↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗北者  作者: 松尾樹
26/43

外伝 大地の女神の妄想

「はい、今日も頑張ってね」

「うわあ……白米がこんなにいっぱい、しあわせ〜」

「あなたの大好きな納豆に生卵、佃煮にキュウリのぬか漬けも用意しておいたわよ」

「これで水の女神の演奏に芸の女神の舞踏があれば最高だな」

「だーめ、わたしだけを見てて」

「わかったよ」


納豆と熱々のご飯を口に運ぶ……


「うま〜い」


ぬか漬けもパリパリしてて食欲をそそる。佃煮をほんの少しとり甘じょっぱさを足したら冷ました緑茶で流す。

「あ、そういえばこの佃煮って」

「ばれましたか」

「僕が子供の頃から食べてたのって女神さまが作ってたの?」

「そうです、人間になったあなたに色んなルートを駆使してわたしの料理を届けさせていたのですよ」

「…………逃亡生活で幽霊屋敷に忍び込んだ時そこの女主人から佃煮を食べさせてもらったのって………」

「美味しかったですか?」

「あれは泣くほど美味しかったよ……」


大地の女神は言葉が少ないけど仕草が女性らしくていい、いつまでもこんな日々が続いたらいいのに……

いっぱい肥料を作って、作物を育てて、子供はまあ一人いればいいか。


と、彼がつぶやいている妄想をわたしはしてしまう。

本当のわたしは意地っ張りなのに引っ込み思案で可愛くない女だと思う。

今日もいつも通り彼に珍しい食べ物を自慢する。


「これは西で食べられている小麦という穀物から作ったパンというものです」

「この中に入っている黄色っぽいものはなんていうんですか?」


彼は興奮気味に聞いてくる。わたしは勝ち誇った顔で答える。


「それはカスタードクリームというものです」

「そうなのか!ではさっそく味見してみよう」


あんなにプライドが高くてナルシストだった彼が今はわたしの、わたしの料理だけに夢中になっている。


「なんだこれは!?悲しみが癒やされるようだ!」

「大げさですよ」

「生まれてきてよかった!」

「……そうですか」


ちょっとだけ安心する、彼がわたしのせいで不幸になっていないか、日の当たらない場所でのたうち回っていないか……そんなことばかりを心配していた。

だが彼はそんなたまではないことも同時に知っている。


「一週間だ!一週間で同じものを作ってみせる!」

「あらそうですか、できるものならなやってみなさい、人間が神に挑むとはいい度胸です」


と言いつつ、本当は彼が全力でくらいついてくれるのを期待していた。間接的でいい、わたしに夢中になってくれるのがうれしかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。