らどんの正体
「準備はできましたか」
トヨウケさまは自ら引率を買って出てくれた。
武器はクリスくんは木刀、僕は魚人から追い剥ぎした鉄の爪をつけていった。
「ちょっと遠いので涼しい時間帯に荒れ地を往きますね」
トヨウケさまはチャンネルを荒れ地に合わせた。
赤い太陽が僕らを照らす。絶望的な風景だが僕らは目をそらさない、その先にあるものが喩え絶望であっても止まることはない。
「だいぶ近くに来ましたし、チャンネルを森に戻しますね」
「え?はい」
「???」
森でも荒れ地でも同じようにあるのに?
トヨウケさまが風景を森に戻すと、かなり暗い森であることが分かった。
「ここからは一人ずつ行ってください、そして「らどん」の守る黄金の林檎を1つだけもいで帰って来てください」
「それなら僕から行ってきます」
僕は先に行かせてもらうことにした。
ザッザッザッと自分の足音だけが響く。
予想以上に不気味な場所だった、動物の気配が全く無い。
暗闇の真ん中に黄色い顔をした大蛇の顔と目が合った。
その顔は一つではなかった、無数に存在する顔がこちらを見ている。
だが警戒心は感じるがこちらを呑み込んでやろうという意志が全く感じられなかった。
「ああ、そういうこと……」
というわけで黄金の林檎をもいでお土産にすることにした。
出口は別にあるらしく、10分ほどでクリスくんが入って行くだろう。
正直彼はガッカリするかもしれない。
「それでは行ってきます!」
トヨウケヒメは笑顔でクリスを送り出す。
「ううう、びびるな!びびるな!もう先にカンナヅキくんは行ったんだ」
クリスがそこへたどり着くと、無数の大蛇がクリスを見つめていた。
「多勢に無勢とはこしゃくな~!カンナヅキくんから学んだ剣術を見せてやる!」
クリスは集中するにつれ、自然と殺気が出る。
「せいっ!」
大蛇の顔に当たる前に木刀が何かに引っ掛かった、すると大蛇の顔は一斉に飛んだ。
蝶だった。
「え?これってもしかして」
目の前のものを再確認するとミカンの木であった。
とりあえずミカンの実をもいで持って帰ることにした。
「あれが「らどん」の正体だったんですか?」
「そうよ?」
「らどん」の正体、それはアゲハチョウだった。
羽を広げた模様は大蛇の顔になっている、個体も存在する。
だが確かにここのアゲハチョウは少し大きく、鮮明に大蛇っぽい模様だった。
「お気に召したかしら?」
「僕のドキドキを返してほしい……」
クリスくんは拗ねる。
「ヒルコはまあ、自分の後輩にエンジョイしてほしかったのかもしれませんね」
「エンジョイ?」
「ああ見えて意外と先輩風を吹かしたがるところがあるんですよ」
「おお、そんなものですか……」




