街歩き
お前は何一つ変わらなかった……
あの時聞いた神からの声が何度も心の中に響く。
やはり神の意思というものがよく分からない、言うことを聞いたのにそれでは間違いだと言う。
結局あの後聖女の塔は白い壁で覆うことにした。
自分があの塔になった後してもらおうと思っていたことだ。
「女王さま、気分がすぐれませんか?」
「そなたは確か……」
確かクリスの養子でありマステマの弟でもある。
女王は思いきってカインにたずねた。
「なあ、私はどうして神に選ばれなかったんだと思う?」
「女王さまが、ですか」
カインは少し考えてみる。
「女王さま、少し街を歩いてみませんか」
「は?」
まだできて間もない街を二人で見て回る事にした。
思えば仕事が忙しくてゆっくり街を見ていなかったことに今更ながら気がついた。
女王は神の慈悲が一体なんなのかよく分からなくなったのでこの際頭を空っぽにして人間の営みを観察してみようと思った。
「(クリスの子供か、その割にはなよなよしく細い印象を受ける。やはりクリスのようにガッシリとした男にこそ私はひかれ……)」
その時女王はつまずきそうになる。
すかさずカインがガシッと抱き締めていた。
「す、すまぬ、考え事をしていた……」
「いいえお気になさらず」
カインはニコニコしていた。
「(不思議な男だ、どうにもつかみきれん)」
そのあと女王はカインに連れられ街中を散策した。
最後にあの塔のある所へ寄った。
カインは唐突に話しかけて来た。
「姉さんはよく分からない人でしたよ、いつも僕の考えの斜め上を行くんです」
「そうか……私にもマステマはついに理解しきれなかった、それさえ分かれば私も神の元にいくことができるかもしれぬのに」
「…………」
「?」
女王はふと気がつく、さっきまで気さくに話しかけて来ていたカインが不自然なほど静かになった。会話のテンポがピタリと止まった。
「カイン?」
その時女王は見てはいけないものを見てしまった。
全身を震わせながら、カインは涙を流していた。
「ごめんなさい、なぜか、涙が、止まらない……」
女王は固まってしまう。
「すまん、少し無神経だったな」
「いえ、女王さまが気にすることではありません、きっと姉さんは止めても同じことをしたでしょうし、誰にも止められませんよ」
「そうだな、本当に、人間とはよく分からん」
そして二人で王宮へ帰って、マステマ嬢のことについて話していたらいつの間にか女王とカインは男女のやるべきことをやり終えていた。
女王は一人で首をかしげる。
「うーん、本当に人間とはよく分からん」




