはじめ、ラファエルと同じ姿を複数体、作り出した。
「分身?」
前方のラファエルを左右見渡し、そう言うアルディア。
そして、ラファエルの行動に備え、アルディアは銀のロッドからレイビットを作り出した。
一方、ラファエルはというと、アルディアがレイビットを作り出したタイミングと同じくらいのタイミングで、分身と共に室内を飛び回る。そして、一通り飛び回ると、上空からアルディアを囲うように移動を停止。その場で分身共々左手の銀風扇を、扇面を上に向けて差し出す。
ラファエルが差し出した銀風扇からは、風車のような卍手裏剣状の風の魔法が発生。勢いよく回る風の手裏剣を銀風扇の扇面にゆっくりと乗せると、ラファエルとその分身達は、銀風扇を振るいアルディアに向かって風の手裏剣を飛ばした。
自身の方に飛んでくる風の手裏剣を、レイビットを操り迎撃をするアルディア。だが、一斉に四方八方から襲いかかる攻撃に、完全には迎撃ができず、迎撃できなかった分の手裏剣がアルディアに襲いかかった。そして、その襲いかかってきた攻撃の中には本物のラファエルが作り出した攻撃も混じっており、その攻撃がアルディアの左肩に襲いかかった。
「ッ!!」
声にならない声を上げ、左肩を押さえるアルディア。
オーバードライブで強化しているため、致命的なダメージにはならなかったものの、傷は負っており、傷口からは赤い血が滴っていた。
「ア……アル……」
負傷したアルディアを心配し、アルディアの名前を呼ぶエスメラルダ。だが、先のパープルバタフライによる身体麻痺の影響が残っており、声も、身体も、未だに満足に動けなかった。
一方、アルディアに傷を負わせたラファエルも、左肩を押さえるアルディアを見て表情を変えた。
戦闘開始後からラファエルはずっと笑みを浮かべていたが、表情からその笑みを失う。そして、目を細め、アルディアを見つめていた。
「(この攻撃も軽い負傷のみ。そもそも、失敗魔法をここまでコントロールし、使いこなしている……。まさかこの娘、本当に聖女……?)少し、遊びが過ぎたみたいね」
ラファエルはそう言うと、金雷扇と銀風扇を共に閉じる。
金雷扇と銀風扇を閉じると、両扇の要の部分を結合させるラファエル。
そして、両扇の要を結合させた扇の結合部分を右手で持つと、
「これで、お終いにしてあげる」
ラファエルはそう言うと、右手に魔力を込め始める。
ラファエルが魔力を込める行為から、経験上、大技が来ると踏んだアルディア達は、ラファエルの魔法を止められないかと試みる。だが、エスメラルダ達は未だにパープルバタフライの麻痺から回復しきっておらず、アルディアも攻撃を受けた負傷で、ラファエルの魔法を阻止できるだけの行動が起こせなかった。
ラファエルの魔法を阻止できないか。そんな思いとは裏腹に、阻止ができない現状。そして無残にもラファエルの魔力はどんどんと溜まっていった。
そして、ラファエルは魔力を溜めると、結合させた金雷扇と銀風扇を、ブーメランのようにアルディア達に向かって投げつけた。
ラファエルが投げた金雷扇と銀風扇は、回転をしながらアルディア達に襲いかかる。襲いかかる金雷扇と銀風扇は、回転と合わせて雷を纏った竜巻を発生。竜巻はどんどんと勢いと雷撃を増し、規模も拡大させる。室内という閉鎖された空間であることもあり、アルディア達に襲いかかる巨大化した雷撃の竜巻を避ける術を失う。
「くっ……」
自身に襲いかかる雷撃の竜巻を見て、顔をしかめるアルディア。
だが、避けることができないその竜巻を、アルディア達はただ、その身で受ける事しかできなかったのであった……。




