女郎廓
みかえるは泊まれれば何でもいいと思って入った女郎廓で思わぬ出会いをすることになる。
「身売り有りと無しがありますがいかがしましょう?」
ちょうど目の前に愛想のいい少女がいた。
「この子でいいか」
「この子はまだ13歳なので身売り無しですがよろしいですか?」
「君、踊りはできるか」
「はい!できます!」
「この子でたのむ」
「承りました、奥へどうぞ」
部屋に入ってとりあえず座った、長い旅路だった。
「それじゃ踊りを舞ってくれ」
「分かりました」
禿は舞を舞う、蝶のようだ。
しかし何かが違う、あの娘のような天に昇ってしまいそうな感覚が無い。
「お気に召しませんでしたか」
「いや、君が気にする必要はない、わしはおそらく望むべきでないものを望んでいるのだろう」
禿はちょっと落胆して話した。
「私に芸を教えた姉御がいるんですが、その方ならあなたを満足させられるかもしれません」
急な提案に意表をつかれた。
「そもそもこの店はチェンジはありなのか?」
「大丈夫ですよ、チェンジではなくて暇にしてる人員を呼んでフォローしてもらうのは他の禿もやってもらってるらしいです、一人前になって体を売るようになったら旦那さまの温情で許してもらえるよう頑張らないといけないらしいですが」
「そうか、ちょっと面白そうだ、会ってみていいか」
わしがそう言うと禿は勢い良く立ち上がってそこらの子供のようにかけて行った。
「あとでお客を置いていくのはまずいってことを教えてやらんとな」
その後禿が連れて来たのはしわの多い婦人であった。
「ウブメー!!ここだよ!」
「こらこらアゲハ、お客さんを放置しちゃだめだろ」
「(ちゃんと教えてるんだな、えらい)」
しかし続く言葉で一気に不安が増す。
「だって殿方と二人きりって苦手なんだもん!」
「(この子はこの仕事向かないかもしれん……)」
この婦人はおそらくかつて体を売ってはいたが今はやっていないといったところだろう。今さら女を買いたいとも思わんしちょうどいい。
「私を追加となると料金が発生するのだがこの子はちゃんと伝えていますか」
「初耳だが構わんよ、ただ他の危ない客もいるだろうからしっかり教えてやってくれ」
「話が通じるなら安心、とはいえ社長にバレたら折檻は避けられん、しっかり教えておく」
ウブメという女は部屋の奥に入ると上品に座った、花魁のような派手な装いではないが小綺麗で品位を感じさせる。ジャラジャラとアクセサリーをあまりつけていないのがかえって高級感を醸し出す、今は老いたが若い頃は金持ちの相手でもしていたのかもしれない。所作がやけに手慣れている。
「ウブメ!いつもの歌ってよ」
「バカ!この子は仕事とプライベートを弁えないと社長にまたぶん殴られるよ」
物騒な教育を聞いた気がするがそこはスルーする。
「定番の歌みたいなのがあるのか?」
「この国では有名な歌だよ、この子も故郷で母親から聞いて育ったぐらいさ」
「そうか、子守唄みたいなものだな、どれ一つ聞かせてくれないか」
「子守唄でいいのかい?まあこういう店にくるのは女好きか何かを失った人間くらいだものね、深くは聞かないよ」
ウブメは弦楽器を持って歌い出した、ある時は低く、ある時は高らかに、歌詞の内容はとある女の妖怪がかつて可愛がっていた人間に再会するストーリーだった。
はて、どこかで聞き覚えがある歌だ、わりと最近だったような……
夢と現の狭間でハッとしてその名を呟いた。
「マステマ?」
その時ウブメはガタンと弦楽器を落とした。
半分寝かけていたため焦点の合わない目でウブメを見ると、何も言わずにこちらを睨んでいた。




