ドラゴンスレイヤーの末裔
「ツクヨミさまを西の国に送った!?しかもヒルコの依頼で!」
イツキはトヨウケヒメをなだめる。
「まあまあ、きっと大丈夫よ」
「そうだぞ、割と良心的な内容だ」
トヨウケヒメはキッと睨み付ける。
「そういうことじゃないんですよ、あの人に少しでも傷がついたら覚悟してくださいね」
イツキとヒルコは一心同体にゾゾゾッと悪寒が走った。
トヨウケヒメは大地の神である、なので大地の続く場所ならば何処にでも存在できる。次の瞬間にはカンナヅキの前にいた。接敵状況を確認すると即攻撃に移る。
「おおかみ……」
そして地割れが虎の口のように「みかえる」へと伸び、呑み込んだ。
「ぎゃあぎゃあ!助けろ!おれはこんなところで死んでいい人間じゃない!あ、人間じゃなかったわおれ」
みかえるは大地に呑まれて静かになった。
「大丈夫ですかカンナヅキ、どうしてこんなところへ?(知ってますけど)」
「トヨウケさま!実はカスタードクリームの作り方を知りたくて」
「まあ、熱心ね(そっちの目的ですか)」
おずおずとクリスがトヨウケヒメに近寄って話しかける。
「あの!お姉さんは天使じゃないのにどうしてそんなに綺麗なんですか!?」
トヨウケヒメはぱちくりとすると少年への評価を定める。
「おや、この者はなかなか弁えているようですね、友達は大事にするのですよ」
先ほどのみかえるへの待遇とは天地の差である。
トヨウケヒメは先ほどの「けるべろす」が眠ったあたりに近寄る、いつの間にか「けるべろす」は消えていた。
「これを見なさい」
「これは、ミミズ?」
「そうです、西の国はフロンティアであってほとんどが荒れ地です、だから土の柔らかい部分にはミミズが生息していますが時折土中のミミズが周囲の気を吸収して自分を大きく見せようとすることが起こります」
「それであのけるべろすというモンスターの姿になっていたんですね」
「そうです、ですが実体は無害なものです」
「それなら襲われても無傷ですね」
トヨウケヒメはそこで閉口する。
「それがですね、気合いで負ければ………死にます!!」
「死ぬんだ!?」
「それと、西の国の特徴ですが多層構造になっているとても厄介な土地です」
「多層構造?」
「よーく見てくださいね」
トヨウケさまを見ていると景色が変わって見えた。
そこは荒地がどこまでも広がっている土地だった。
「ちょ、僕の家も消えた!?」
「落ち着いてください、森には目眩ましの魔法がかかっているんですよ、また元通りにすれば森の中です」
トヨウケヒメは西の国の情報に関してかなり熟知しているように見えた、思いきって聞いてみることにする。
「もしかして木凶の「らどん」がどこにいるかご存知ですか?」
「木凶の「らどん」ですか、なるほど」
トヨウケヒメは殺気を放ち出した。
「毎度毎度余計なことを……ヒルコは日の当たる場所に引きずり出して永遠に鷹でついばんでやりましょうか」
殺気がこちらまでビリビリと伝わってくる。
「ト、トヨウケさま?」
「ああ申し訳ありません、木凶の「らどん」はどちらでも会えますよ、そもそも木凶と言っても龍そのものではないのですよ」
「そうなんですか?なんだ、せっかく龍を殺せると思ったのに」
トヨウケヒメは何やら興味を示した。
「ほう?まさかあなたは龍殺しの末裔ですか?」
「そう!何を隠そうおじいちゃんの時代から龍殺しをやってる一族なんだよね!だから僕の時代には龍が残っていないんだ」
「なるほど、そういうわけですか」
「うん、一回だけでいいから僕も龍殺しをやってみたいんだ!それに……」
「それに?」
「僕のお母さんは悪い龍に囚われているってお父さんが言っていたんだ!だから僕には会えないって」
トヨウケヒメは考えこむ。
「そういうことならば手始めに「らどん」のいるところに案内いたしましょうか?龍の知り合いならば何体かいますし」
「え!?いいの!?」
「別に秘密にしているわけでもないので」
しかし、三代目クリスということは二代目は龍の妻と結婚をしたと耳にはさんだ覚えが……
そして間違いでなければその龍は……
親殺しを推奨するような教育をした?あまりに不自然です、ただ確認はしておいた方が良さそうですね。
カンナヅキたちの位置からギリギリ視認できる範囲に見覚えのある黒いタワーがそびえ立っていた。




