結末と始まり
女王とクリスとミカエルがその場所にかけつけた時、全てはもう終わっていた。
そこには立派な黒い塔が建っていた。
「マステマー!!」
クリスは黒い塔の前で両膝を着き、絶叫していた。
だが叫びたいのは女王もまた同じであった。
「神よ!!なぜですか!私が黒い塔となってこの地を見守る役目をお与えになったではありませんか!」
「女王さま!?」
そこで神の声が響いてくる。
「お前は普通の女となり、子を成し、裏方からこの国を支えていくのだ……」
「そんな……そんなのあんまりじゃないですか!今さら普通の女になどなれはしない、だって私は最強の龍なのですよ!?」
「マステマ嬢も同じ悩みを抱えていた中行動をおこし、その結果ラハブ嬢と波長が合い、我々の末席に加えることになった。
お前はまだ人の世で生きるがいい。
力を頼みにするだけではこちらに来ることは許さん。
ラハブは自ら人のために働きたいと願った。マステマは今のままの自分が嫌だと言った。
お前は私の命令を聞くし龍を助けはするが、お前の口から人々を幸せにしたいとは一言も聞いたことがない。根本的に弱い者を見下しているのだ。
考えがいつか改まると思っていたが、お前は結局何一つ変わらなかった。
メリュジーヌよ、今は我々の慈悲が分からないだろう、だが今すぐ分かれとは言わん。
ただそれが分からぬのであれば、お前は救う側ではなくまだまだ庇護の下にいることしかできないということだ」
そこでクリスは神に問う。
「マステマはどうなったのだ!死んでしまったのか!?」
「クリスよ、マステマは死んではおらぬ、だがもう二度と会えない場所にいる」
「そんな!そんなの、死んでいるのと変わらないではないか!」
「死んではおらぬ、その内分かるだろう。
さて、今回彼女らの魂が昇華されたため、お前たちにも福音を授ける。
まずはクリスよ、お前は過去の過ちに苦しめられているが、その呪いを解いてやろう」
「なんと……それは本当ですか!?このわしが、許されるというのですか!」
「そうだ……これからは夜くらいはゆっくりと眠るがよい」
「そしてミカエル、お前は天使にしてやる」
「ミカエル殿が天使!?」
「神よ、それは却って彼を苦しませて……」
「そしてメリュジーヌ、お前には普通の女の幸せを与える」
「神よ!それだけは……」
「それではさらばだ……」
それからパッタリと声はしなくなった。
この場においてクリスだけが喜んでいる図になるが、それぞれがもらった福音の真価はのちのち分かってくるのであった。




