第7話
聖歴501年 西暦1948年 6月2日午後1時
国際連邦領港湾都市『ニュー・フロンティア』 国際連邦機構軍総司令部 会議室
「ローヒルト正教国教皇庁所属枢機卿にして代表のレップリーです。」
「扶桑帝国政府総理大臣兼国際連邦代表の田沼興次と申します、本日は有意義な会議が出来る事を期待します。」
この日行われるローヒルト正教国と国際連邦の会談はどの国でも注目の的だった
国家間の対立を一時的にとはいえ止め纏め上げ設立された国際連邦から見たら異世界...『ドラグレス大陸』において新興で在りながらその自由と実力で多数の信徒を確保しつつある宗教勢力にして調停機関でもあるローヒルト正教の総本山、そしてその中でもやり手である『豊満なる賢者』ことレップリー枢機卿
このドラグレス大陸のどの国や種族から見て突如やってきた正体不明の勢力...1931年にガリア共和国が突如名前を変える前のドイツ帝国に侵攻した事によって発生した世界大戦こと『大戦』を戦い、今現在は非常事態により共同で設置した世界連邦議会を中枢とする世界連邦、その中でも最大にして最強の海洋戦力と随一の歴史を持つ超大国である扶桑帝国、そしてその扶桑帝国を率いる指導者の1人にして『侍』という異名を持つ田沼興次総理大臣
この両国と両者の会談はどの国にとっても実に恐ろしく興味深い代物であった
そしてこの会談が行われている港湾都市『ニュー・フロンティア』は、国際連邦がこの辺り一帯を領有していた『ヌランティア共和国』から土地を購入し主に旧大西洋連邦構成国の出資で建設が急ピッチで進んでいた
因みに2番目に建設されている都市で、1番目に建設されたのは隣国のレスト王国に建設された扶桑帝国出資の港湾都市『秋津洲』で3番目にローヒルト正教勢力圏端のローヒリア聖教圏と接している『ドルデシュタット公国』に港湾都市『ヴァイスハーフェン』が建設中である
そんなこんなで各機関の職員達が血反吐を吐く様な努力で準備が整えられ、この日を迎えたのである
そして4時間の会談は行われ、2人は出てくると取材陣の前で硬く握手を交わすと
「ではオキツグ殿、次は友好条約だけでは無く交易に関してもお願いします。」
「ええレップリー殿、我が連邦でも幾らか見繕っておきます。」
と少し笑みを浮かべながら話し、この会談は成功した事を表した
そしてこの日から世界連邦とローヒルト正教を始めとする反差別を掲げる国々や亜人族や魔族等の国々や勢力は一気に発展していく事となる
魔法技術は強力且つ万能ではあるものの使用できるのは魔法適性がある人々である魔法使いや魔導士という制限があり、科学技術は使用法を学べば誰でも使えるが未だ未熟且つ無理も多かった
こういった技術の交流や物資や資源に限らず人材や思想の交流により著しく発展していったのである
ただこの発展を歓迎しない者達も多かった
ローヒリア聖教圏の国々や人族至上主義を掲げる者達は、自分達の権力を脅かすとして敵対している反差別主義勢力の台頭を嫌った
その為彼等も世界連邦に接触したが、その際に彼等の基準(魔法技術至上主義)と思考(選民主義)により隷属若しくは勢力下になるかという上から目線で接触した為、世界連邦は満場一致でローヒルト正教圏に協力することを正式決定した...誰が意味不明な理論で奴隷になるか子分になるか決めつけてくる連中と友好的に接触してきて対等な立場で交渉や話合いできる人々のどちらと付き合うかといったら決まっていた
因みにこの星の面積は地球の2倍でドラグリア大陸も地球にあったパンゲア大陸の2倍の面積があり、ローヒルト正教圏はその内の3割を勢力圏としており、国力的には劣勢だったが世界連邦との交流や支援により急速に縮めつつあった
その為
「何? 民間の輸送船が?」
「はい、海賊と思われる不明船に襲撃されたそうです。 しかし幸運にもその輸送船は我が海軍の戦時急増艦の大型輸送船で有る程度の自衛武装を搭載していた撃退に成功したそうです...そしてその後急行した我が扶桑帝国海軍第21哨戒艦隊所属のビマ型哨戒駆逐艦『ビマ』『ドンプ』が撃退した海賊船を拿捕、そしてその海賊船からはローヒリア聖教国の私掠免許状があり...」
「その海賊共が私掠免許状があるから合法だとほざいとる訳か...」
首相官邸の執務室で執務中の田沼は運輸省と軍務省から上がってきた報告書に目を細めた
「ともかく我が国の法では海賊行為は生活苦の為に殺傷無しで行われない限りは原則死刑だ、それはどの国の国籍を持っていようが変わらん...良いか? 法に従い処罰しろ。」
「しかし、それはローヒリア聖教を刺激す「だからどうした馬鹿者め。」...」
報告書を持ってきた役人の1人の言葉に返すとと同時に、田沼はその目を鷹の様に鋭く細めた
「生活苦で海賊行為に働くしか生きていくしかないならそれはまだ更生の余地がある...しかしその糞共は教団や勢力圏の国々や商業ギルドが発行しているバカ高い私掠免許状を買えるだけの財が有るのに海賊行為を働いておる、完全に我々に喧嘩を売っておるし到底容認できる物で無いわ! 既に他の世界連邦構成国の船舶も襲撃されており、その対応も厳罰じゃから合わせんとダメじゃしな。」
田沼はそういって役人に向けていたその目を、執務室の壁に掛けられている扶桑帝国の国旗に向けた
「何より我が扶桑は大海洋帝国、扶桑を帝国たらしめている海運を担う船乗り達を守らねばならん...直ちに海賊対処法を改正する準備に入れ、それと軍務省に次期建造計画と人員育成計画の拡大を内閣総理大臣として命じる! 全ての責任は全て儂が取る!」
『侍』という異名に恥じぬその覚悟と長らく政治を担ってきた一族である田沼家と何よりも国民を愛する皇帝の誇りにかけて彼は命じた
その言葉に報告書を持ってきていた軍務省の役人は即座に敬礼を田沼にすると同時に軍務省に連絡する為出ていった
そして田沼はその後海賊行為を取り締まる際に現場の独断専行を防ぐ為に設けられていた法律の壁を取り払い取締を強化させると同時に輸送航路を守る艦隊を増強させた
その行動は無駄では無く、海賊の襲撃は収まっていく事となる
そして3年後...ローヒリア聖教圏とローヒルト正教圏の対立は激化しており、その際に起こるべくして起こった
『第二次大魔導大戦』の発生の原因であるローヒリア聖教圏の大国『フワンデール王国』による『ドルデシュタット公国』への侵攻を合図に宣戦を布告したローヒリア聖教圏諸国の大規模侵攻...『聖教十字軍』の大規模侵攻である
これからは恐ろしく更新が遅くなります
ご了承ください...
けど個人的にリフレッシュを兼ねて執筆してますので放り投げたりはしないと思います




