東の国へ
ラハブ嬢と共に歩いた街を今は一人で歩いている。
そこを訪れれば何か希望でも見つかることを期待していたが、全くの空虚であった。
女王は見かねてみかえるを呼びつける。
「今のそなたを見ればラハブ嬢はきっと心配するぞ、せっかく聖女の誕生を支えた者として天使となれたであろうに」
「言わんとすることは分かりまする、しかしこの喪失感はどうにもできないのであります。天使になってしまっては以前のような偏愛に逃げることもかないません、どうすれば良いのかが本当に分からない」
冗談の一つも言う空気にならないことを確認すると、女王は本題を切り出した。
「そうか……実はそなたに頼みたいことがあるのだが、天使の体を持ったそなたにしか頼めないことだ」
みかえるは女王の命で東の国に行くことになった。
女王が言うには、
「私の盟友がいたのだが、最近プッツリと音信が途絶えたのだ、身分は低くないはずだからなにかしらあれば必ず手がかりはあるだろう、コンタクトできたらヤブマメを輸出するための手助けをしてもらいたい」とのこと。
みかえるは少し前のことを思い出していた。
女王が神々の内の一人に依頼して作ったとされるアンパンという食べ物、なかなか美味であった。
悪くはない、が少し物足りないような気がするのだ。
もしかすると東の国の人間ならばもっと美味しい料理法を知っている可能性があるかもしれないと期待してもいる。なにより愛しのラハブが命と引き換えに作った作物なのだ、人々に愛される特産品となるならばこれ以上の喜びはない。
船がだいぶ近づいて来た。もうすぐ東の国である。
そこでみかえるは非常に不吉なものの存在を見た。
特大級の黒い塔が建っていたのである。
明らかに遠くからでも見える。
比較するなら聖女タワーで100メートルである。
あのタワーは600メートルを超えている。
神の怒りを買った古代の塔で510メートル、神話ではないが、600メートル級の塔が崩れたならばそれに引き寄せられていた人々はこの地を離れて再び外国人の立場に戻るだろう。
言葉の通じないただの外国人に。




