クーデター
「女王陛下!大変です!クーデターを起こされました!」
「落ち着きなさい、過半数が私から誰かに寝返ったということでしょうか」
「いえ!クリスさまとミカエル殿の部下以外全員のようです!そして首謀者は……マステマさまです!」
「なんと、クリスの部下とミカエルの部下以外全員謀反を起こすとは…なぜなのですマステマ嬢!何が不服だったというのです!それほどまでに私の政治は致命的なミスをしていたというのですか」
そこへ兵士の一人が入ってくる。
「いやあそんなんじゃないんだなあ、確かにあんたの政治手腕に不満のあるやつはほとんどいねえと思うよ」
女王はそれを聞いて怪訝な表情を浮かべる。
「ではなんだと……」
そこでぞろぞろと女王の間に兵士が入り込んで来た。その中の一人が声高に主張する。
「聖女さまはよお、約束してくれたんだ、クーデターが成功したら俺たち全員と関係を持ってくれるってな!」
「おうよ!」
「俺たちには政治がどうとか複雑なことには全く興味がねえからよ!お高い女王さまより大安売りの聖女さまにつくことにしたのよお!」
「そうだ!そうだ!」
女王は兵士たちの言葉を聞いて感情の抜け落ちたような顔になった。
「ほう、ならば私についてきてくれるなら更に良い条件を上乗せしましょう……」
「なんだって!あのお高い女王さまがおれたちのために!?」
「いや!それなら考え直すこともできらあ!安い女より何だかんだで高い女の方が良いに決まってる!」
女王はその場でドレスを脱ぎ始めた。
「女王陛下!おやめください!」
一部の人間は知っていた、女王は龍の住む集落を落とすどころか安全な場所を用意してより高度な住み分けを計画していることに。
そしてそんな女王の正体が燃え盛る火竜であるということも。
女王の身体はみるみる内にコウモリのような羽の生えた真っ赤な恐竜の姿に変わる。
「私の側につくのならば命だけは勘弁してあげます、そしてそれが不服だというのならば……」
女王がブレスを吹くと炎の竜巻が起こる。最上級の火竜のブレスの証である。火力と破壊力の両方をあわせ持ち、人間一人分の水分など一瞬で消し飛ぶ。
「この国にはもう要らないので消えてもらってけっこうです」
クリスの部下の一人が頭を抱えて叫ぶ。
「だからやめてって言ったんだ!女王陛下に勝てる人間なんているわけないのに!」
「ハッハッハ……たまにはいいじゃないですか、害虫を焼き払うというのも……イベントとしては悪くない!」
ゴオッ!とブレスが壁に刺さる。
「あなたたちは本当に運がいい、クリスを信頼し、正義のために生きた。ミカエルの部下もまあ許しましょう、ですがそれ以外の人間はこの王宮から生きて帰すことまかりなりません」
女王のしっぽがならず者たちをなぎはらっていく。
男たちが阿鼻叫喚の中逃げ惑う、煉獄という場所が現実にあるならばきっとこういう風景であろう。
「待て!きさまら!」
そこへ遠征から早目に帰ってきたクリスが現れた。
クリスは怒り心頭であった。
怒れるクリスに火竜の姿のままドスンドスン!と地響きをさせながら女王は走り寄った。
「女王さま!ご無事であられますか」
「クリス~!!私怖かったよ~!あの男たちが私の前に現れて酷いことをしようとしたの!」
「もう大丈夫です女王さま、わしの命に代えてもやつらには指一本触れさせません」
「あいつら、全員で私一人を慰み物にするって言ってたのよ!」
「おお……なんという……許せん!!女性によってたかってそのような振る舞いをしようとするとは!!全員まとめて血の海に沈めてくれる!」
カインが行動を2日早めたのは女王襲撃に間に合うようにしたかったからだ、それが功を奏して今この場にクリスがいる。おそらく過剰戦力ではあるが。
クリスの正義感は悪いものではないのだが、時として思わぬ影響を与えてしまうことがある。
その一つが性癖の変容を促してしまうことだ。
女王は元々は男勝りな性格の女傑であるが偶然にも守られることを味わう機会ができてしまった。
女王からすれば破廉恥漢など気持ちが悪いくらいでヒト型でも負ける気はしない。だが自分が何をするわけでもなく目を見張るような手際でクリスは問題を処理してしまったのだ、クリスのこういうところに惚れ込んでしまう女性は後を絶たない。
下手をすれば若い男の兵士からすら慕われてしまうこともある。
クリスは逃げ惑う兵士を一人捕まえて問う。
「マステマはどこだ、話がしたい」




