初めての友人
西の国の通貨は誰も持っていないらしく、向こうに着いてから行動不能に陥るのを防ぐため換金してもらえそうな物を持っていくことにした。
金でもあればいいんだけど、そういうものは一切持っていない。
「ハンゲ、クサノオウ、ヤマユリ、オオマツヨイグサ、カキ、クスノキ、クコ、ゲッケイジュ、ハッカ、オトギリソウ、マツカゼソウ、ダイコンソウ、キクイモ、ローズマリー、サルビア、ヨモギ……」
「共通点は?」
「特にない、いかにも薬効がありそうなものだけとりあえずこっちに引っ張ってきた、とりあえずこれで向こうの世界の通貨と交換してもらおう」
アマテラスさまが転送の準備をしている横で僕はリリスと話し続ける。
「今僕らはクロス教を警戒している」
「そりゃあいつらはね、相当ヤバいわよ」
「発展途上の周辺の国がどんどん支配下に置かれているらしいな」
「そのとおりよ」
「そういう各地の主になっていた土地神の神霊たちを盛り立てて場所を返還していきたいんだ」
リリスは目を丸くする。そこでルシファーが交代して姿が変わる。
「人間を舐めるな、あいつらの欲は悪魔の比ではないぞ」
「おんなじだよ悪魔も人間も。違うのは身体の有無だけだ」
「ほう、そんなものか」
「今僕の心は欲で燃えているが、結果的にみんなが喜ぶ方に進んでいるだろう?世界は昔からずっと欲で回っているんだ。善も悪も欲の力であることは変わらない、まあクロス教が善かどうかはよく分からないけど」
「なるほど」
「ていうか、それを言うなら悪魔って確かに退廃的なだけで無欲なやつが圧倒的に多いよな」
そこでリリスと人格が交代する、交代する度に姿も変わる。
「あにうえ?」
「え?」
イツキさまとアマテラスさまはギョッとしてこっちを見ている。
「気をつけて行ってきてください」
「なんだろ、大人びてみえるのかな?」
対して何も深く考えないまま魔方陣の上に立った。
「OK、植物の苗も大量に持ったし、それじゃ行ってくる」
僕は植物を駅弁風に抱えて躊躇せずに穴に入っていった。
着いた先は森のような場所だった、だが植生はニレとか落葉樹木でも針葉樹でもなく、海岸に生えているようなトベラやシャリンバイ、ヤシ科の植物がメインで全体的に背が低かった、ニライアイランドのように塩害がひどいのかもしれない。
近くには魔女でも住んでいそうな小屋がぽつんと建っていたのでちょっと寄って見ることにした。
「ごめんください」
ノックをしようとした時である。
「お客さんとは珍しい!」
びくっとして振り返るとちんちくりんな少年が立っていた。
「はじめまして!クリスと申します」
「はじめまして……」
正直かなり警戒感が出てたと思う。
「お客さんならもてなさないといけないね!君はハーブティーは飲めるかい!」
ハッと気づく、ただの水があまり手に入らない地域では嗜好品、例えば酒、コーヒー、お茶などで水分をとるのが常識らしい。ここで過ごすならば避けては通れない道である。
「ハーブ!ぜひ飲んでみたい」
「それなら少し待ってて!」
ハーブティーとやらは今まで試したお茶とはまた少しずつ違う風味があった。木の香りとでも言うのか、爽やかな香りが鼻を通り抜ける。
「どうだい?風味は強すぎないかい?」
「いえ、ちょうどいいです普段飲んでる方が苦いくらいですね」
「そうかい!そりゃ良かった。ところで君が持ってきたあの植物は何なんだい」
「あれは全部薬や食料になる植物ですね、売るために持ってきました」
「おお…全部おれに売ってくれないか?珍しい植物が大好きなんだよ」
僕と彼はすかさず握手をした…
「誰か!これをどこかのスペースに植えてくれ」
「ん?」
「クリスよ、呼んだか?」
「ああ、これを日が当たるスペースに植えておいてくれ、頼んだぞアリエール」
「アリエナイ……」
そこにいたのは全身が真っ白でマッチョで首が無い、それでいて目がいくつも付いている、羽も樹の枝のようにいくつも生えている謎の生物だった。彼は植物をまるごと持ってどこかへ飛んでいった。
「なんだありゃ!?」
「ん?天使って見たことない?」
「天使!?僕の世界では植物の管理は龍が…ってダメだなんでもないです」
「龍!?君は龍を見たことがあるのかい!?」




