コンプレックス3
そうこうしている内にスサノオの意識は水の邪龍と完全に融合してしまった。
「くう、いっそ燃やしてしまうか」
「それは無理です」
「やってみなければ……おや、本当に効かんな」
おれが言ったとおり姉上の火は通用しなかった。
「何故だ?何故きかんのだ」
「名前こそ水の邪龍ですが正確には水、木、火の力が陽気となってほとばしっています、つまり今のあいつには水も風も火も効かないのです、おまけに周囲の気を際限なく吸収してどこまでも成長する」
「そうか、いったんスサノオは置いて逃げるか?」
「……姉上、楽勝ですよ」
おれは両手を空に向ける。
「大地の女神、水の女神、ちょっと体調を崩すかもしれんから気をつけろ」
「手荒なことはしないでくださいね」
おれは月を地表ギリギリまで寄せてくる。
月には海や大地をその引力でかき混ぜる力がある。
水の女神と大地の女神がお腹をおさえてうずくまるが我慢してもらわねばならない。
そのうちに地響きがそこら中で起こり始めた。
「なんだなんだ?お前は一体何をしたんだ?」
「月の力で大地に点在している金の気、つまり動物霊を一箇所に集め水の邪龍を食べてもらうのですよ、大地の獣は神々でも手を焼くほど獰猛ではありますが餌をやっている限り襲っては来ません、西の方ではケルベロスにパンを与えるという諺まであるそうですよ」
「ではお前が今呼び出しているのはけるべろすとかいう名前のやつなのか?」
「間違いではありませんが我々の国では我々の流儀に則って名付けましょう、大きな神だけにオオカミとでも呼びましょうか」
「オオカミか、悪くない。こいつを意のままに手懐ける方法を研究してくれ、国の力をより強くしてやろう」
「御意。月は大地に落としてしまうと天に帰れないのでそろそろ空に返します、月に代わっておしおきしてもらいましょうか」
大地に割れ目が出現して水の邪龍をすっぽりと飲み込んでいく。
アマテラスは興味が失せたのか、一人でさっさと帰路についてしまった。
「そろそろ起きろ!帰るぞ!」
すると破壊神がつまらなそうにひょこっと姿を現した。
「気は晴れたか?」
「もうちょっと姉上の困った姿を見たかったぞ」
「姉上は……頑張る前からあっさり撤退しようとしてたな」
「いつか必ずこの報いは受けさす、兄上は邪魔しないでくれよ」
「ああ」
何というか、弟の女装があまりに可愛すぎて耳に入って来ない……姉上が変態になるのも分かる気がする、とは口が裂けても言えまい。
だがこれだけは言える。こんなに可愛い弟がいたから。
「お前がいたからおれはおれになれたんだ」




