男女平等
本当にむかつく、相手が女だと分かると嘗めた態度をとるやつら。
農村において女の序列というものは最低だ。
他家へ嫁ぐ前から周りの男子たちはどのような扱いをするか皮算用をしていやがる、女が自分より下だと思っていなければ話すことすらできないくせに。
そして嫁いだならその家の奥方の序列が一つ上がり、その下に自分が入るのだ。
お前のものは私のものだと全て奪われ、子供を生み、働き、夫に仕え、自分が何者なのかも分からないまま適当に死んでいく。
私にはそんな生き方は耐えられない!
だが私は村から逃げた先で見つけたんだ。黒い塔の邪龍さまの存在を。
だから私には村の女たちとは違う生き方を模索できる、母さんや姉さんと同じようにはならない!
ある日邪龍さまにふれると記憶が流れ込んできた。
この国を統治しようとしている女王に刈り取られたことがあるというのだ。おそらく現在巷で言われているような姿とは全然別の恐ろしい姿だったが、同一人物だとなぜか分かった。邪龍さまも要注意人物として覚えておけと伝えてきた。
そして本当にやってきた、本人ではなく尖兵ではあるが。
私の人生を邪魔するのならばだれであろうと排除する。私の人生は私が開くのだ。
リリスはクリスに向かって走り出す。
クリスは謎の既視感の答えを得た。
「誰かに似てる気がしたが、なるほど」
カインもまたクリスと同じ考えに至っていた。
あの娘は姉さんに似てるんだと。
クリスは重い剣を捨てて一瞬で近づき、腹を殴った。
「がはあっ!」
リリスはその場で崩れ落ちる。
これで終わりなの!?嫌よ!私はまだ……
そこで意識が途切れた。
目覚めた時、家の中に運び込まれていた。
「ここは私の家か」
そこへクリスが入ってくる。
「おお、目覚めたか。調子はどうだ?」
そこでハッとする、邪龍さまはどうなってる!?
「安心しろ、まだ切ってはいない」
「どうして……」
「リリス、君は……前世が龍だったんだな」
「!!」
リリスは完全に虚を突かれた。
「そうよ、だから龍の気性が邪魔をして普通の女のようには振る舞えないの」
「なるほどな、うちの誰かさんも君とそっくりだからもしやと思ったんだ」
そこへミカエルもやってきた。
「リリスたん!」
リリスはゾゾゾっとした、村の男とはまた違った寒気がする。
「あなたはちょっと離れていてください」
「ガガーン!」
クリスは咳払いをすると、本題に入った。
「見たところこのリリス村にはまだ君しかいないんだな」
「そうよ?だから何、リリス村はこれから一大勢力となって台風の目になるのよ」
そこへクリスは首輪のようなものを取り出し、リリスにはめた。
「これは……」
「女王さまから渡されたグレイプニルというアイテムだ、各地域の龍をこれで抑え込んでいる」
「そんなものを私につけてどうする気?」
「これはそもそも黒い塔の邪龍さまの方につけるものだったんだが、邪龍さまにつけずに君につける。このアイテムで陰に転じれば龍を体に迎えやすくなるという副次的効果があるんだ。君個人と邪龍さまを一つにしてしまって黒い塔は撤去する」
リリスの反応を見張りながらクリスは頭をポリポリとかく。
「これが最大の譲歩だ、規模は小さくなるが…自分らしくは生きていけるんじゃないか?」
リリスはうなづいた。
「まあ、悪くはないわね」
リリスの得心にホッと息をつけてクリスは地元に置いてきた娘のことに想いを馳せていた。




