第63話
「じゃあ、はじめましょうか」
飛び上がり、両手の金銀の鉄扇を構えるラファエル。
「ふふ、心身共に、壊してあげる」
飛び上がった高所からアルディア達を見下し、ラファエルは怪しく微笑んだ。
そんなラファエルの様子を見たアルディア達は、戦闘態勢のままラフェエルの出方を伺っていた。
そんな拮抗状態を打ち破るかのように、先に行動を起こしたのはラファエルであった。
右手にもった金色の鉄扇を振り上げて、アルディア達に向かって扇を振るう。
扇から振るった勢いに乗せて、電撃が拡散状態で放たれる。放たれた電撃はアルディア達に襲いかかり、一同はラファエルの電撃魔法をその身で受けた。
「あああああ!!!」
ラファエルの電撃を受けたアルディア達は、身体から煙をあげながらその場に膝をつく。
そんなアルディア達の様子を見て、ラファエルは
「ふふ、じゃあこっちはどう?」
と、クスリと微笑みながら、今度は左手に持っている銀色の鉄扇を、アルディア達に向かって振るった。
ラファエルの振るった銀色の鉄扇からは、突風が発生。突風はアルディア達に襲いかかり、一同の身体を大きく吹き飛ばし、壁面へと身体を激突させた。
「いたたた……」
壁面に激突した後、倒れ込むアルディア達。だが、背中をさすりながらも立ち上がると、再び戦闘態勢へと入った。
立ち上がるアルディア達を見て、ラファエルは
「ふふ、まぁ、流石にこれで壊れはしないわよね」
と、微笑みながらそう言う。
一方、そんなラファエルを見ながらザフィーアは、
「流石というか……電撃もケライノーの比ではないな」
と言葉を漏らした。
「やっぱ、創ったクリーチャーよりも強力なのは、ガブリエルと一緒なんだね」
ザフィーアの言葉に続き、ルービィもそう言う。
「しかし、雷属性の魔法に風属性の魔法……。どうやって2属性も使ってるんだろ?」
エスメラルダが、ラファエルの攻撃に疑問を投げかける。
「あの鉄扇、恐らく魔道具だろうが……。銃のような、魔力を必要としない魔道具とは思えないな」
エスメラルダの疑問に、ザフィーアが冷静に分析をする。
「ふふ、この扇が気になる?」
エスメラルダとザフィーアの会話を聞いていたラファエルが、両手の鉄扇を見せながらそう言う。
「……わざわざ種明かしでもするのか?」
ザフィーアは警戒し、刀を構えながらラファエルに訪ねる。
ラファエルはクスリと笑うと、
「別に、構わないわよ」
と答える。そして続けて
「この鉄扇『金雷扇』と『銀風扇』には、『賢者の石』という魔石が入っているの」
「賢者の石?」
聞き慣れない単語を聞き、尋ね返すエスメラルダ。
「賢者の石は術者の魔力をエネルギー源とするけど、術者とは別属性の魔法が使えるの。それで私とは別の属性の雷属性、風属性を発動させたってこと」
「別属性……。ってことはお前自身の属性は雷でも風でもない、ということか」
ラファエルの話に、そう返すザフィーア。
ザフィーアの返答に、またしてもクスリと笑うラファエル。そして
「そう。私の属性は幻属性。だから、攻撃よりもこういうのが得意なの」
そういうと、背中の枯草色の翼をはばたかせた。
ラファエルが翼をはばたかせると、それに合わせて桃色の鱗粉のような粉が舞い始める。
「これは?」
自身の方に舞ってくる桃色の鱗粉を見ながら、そう言うアルディア。
だが、そんなアルディアの様子に気に留めることもなく、ラファエルは引き続き翼をはばたかせながら鱗粉を散布させる。
すると、鱗粉がどんどんと舞うのに合わせて、アルディア達の視界がぼやけはじめ、思考もどんどんと低下をしはじめた。そして、思考の低下は目の前のラファエルの事以外、考えられなくなっていた。
「(まずい!)」
本能的にこのままでは危険だと感じたアルディアは、全身に力を込め、オーバードライブの出力を引き上げる。
アルディアがオーバードライブの出力を引き上げると、ラファエルの魔法による影響を打破。低下していた思考は正常に戻った。
思考が戻ったアルディアは、周囲を見渡す。横にいるエスメラルダ、ルービィ、ザフィーアはラファエルの魔法の影響を受け続けているようで、目が虚ろな状態で立っていた。
そんな仲間達の様子を見たアルディアは、
「皆、目を覚まして!」
と叫ぶと、それぞれの下へ駆け寄り、顔を平手打ちした。
アルディアの平手打ちを受けると、エスメラルダ、ルービィ、ザフィーアはそれぞれ平手打ちの勢いで吹き飛ばされる。だが、それによりエスメラルダ達も低下していた思考が正常に戻ったのであった。
「いたたたたた……」
アルディアに平手打ちをされた右頬をさすりながら、立ち上がるルービィ。
「アルディア……すまない、助かった」
ザフィーアも立ち上がりながら、アルディアに礼を言う。
「だけどアル、もうちょっと力加減してもらえるかな? 首もげそうだったよ」
エスメラルダが首をさすりながら、アルディアに苦言を言う。
「あ、ごめん。慌ててて、つい……」
アルディアは左手を口元にあてながら、エスメラルダに謝った。
「つい、って……」
エスメラルダはそう言いながらアルディアの方を見る。
アルディアの方を見たエスメラルダは、アルディアの姿を見て、少し驚いた様子を見せる。
「アル、そのオーラは……?」
エスメラルダはアルディアの身体からわずかに溢れるオーラを指差し、そう尋ねる。
「あ、これ? ラファエルの魔法打ち破るために、オーバードライブの出力を引き上げたんだ」
アルディアはエスメラルダの問いかけに、そう返す。
「出力を引き上げたって……大丈夫なの?」
「うん。まぁコントロールできる出力だからさ。2倍の時みたいに一気にダウンすることはないと思うよ」
「そ、そう……」
アルディアの返答に、一抹の不安を抱きながらもそう返すエスメラルダ。
コントロールできる出力とはいえ、1.2倍と比べたら高い出力。2倍ほどでもないとはいえ、オーラが身体から溢れている状態。一気にダウンすることはないとはいえ、長い時間は持たない可能性は十分考えられた。エスメラルダの不安は当然のものであった。
不安を抱きながらアルディアの姿を見ているエスメラルダ。すると、そんなアルディアの後方上空にラファエルが姿を現した。
姿を現したラファエルは、左手に持つ銀風扇を閉じ、アルディア目がけ真横に振るう。
銀風扇を真横に振るうと、扇の動きに合わせて風の刃が発生。横一文字の風の刃はそのままアルディアに向かって襲いかかった。
「アル! 伏せろ!」
アルディア目がけ飛んでくる風の刃を見たザフィーアが、刀を抜刀しながらそう叫ぶ。
ザフィーアの声に反応したアルディアは、即座にその場にしゃがみ込む。
それと同時に、ザフィーアは刀を横に振るい、氷の斬撃を飛ばす。
ザフィーアの放った氷の斬撃は、ラファエルの発生させた風の刃に激突。相殺させ、霧散させた。
「間一髪だったね……」
ザフィーアの斬撃で風の刃を相殺したのを見て、そう言うエスメラルダ。
一方、ラファエルは畳んだ金雷扇と銀風扇を持ったまま腕を組み、
「あら、残念」
と言った。
そして続けて、
「それにしても流石ね。先の反応といい、私のテンプテーションを自力で解除といい……。ガブリエルを倒しただけはあるわね」
と、クスリと笑みを浮かべながらそう言った。
「あの鱗粉の魔法、自力で解除した者、いないんだ?」
エスメラルダはラファエルの言葉にそう反応する。
「あの手の魔法は魔力を上回らないと無力化できないからな。ま、四柱帝相手に魔力で上回る奴なんて、まずいないだろうからな」
ザフィーアは刀を構えながら、冷静に分析し、そう言った。
「ふふ、強いわね。さぁ、もっと楽しませてちょうだい」
ラファエルは上空から一同を見下ろしながら、変わらず笑みを浮かべそう言う。
円卓の間に入ってから、一度も笑みを崩していないラファエル。その姿は、まだまだ余裕すら感じるものであった。




