大ファン
「女神さま、参加するのはいいけどニライアイランドに一日だけ雨を降らせてくれない?」
「参加確定ね、約束は守るわ」
大地の女神が説明してくれる、格闘技イベントは〈千人勝負〉。ルールは一対一で一分ずつ、勝っても負けても2回ずつ闘いローテーションしていく。怪我をすれば回復してくれる、など。
問題は武の神と闘ったあと破壊神と闘うところの配置のメンツが決まらないらしい。当たり前だ。
「あなた行けるでしょ?」
「素手だろう?僕が行くよ」
「助かるわ」
大地の女神が尋ねてくる。
「格闘技イベントに出るならばダンスイベントは辞めておきますか?」
「いや、水の女神さまが演奏するのに合わせて舞踏するのでいいんでしょ?枠組み作ってくれたら踊るよ」
「!!……でしたらわたしが振り付け師をするので大体の形だけ覚えていただけますか?」
「いいよ、よろしくお願いします」
大地の女神は内心舌を巻いた、闘いと舞踏の両方をできるものなど神といえどほとんどいないのだ。
大地の女神が推奨する舞踏はタップダンスのようだった。
「そう、そこで回って、もう一歩出て。…………大丈夫そうね」
「そろそろ僕たちの番です」
水の女神さまとその姉妹は先に会場入りをして弦楽器を奏でていたためかなりぶっ通しになっている。水の女神さまたちほどの奏者が他にいないためだ。
太陽神はとある男子の舞踏を凝視していた。
水の女神三姉妹が新たな曲を奏で始める。
「さあ行きますよ、さん、に、いち」
出だしは上々、軽快でリズミカルな足さばきは見事に発揮される。それは太陽神に少々執着心を起こさせる類のものであった。
「おお弟よ、やはりお前は妾の弟だよ、たとえ人間になろうともな」
テレビジョンの前で号泣しながら食い入るさまはあまり行儀の良い見方ではないが本人は陰鬱な感情が払拭されるのを感じていた。
「そう、そんな感じ」
大地の女神は誘うような表情で、それでいて冷静だった。
大地の女神さまの編集したステップはおどけた可愛らしさのようなものを表現している、それは僕が踊ってみても誘っているように見える、いざなっているように見える。踊り子が真ん中に立ち、初めは大地の女神が僕を追いかけるようなしぐさで捕まえる、あっさり離す、今度は僕が大地の女神を追いかけ捕まえ離す。
「父神さま…………母神さま…………」
太陽神はテレビジョンに抱きつきながらずっと泣いていた。




