表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/48

#38 ふーん、エミリーが主人公ねぇ

「そういうことだからさ、頼むエミリー! お前を取材させてくれ!」


「ほえ? 取材?」



 翌日の昼休み。マドカにエミリーとの話し合いの場を設けてもらい、お弁当を食べながら、こちらの事情をエミリーに伝える――ふっ、突然俺から頼られて、驚いただろう?



「いや、別に。驚きはしないが――そんなことをしていて良いのか? 確か貴様、そろそろ新作小説を書いている頃ではないのか? まだ取材の段階なのか? 不味いぞ、それは」


「実は新作小説の第五章へ突入しようとしている段階だ。だけど、いまいち主人公が活躍できていないからさ――エミリーを取材したいんだよ」



 すると、俺の発言にエミリーは目を丸くした。俺は何かおかしいことを言っただろうか。



「貴様がおかしいことを言うのはいつものことだ。いつものことではあるが――貴様が書いている小説、主人公のモデルは我なのか?」


「え? ああ、そうだけど? 言っていなかったか? すまない」


「いや、別に悪くはないが――ちょっと恥ずかしいな」


「ふーん、エミリーが主人公ねぇ」



 少々照れているように見えるエミリーの隣で、マドカが疑うような目でこちらを見てくる。や、やめろ! 俺は! 俺は無実だ! まだ何も悪いことをしていない! まだ、ね。



「何疑われるようなモノローグを展開しているのさ?」



 おっと、俺の悪いクセが出てしまったようだ。本当に何も悪い企みはしていないぞ?



「不服か? マドカ」



 俺は話を戻して、マドカにこのように返した。やはり、マドカの大事な幼馴染を主人公のモデルにしてしまったことは、彼の逆鱗に触れてしまったのだろうか。



「いや、なんというか――ちゃんと主人公できているのかな、と心配になっただけさ。エミリーみたいなキャラクターが主人公だと、作者であるジューイチにコントロールできないような気がするけど? 主人公の手綱を握る力が君にあるのかな?」



 痛いところを突いてくるマドカ。実はその指摘、全くもってその通りである。


 俺はエミリーをモデルとした主人公、彼女を物語の中で活かし切れていない。それどころか制御できず、勝手にこのキャラクターが動いて物語を掻き乱している気がする。


 登場人物の言動や行動に一貫性があれば、読者への説得力も少し増すと思うのだが――やはり俺の小説家としての経験が浅いことが関係しているのだろうか。こればかりは自分が信じる小説を書いて、書き続けて、技術を磨いていくしかないだろう。



「まあ、俺が主人公を制御できているかどうかはともかく――エミリーを取材して、何か見えてくると良い、そう思っている。頼むよ、エミリー!」


「良いぞ」


「え? 良いの、エミリー? 相手はジューイチだよ?」



 ど、どういう意味だ、マドカ! 俺は紳士だぞ? エミリーに何かするわけがないだろう! 大体、フェルトたちも一緒だよ! フェルトたちが付き添うから安心してほしいっての――全く、マドカはエミリーに関係することに反応し過ぎだよ。ちょっと怖いからね。



「ジューイチだって我らの結社、その仲間の一員だ。仲間が困っているのなら手を差し伸べるのは当然だろう。その理由がたとえ小説執筆でスランプだから――というものであったとしても、だ」


「え、エミリー! ありがとう!」



 くぅ~、惚れちゃいそうだぜ、【コンキスタ・エミリー】! 人間として、ね?



「言っておくけど、エミリーの尊厳を守って取材をしてもらうからね? 何かトラブルを起こしたら、すぐに取材を中止してくれよ?」


「ははっ、心配症だな、マドカは」


「エミリーは社長令嬢だよ。何かあったら社長が暴走して、大変なことになるからさ」


「わかっている、わかっているとも」



 心配するマドカを他所に、俺は嬉々として親指を立て、笑ってみせたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ