リリス討伐
「ミカエル殿、もう少しやる気を出せんかね」
「はあ、そうは言っても私は幼女にしか興味が涌きませんので」
「まったく、少しは良い方向へ行ったと思えば……」
「ラハブ嬢の前でなければ私は今でもクズ男ですぞ」
「……ハア」
クリスは今、女王の命を受けて部族の討伐に向かっている。
龍を信仰する村で、リリスという妖艶な女が支配しているらしい。
他に手伝える人員が割けないのでミカエルとその私設兵、別の部隊の兵とカインを連れていた。
一行は村に到着する、不気味なほど薄暗い場所だった。
村の奥の方に黒い塔が建っているのが見える。
黒い塔が建つということは、一つの文明を築くことができ得るということである。
この黒い塔は龍の陽気と女や動物、大地そのものの陰気を合わせて竜巻状の力が発生することによって存在している。
つまり黒い塔のあるところには龍がおり、文明の芽が出始めているということである。
ただし、統治国家を目指す上で雨後の竹の子のように文明が乱立すれば却って良い文明を築くことが不可能でもある。
クリスたちの使命は増えすぎた文明の間引きというわけである。
「出ていけ!ここはお前たちの来るところではない!」
木の上の見張り台から小さな女の子が弓をつがえている。
クリスは女の子に向かって叫んだ。
「我々は話をしに来た!ここを通してくれ」
ビシッと矢が放たれる。クリスは片手でキャッチする。
「こんな小さな子まで村の防衛として働かせるとは、なかなかリリスという輩は横暴なようだな」
「何を!取り消せ!」
もう一発矢を発射し、クリスがそれもキャッチする。その隙に女の子は短い刃物を構えてクリスに向かって飛び降りて行った。
ガシッ!とクリスは刃物を掴む。
「なかなかやるなお嬢さん、だがわしらはただ話し合いをしたいのだよ」
そこでミカエルが藪から棒に横やりを入れてくる。
「かわいい!!ラハブ嬢よりも年下であろうか、クリス殿!無傷で私に譲渡してくだされ」
「ハア……ミカエル殿、遊びではないのだぞ。戦場では意外と少年兵の方が厄介なものだ」
「あ、そう。なら仕方ないですな」
会話を聞いていた少女は怒り出す。
「だーかーら!私がリリスだ!!」
「「え?」」
噂では妖艶な女性だと皆が聞いていた。しかし目の前にいるのはちんちくりんな女の子で、なぜか自身をリリスと名乗っている。
「どうせ女王の差し金だろう、あいつは昔からサプライズが好きなやつだ」
「君は女王を知っているのか?」
「知ってるも何もこの国を統一するとか今でもやってるんだろ?そして私は私の楽園を築きたい、つまり私はお前たちの敵だ」
「なるほど、それを言うのならばわしらにも望みくらいはある。皆で机を囲み、美味しい食事をすることだ。例えばその中に君がいてもいい。皆で協力し、ずっと食べ物に困らずに生きていくのだ」
「欺瞞だな、そんな生活に慣れたやつは次第に食事に感謝しなくなる、行き着く果ては何を食っても美味くない地獄だ」
「分かり合えぬならば致し方ない、ならば一騎討ちと行こうか、そちら側の一番強い男を連れて来るが良い」
リリスはフンと鼻であしらった。
「その配慮は無用、なぜならできたばかりのこの私が率いるリリス村は男女平等、この私こそが部族最強の戦士だ」
リリスが二刀流の黒曜石ナイフを構えた。両者が互いに相手を見据える。
クリスが声を上げた。
「いざ尋常に勝負!」




