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疾風ガール  作者: メリット5
仲間
14/20

三連休

「こんなに速度が出てるはずがないって!」

 莉奈は大きな声に、どうしてもびっくりしてしまう。白バイの計測結果を表示する画面を見たドライバーはよくこの言葉を口にする。

「メーター見てましたか?」

「見てたよ。だいたい五十キロぐらいで走ってたよ。俺の車のメーターは五十だった」

 ドライバーの自覚と計測結果には二十七キロもの差がある。諦めずに説得を続ける莉奈。

「そうしますと、運転手さんの車のメーターは壊れてることになりますよね。整備不良は、立派な違反ですけど…」

 莉奈が言うとドライバーは黙った。

「もういいよ。切符作ってくれ」

「では、免許証お借り出来ますか?」

 莉奈の説得にドライバーが折れた。免許証を借りて切符を作成する。入隊当初より切符の作成にかかる時間は圧倒的に短くなった。

「お待たせしました。運転手さん、今、印鑑ってお持ちですか?」

「持ってないけど」

 莉奈は返答を聞き、ポケットからインクを取り出す。

「分かりました。まず、切符の内容の確認をお願いします。間違いがなければ、こちらに署名と指印をお願いします」

 切符を差し出し署名を求める。

 渋々署名に応じたドライバーから署名と指印を貰うと、納付書を渡してからドライバーに安全指導をし、解放とする。

「切符処理は、一人前になって来たな」

 白バイに跨る一ノ瀬から、莉奈は褒められた。素直に嬉しい。

「ありがとうございます」

「別にお礼を言われるようなこと言ってないけど」

 一ノ瀬は素直になれないのだろう。神戸に一ノ瀬の陰の優しさを聞いて以来、莉奈の一ノ瀬に対する評価はとても上がった。

「今日は、大漁だよな」

「今日から三連休ですしね…」

 三連休は家族で外出することが増え、違反や事故が多くなるが、ゴールデンウイークとなると、ものすごい数になる。

 切符鞄をボックスにしまい、莉奈は白バイに跨る。

「出発します」

 莉奈は一ノ瀬に声をかけて、取締りを再開する。

 白バイが信号待ちしていると、信号無視は減るらしい。警察では、パトカーや白バイを走らせることで犯罪を抑止することを見せる警備と呼ぶ。

 だが、白バイに気付かず違反を犯すドライバーも多い。

「白バイ交差点侵入します」

 携帯電話の違反を現認し、莉奈の白バイはサイレンを鳴らし交差点に侵入する。

「止まってお待ち下さい」

 後ろから一ノ瀬もマイクで呼びかける。白バイに気付いたドライバーが停車し、進路を譲る。

「ありがとうございます」

 莉奈は、車載マイクで丁寧に謝意を伝える。

 交差点を通過し、違反車両との距離をつめる。

「前の黒のセダンの運転手さん。左に寄って止まって下さい」

 莉奈の呼びかけにドライバーは気付いていない様だ。

「前のセダンの運転手さん。止まって下さい」

 まさか逃げるつもり?

 莉奈は車線を変更し、運転席の横を白バイで走る。やっとドライバーは莉奈の存在に気付いて、セダンを減速させた。セダンを安全な所まで誘導し、莉奈は白バイのスタンドを立てる。

「運転手さん。こんにちは。電話かかって来ちゃいました?」

「会社からかかって来て。出ちゃいました。すみません」

 素直に違反を認めたサラリーマン。どうやら営業の帰りらしい。

「免許証お借り出来ますか?」

「どうぞ」

「切符作成しますので、ちょっとお待ち下さい」

 莉奈はドライバーから免許証を受け取り、切符を作成する。難しい漢字の名字。漢字が苦手な莉奈は、切符に写すのに苦戦する。漢字の記入を終えると、免許証を持って運転席に向かう。

「すみません。運転手さん。お名前なんてお読みしますか?」

「そでおかって読みます」

「ありがとうございます」

 これで空欄はなくなった。

「印鑑ってお持ちですか?」

「はい。あります」

 今までの経験上、印鑑を持っている人の方が少ないが。

「ここに署名と捺印お願いします」

 いつもの様に署名と捺印を求める。今日の成果で先導の確定に近づいたかも。

「ありがとうございます。では、こちらが納付書になります。郵便局か銀行で納めて下さい」

「分かりました。気を付けますね」

 笑顔のドライバーに心が和む。

「では、お気を付けて」

 これで解放。莉奈はドライバーを見送ると、白バイのボックスに切符鞄をしまう。

「もう、一人で出来そうだなぁ」

 一ノ瀬がにやけながら言う。

 憧れの独り立ち。彩は先週から中島の指導を受けず、一人で取締りを行っていた。しかし、一人で取締りを行うとなると、不安になる。

 だが、やっと、彩に追いつける。

「少し不安ですね。一ノ瀬さんがいないと」

 正直な意見を言ってみた。不安なのは確かだ。

「じゃあ、一人で今からやってみろ。失敗したら、無線で呼べ。また合流するから」

 今から?嘘でしょ…。

「やってみます」

「じゃあ、頑張って」

 莉奈の返答を聞くと、すぐに笑顔で走り去る一ノ瀬。

 いざ、一人となると不安…。

 一ノ瀬という人間の存在が、どれほど莉奈の中で安心させる存在だったのか。いなくなると分かる。

「とにかく、頑張らなきゃ」

 自分を鼓舞してから、白バイを発進させる。

ご指摘、ご意見があれば気軽にお願いします。

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