ヤブマメもどき
「いでよ!けるべろす」
みかえるの周りを取り囲むように犬の群れが現れた。
「おおかみ……」
大地に発生した地割れが伸びてみかえるごと犬たちをバクン!と呑み込んだ。
「さあ、食事を続けましょうか」
「そうですね」
とりあえず何もなかったことにしてトヨウケさまの用意した晩餐を味わうことにした。
トヨウケさまと意見交換をしているうちにとある植物について興味深いことを耳に入れた。ヤブマメというのだが、落花生のように地下で結実する豆の一種で、どうやらこの街で出回っている肉らしきものの正体はヤブマメから生成したたんぱく質ではないかとのこと。
過去にそれを大衆向けにアンパンというものとして開発したらしい。
だが西の国には馴染みがなくあまり流行らなかったそうだ。そのあと開発したのがクリームパンだったらしい。
深夜、宿の前で誰かがたたずんでいる。
その人物は声をかけてきた。
「よう……」
「え、みかえる?どうしてあんたが?」
「敵対する気はもう無い!話があって来たんだ」
みかえるは唐突に裏話を打ち明けだした。
「元はと言えば四凶の試練は3代目クリスの為に2代目クリスから依頼されてたことだ」
「ど、どゆこと?」
「元々用意されていたのは「飛べない鳥」「怖い顔ができない死神」「人口的に造られた神獣」「劣化版のドラゴン」だ。それらを3代目クリスが各個撃破したのちに仮初めの楽園である「アルカディア」、つまり現住所へ案内し、ライバルと切磋琢磨させ、その後ヒルコに呑まれてから母親と再会するというストーリーを描いていたわけだ。しかしここで思わぬハプニングが起こった、大鵬王という謎の大男がいきなり現れて経験値とするために四凶を屠ってしまったのだ」
みかえるは相当参っているらしい。
「2代目クリスの一世一代のサプライズがパーだ。それ自体も残念だったがな、それとは別にお前個人にも用があったんだ」
「な、なんでしょ?」
「この街の案内をわしにさせろ、絶対に要点をおさえるし、むしろ伝えさせてほしい」
カンナヅキは困惑する。
「そりゃ願ったり叶ったりだけどさ、あんたに何の得があるの?」
間髪入れずに返答が来る。
「正直誰かに知ってもらいたい、それだけだ。それに豆の香りがする肉の正体を知りたくないか?」
ふむ、と僕は確かにそこがひっかかっている。
明らかに豆の香りなのに肉としての完成度が高い食べ物、人肉のような不気味さこそないけど、なぜか僕の鑑定眼が警鐘を鳴らしているような気がする。
「もう深夜だけど、今行けるか?」
「クックック、そうこなくっちゃな」
街の真ん中には白い塔が立っている、下手すれば王宮より高いような気さえする。
そのそばに地下へ続く階段があった。
この不気味さは覚えがある、ニライアイランドの大便用トイレの地下室だ。何かをリアルタイムで収穫する為の部屋がいくつもある。その内の一つの部屋の前に立った。みかえるは腰の鍵を取り出し、ドアの鍵穴にカチャリとはめた。
ギイイイときしんだ扉が開く。
「これが我々の罪だ、心ゆくまで見てくれ」
そこにあるのは真っ白い肉塊だった。
脈動が聞こえる、生きてはいる。だがその白い肉からは無数の豆が伸びていた。




