コンプレックス2
スサノオは破壊神でいるにはまともすぎた。先に手腕を発揮する兄と姉にはさまれ、押しつぶされそうだった。
ある日水の邪龍を退治せねばならない時だった。
水の邪龍は多頭の蛇なのだが、体が大きく蛇の頭がそこら中で絡まり合うほどの数だったため本体を探すのに混迷を極めた。そこで本体と生殖器がワンセットになっていると想定してとある作戦をアマテラスは思いついた。
「女装して近づけと!?」
「そうだ、お前が女装してあの水の邪龍の急所まで攻撃が届くようにするのだ」
「冗談でしょう姉上?ちょ、うわあああ!!」
スサノオの体をみんなで押さえつけ、着ている服を剥ぎ取り、髪型をいじる。
アマテラスは鏡を無理やり見せる。
「ほら見えるか?この美人なおなごの姿が」
「み、見たくない……」
「いいや見るんだ、こんなにいと可愛らしい姿をしているのはお前だ弟よ」
強姦魔さながらの手腕でアマテラスはスサノオの容姿を改造していく。
「羞恥に顔を赤らめ、声を殺して涙を流す姿は男と分かっていても胸をときめかすような仕草だぞ」
「姉上、その文学的な言いまわしはどこで覚えた……」
(覚えていろ兄上……姉上……おれが奪われたものは必ず取り返す、だがそれにしてもこの自分の姿に高揚している自分もまたおぞましい……これらの自己を全て切り取ることができたならどれだけ……)
紅をさし、腰と胸に詰め物をし、お酒を軽く飲ませ色気を演出する。
今回の作戦を実行に移すにはスサノオの持つ男らしさをとことん虚勢せねばならなかった。
結果を言えばスサノオの女装作戦はうまく行き過ぎて失敗だった。
イツキの生みの親だけあって素養がありすぎたのだ。本人からしたらまったく嬉しくない才能であった。
低い目の黒い塔がいくつも乱立しだしたのだ。
黒い塔の立つ条件は強い陽性の気と陰性の気を合わせた時に発生する。
「水の邪龍の力がパワーアップしているぞ!一体何が起こった!」
「わからんのか姉上、あの水の邪龍と弟は波長が合いすぎている、あれが弟の真の実力だよ」
「真の実力だと?」
「弟がその気になれば我々など相手にもならない、我々が先に生まれて来たのはスサノオの力を発揮させないためだ」
「そうだったのか……強くなってもらおうとしたり弱々しくなってもらおうとしたり、色々大変な想いをさせてしまったな」
「…………姉上が弟で遊んだせいでおれまで恨まれてしまってるんですけど……」




