グレイプニル
リリスとクリスはそのまま森の奥の黒い塔に向かい、中に置いてあるものをどけることにした。
黒い塔の中にあったのは大量の金銀財宝だった、尋常な量ではなかった。それらを一つ一つどけるとまっすぐに建つ黒い塔はだらんと首をもたげた。
「ありゃ、おれは一体何をしてたんだ?」
「邪龍さまとやら、本来は貴殿を切らねばならないのだが、できれば切らずにことを済ませたい、この娘に憑くことはできるか」
龍はぽかんとした。
「なんかあの首輪みたいなのからすごい力を感じるな。たぶんいけるんじゃないか?」
龍はあっけらかんと答えた。
「邪龍さま!お名前を教えていただけませんか?」
リリスが食い気味に質問する。
「邪龍って……、おれか!?」
龍はとまどっている、どうやらリリスが勝手に邪龍と呼んでいただけらしい。
龍の名前は北斗と言うそうだ、木に取り憑いているうちに自我を失くすことがよくあるらしい。大丈夫かこの龍。
今回の遠征はイレギュラーだったが、これが西の国においての聖騎士たちの業務である。
女王が正式に依頼をし、辺境の部族の戦士と1対1の決闘をする。聖騎士が勝つことができたらその部族が信仰している龍に首輪をつける。
この首輪はグレイプニルという非常に強い紐でできており、首にはめられたまま龍がレベルアップをすれば首が締まって死んでしまうようになっている。
こうして各地の龍の成長をコントロールし、西の国をバランス良く統治してきたのが女王なのだ。
そしてその女王もまた、龍だったのである。これは王宮でも一部の者しか知らない。
女王たちは元々北の国に住んでいた、だから龍たちの無法さをさんざん見てきたのだ、それだけに自分たちの性分を厳しく律することができなければ破滅しかないことを熟知していた。
後に西の国において増えた天使の正体とはこの首輪をはめられた龍たちであり、神に仕えることによって成長しすぎないようコントロールをされている。
一見損なようだが、無限に肥大化した龍は空を飛べなくなり、弱体化して簡単に死んでしまうため、意外とグレイプニルと神の庇護をほしがる龍は多かった。
ここまでが今回の遠征の前半、ここからカインとマステマによる大きな仕掛けが動く。
カインはリリスとクリスのやりとりを見張っていた。
パラディンとしては及第点ですよお義父様、そんなあなたを殺すのは姉さんでもあの龍の娘でもない。
「この僕だ……」
カインの鋭い目が光った。




