異文化交流3
大地の女神の卓は正に圧巻だった。世界を知り尽くしたはずのおれが知らない作物、調理法、文化をまるごと持ってきやがった。
「なんだこの大きな瓜は」
「これはスイカと言います一口食べてみてください」
おれは見たこともないものを躊躇せずに口に運んだ。
「甘あぁァァ!なんだこれは、よく噛んだ米よりも!麦芽糖よりも甘いぞ!」
「こちらもどうぞ、黄金のリンゴと謳われるミカンという作物です」
「リンゴ?リンゴってあの酸っぱくて調理しないと食えないリンゴか?」
「黄金のリンゴは全くの別物です。眠らない多頭の蛇の果樹園から成人の儀の試練で人間の男子たちに持ってこさせました。」
「ほう、ハードルを上げよるわ」
おれはこの黄金のリンゴとやらも躊躇せずに口に放り込んで咀嚼した。
「うまああぁぁ!!」
おれは驚愕した、おれは何も知らなかったのだ、汚いものに触れるのを拒み全てを知っていると自惚れ、その自分の無能さを突きつけられているような気さえした。
その後は葉物や根菜も試食するが、ミカンの汁を使って肉を柔らかくし(麹や酢でもできることを知らない)臭みを山椒とは別の何かを振りかけて打ち消した鶏料理、ヨーグルトという酸っぱい豆腐のようなもの、マヨネーズとかいう油と酢を卵の乳化作用を使って作り出した調味料、酒を臭みとりに使う調理方フランベ(醤油でいう火香みたいなの?)などを次から次へと紹介される。
あまりの美味さと感動と共におれは腹の中で何かがくすぶって来たのを感じた。
たかが大地の女神がおれの予想をはるかに上回るものを用意してきたのが耐えられなかったのだ。
正直見下していた!
だって大地より天の方が高いじゃん、当たり前じゃん。
当たり前じゃなかった!おれはただのバカだった!道化だ!
初めは勝ち誇っていた大地の女神がいぶかしそうにこちらを見つめてくる。
「あの、…………さま」
「なんだ」
「お味の方は……」
なんだそんなことか。
ゆらり……とおれは立ち上がる。
「ひっ!」
おれは大地の女神の頭を撫でた。
「…………さま?どうして笑って……」
「おれは笑っているのか?」
おれはいつも強張った顔をしているらしい、それが他の神からもよく注意されるが、おれはいつの間にか笑っていたそうだ。
「犬は少なめで頼む」
「は?」
「愛しているぞ」
おれはその場の勢いで転生した。もちろん人間にだ。もっと知りたい。人間の世界のことを。そしてこれから長い時間、おれは大地のそばで生きる。




